道々の枝折

好奇心の趣くままに、見たこと・聞いたこと・思ったこと・為たこと、そして考えたこと・・・

ハマゴウ

2007年09月02日 | 自然観察
伊良湖岬から鳥羽へ渡るとき、砂浜でハマゴウの花を見かけた。既に実をつけているものもあった。

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この5ミリに満たない小さな堅い実を、三陸地方ではホウと呼ぶらしい。土地の漁師が「ホウを酒に浸したものを飲んで漁に出れば、寒中でも身体が暖かい」と、たまたま東京から来ていた植物の先生に教えた。

その先生が帰京して詳しく調べたら、ホウとは昔から強壮薬として用いられていた漢薬、蔓荊子(マンケイシ)のことだった。

この話を知った後に熊野へ行った折、浜でたまたまこの木の群落を見つけ、沢山の実を採った。その実を焼酎に浸け、上記効能を確かめようと熟成を待ち、何年か保存しておいた。

あるとき同年の仲間の集まりにこれを持参し、由来と効能を大いに吹聴したら、当時初老の50代、男女を問わず試飲希望者が殺到し、瞬く間に瓶が空になってしまった。

薬用酒というものは一回や二回飲んだからといって効き目があるわけでなく、毎日連用することで効能が顕れる。そのためには、毎年この木の実を大量に採取し、焼酎に漬け込まなくてはならない。それができるのは、もっぱら浜で生活する人達に限られる。

古くから日本の浜辺では、漁船を陸に曳き揚げていた。その作業には、漁師の妻や子どもたちも動員される。ハマゴウの小さな実を、荒海で働く夫や父のために摘むのは女性と子どもたちであったに違いない。そのような生活の場を通して世々に引き継がれるハマゴウ酒というものは、海浜で漁撈にたずさわる人々のために天が具えた恵みであろう。その作り方用いられ方と採集の担い手は、山国のマタタビ酒の場合と変わらない。

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