てんちゃんのビックリ箱

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愛知県美術館 2024年度第4期コレクション展 訪問

2025-03-15 15:00:38 | 美術館・博物館 等
愛知県美術館 2024年度第4期コレクション展
時期:2025年1月18日(土)-3月16日(日)
内容:展示室4 マックス・クリンガーの芸術-連作版画を中心に-
   展示室5 西洋近代美術の名品
   展示室6 みんなの文化会館美術館
   展示室7 グッドフェローズ 熊谷守一と仲間たち <木村コレクション>
訪問日:2025年2月28日

1.はじめに
 パウル・クレー展とセットの愛知県美術館第4期コレクション展、パウルクレー展のほうで見るのに疲れたので、別の日に訪問した。ただしあまり時間がない状況っでの訪問だった。
 展示室5はこの美術館の目玉作品でほとんどいつもと同様、展示室6はこの美術館の前進で蒐集したものの展示だったが、これもかなりの部分を以前見ているので絵、展示室4と展示室7を重点に見た。
 以下 その2室について記載する。

2.マックス・クリンガーの芸術-連作版画を中心に-
 マックス・クリンガーは、19世紀末に生まれたドイツ分離派(伝統からの脱却・分離を標榜したため「分離派」と呼ぶ ドイツ表現主義や青騎士の運動がこの中から始まった)の画家、版画家。デューラーやレンブラントからの流れのエッチングの作品が有名。シュールレアリスムの先駆者とも位置付けされている。
 クレーの初期に影響を与えた人々という位置付けで、ここに特集されたものと思う。今回は連作のエッチング版画特集とのことだが、とても立派な装丁で出版されている。日本の版画の浮世絵は芸術を大衆化した。ドイツのデューラー以降のエッチングも大衆化の目的と思っていたが、これでは大衆化には至らない。ということで浮世絵の偉大さを再認識した。

 今回の展示は、絵画が1点、その他は連作のエッチング版画だった。
 絵画は女性像。ささっと描いたようで勢いがある。



<女性像>

 その他はやや大きなサイズのエッチング。面白いと思ったものを数点。



<蛇 「イヴと未来」より>
よく題材に取り上げられる聖書での、蛇がイヴに鏡で自分を映し出させている場面。



<海 「死について」第一部より>
乗組員の冒険を表す場面で、海から帆船のマストへ大きな手が伸びている。



<ヘロデ 「死について」第一部より>
 ユダヤのヘロデ王が玉座から転げ落ちた場面。ひっくりかえっているのに、小さな兵たちはほったらかしにしている。



<行為 「片方の手袋」より)
 落とされた片方の手袋の行方の変遷を描く物語で、紳士がひろう場面。女性たちが傾いているのが面白い。



<ブラームス幻想>

 それぞれ物語を緻密に構成し、丁寧に作品を仕上げている。聖書などを題材にしているものも多いが、ウィットに富んでいるし、確かにシュルレアリズムの先駆と呼ばれてもおかしくない作品がある。


3.グッドフェローズ 熊谷守一と仲間たち <木村コレクション>
 木村コレクションは熊谷守一の蒐集で有名。今回は寧ろ彼の周辺の友人との交流を展示した。
 例えば武者小路実篤との交流。お互いに認め合っていたらしい。



<熊谷:栗>



<武者小路:和而不同>



<熊谷:氏家桃林>
 区切った面をシンプルに一色に塗るのでなく、またハーフトーンばかりで優しい。

 青木繁とは東京美術学校の同級生。黒田清輝に認められた熊谷、逆に反発していた青木とはうまが合ったとのこと。熊谷は青木の天才性を認めて、夭折を憐れんだ。青木と高校生ライバルとされる坂本繁二郎とも付き合っていた。



<青木繁:太田の森>
森の中の人影、この絵は緊張感があって好き。



<坂本繁二郎:海岸の家>
馬の画家とされる坂本だが、この風景画はタッチは動いているようでいい。


4.おわりに
 愛知県美術館はパウルクレー特別展の中で中核の絵をだしていたが、このマックス・クリンガーも含めてドイツ表現主義近辺の作品を多量に蒐集しているようだ。一度そういった方面での特別展をやってほしい。
 今回 熊谷守一のおまけの様に青木繁や坂本繁二郎が出てきたが、愛知県美術館の日本の絵の展示方法はなにか一貫性がない。せっかく重要文化財を2点持っているのだから、欧米絵画のようにちゃんとした日本画の準常設展室を作ってほしい。
コメント
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