てんちゃんのビックリ箱

~ 想いを沈め、それを掘り起こし、それを磨き、あらためて気づき驚く ブログってビックリ箱です ~ 

僕だけのための君の歌(その2) 「見上げてごらん 夜の星を」

2019-02-22 18:55:42 | 昔話・思い出


2曲目は
坂本九さんの歌っていた 「見上げてごらん夜の星を」

   ……真冬の深夜 三鈷寺にて……



 本当は僕だけを連れてゆきたいのだけどと言いつつ、君がクラブの合宿の場所に選んだのは、京の西山の三鈷寺。

 みんなが健康な夜遊びに疲れて、広間からそれぞれの部屋に戻り始めた時、僕たちはしめし合わせて庭に出た。

 満天の星と、踝をこえるくらいに積もった、表面が凍った白い雪。  
 僕たちの吐息と雪を踏む音以外は、すべて凍りついた静寂の世界。

 手をつなぎ、できるだけくっつきあって歩いた。

 いきなり展望が開けると、掌に入るくらいに小さな、ガラス細工のような京の夜景。
 本当に小さな京都タワーがたっている。ふっと息を吹きかけて、その灯火を消してしまいたいくらい…・・

 そのとき歌ったのがこの歌。 
 

 僕が1番を歌ったけど、続いて歌いだした君の声を星々に聴かせたくて、歌うのをやめた。

 僕は、ずっと肩を並べた君の横顔をみていた。
 君は、はにかむように時々僕の方を少し見あげながら歌ったね。

 歌声は星々の鋭い光を溶かし、乱反射して僕たちの周辺だけが、薄ぼんやりと明るくなった。

 歌い終わると、寒さはちゃんと押し寄せてきた。
 その後のキスは、ふるえて歯をガチガチぶつけただけだったね。

 頬は僕のほうが暖かかった。君の顔は本当に真っ赤だったけど、きっと僕のほうがもっと赤かったのだろう。

 そして君は女性専用の小部屋へと戻り、僕は雑魚寝の広間で眠りにつくことにした。皆の起きる前までには、僕たちの足跡を消す算段を考えなくっちゃって、おもいつつ。

 しかし、どうやってこんな素敵な場所を知ったのか、君は結局教えてくれなかったね。


三鈷寺紹介:
https://kanko.city.kyoto.lg.jp/detail.php?InforKindCode=1&ManageCode=1000084
 (宿坊は、残念ながら今はやめているようです。)
(Cafestaからの転載)
コメント (2)
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