道々の枝折

好奇心の趣くままに、見たこと・聞いたこと・思ったこと・為たこと、そして考えたこと・・・

残念なこと

2022年11月21日 | 歴史探索
この国は、明治の文明開化以来、西欧の近代文明をゼロから瞬く間に学び、産業を振興させ生活文化を向上を実現させ、欧米の先進社会に追いつこうとして来た。

明治政府は、欧米人に、彼らと同等同格に認められることを一途に願い、それは悲願でもあった。それを目的に国家を運営したのである。欧化して、白人先進国グループに列することが、明治の功業を成した人々の願いであったとなると、何をしても願いが先立ち、滑稽になるのは致し方がない。その滑稽の極が鹿鳴館だった。

ロシアと戦い陸戦で敵に勝る多大な人的犠牲を出しながら戦い抜いたのも、我が国の応援団についた欧米列強に認められたいがためである。幸運にも勝って、目出度く彼らに認められ、国際的なデビューを果たした。しかし、目的のための苦節というものは、必ず達成した後にその反動が顕れるものである。船でいうなら、追い波をかぶる。

政府ばかりか日本人全体が、一丸になって、文化の遅れた矮小な国を、西欧の先進の国々に比肩できるようになろうと近代科学を学び、産業を育て、貿易を盛んに経済を盛り立て、価値と文化を西欧諸国と共有する豊かで強い文明国を目指した。社会全体の目的が,欧米に認められることにあったと言っても的外れな見解ではないだろう。

万事に先生格の西欧から見れば、当時の日本は、世界の教え子たちの中で、最も優れた生徒、優等生と見えたことだろう。短期間で何事も学び吸収し、己のものとした。江戸250年間の文化的素養があったからこそ出来た離れ業なのだが,他のアジアや中近東の国々との歴然とした違いに、教えた方が驚嘆したことだろう。同時代に、地球上に日本のような国は無かった。

その結果、日本は、欧米社会で受け入れられたり、称賛されることを最大の価値とするようになった。誰でも褒められることは嬉しい。為政者も国民も、そこは何ら変わらない。褒められ、遂には欧米各国と肩を並べた気分になってしまった。

大国帝政ロシアに勝って舞い上がった結果、不遜な振る舞いが国際社会で目立つようになったのは、為政者といえども人の子、人間に普遍の通弊である慢心が因だから仕方がない。同格となった欧米からも、賞賛した後進で同胞のアジアの国々からも、失望の声が挙がるようになるのは、ある意味歴史の必然だった。
期待が大きければ大きいほど、失望に傾くのは速い。日本の指導者たちは、回り舞台が逆回転し始めたことに気づくに遅かった。

褒められることが当然と考えるようになると、ごく些細なことでも得意になり、逆に嗜められたり批判されると、不満を抱え拗ねてしまう。昭和に入ると、欧米から見て駄々っ子のような性格を、日本は帯びるようになってしまった。国も為政者によっては駄々っ子になることがある。

太平洋戦争の一端は、欧米列強から対中戦争を批判(妨害)されたことが大きい要因である。欧米人の評価に過剰に反応する体質が、政治的判断を狂わせるまでになってしまったのである。

出来の良い優等生が、グレると手がつけられないようなものである。政治を牛耳る軍部は、欧米に歯向かうため、とんでも無い不合理な作戦計画を懐に温めるようになっていく。政治家は、昭和11年の2.26事件以降、テロを恐れ、軍人官僚に対して発言力や指導力を失った。後は坂道を転がるように、政治的・外交的・軍事的に失敗を重ね、かつての優等生の座には戻れないまま破綻した。

太平洋戦争で、あれだけの犠牲を払って学習した結果、わが国は国際社会の中で、慢心したり拗ねたりしない大人の国に成っただろうか?答えは否である。
故安倍元総理大臣の、トランプ・プーチン詣での諂い振りを想起すると、明治から一歩も進歩していなかったことが分かる。

後進の中国や韓国に100年以上先んじ、甚大な犠牲を払って得たはずの世界認識が、今この国で活きているとは思われない。歴史に遺る優れた先人たちの苦難や尽力が、生かされていない現実は、洵に残念至極なことである。

コメント (2)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 干し柿に空っ風 | トップ | 発想というもの »
最新の画像もっと見る

2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (クリン)
2022-11-22 17:27:43
いつもすばらしいですが、今日はまた・・キレキレですね⤴✨全文どうい(同意)いたします!!あとでまた読めるようにブックマークもしました!!
(ですが、「故安倍元総理大臣の、レーガン、プーチン詣」のところ・・レーガンっていうと中曽根さんのイメージです💡)
返信する
Unknown (tekedon638)
2022-11-23 07:25:21
コメント有難うございます。
トランプを書き間違えていました。
そそっかしくて、すいません。
ご拝読感謝しております。
返信する

コメントを投稿