てんちゃんのビックリ箱

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東京国立近代美術館 名工の明治 展覧会 感想 

2018-04-22 03:44:42 | 美術館・博物館 等

展覧会名:工芸館開館40周年記念 名工の明治
惹句:明治から現代まで、名工の精神を受け継ぐ工芸の名品、約100点を紹介します。
場所:東京国立近代美術館 工芸館
会期:2018.03.01-5.27 
訪問日:4月13日


4月13日、横山大観を見た後40分ほど時間があったので、近代美術館の3階の大観の仲間を集めた特別通常展示か、ちょっと離れた工芸館の表記展覧会を見るか考え、一度も行ったことのない工芸館のほうを選択した。なおどちらの展覧会を選んだとしても、大観展の切符さえ持っていれば、無料で入館できる。ただし工芸館のほうはすぐと思ったら歩いて5分ほどかかったので、びっくりした。
建物は、外観も中も、とてもクラシック。特に入り口そして階段がクラシックで、その飾り気のなさが気に入った。

こちらの構成は以下の通り。
1.明治の技の最高峰 帝室技芸員
2.明治の名工 鈴木長吉と<12の鷹>
3.技の新展開と新風
4.技を護る・受け継ぐ−戦後の工芸保護政策と、今日の技と表現

 
 展示は、金属加工、木彫、漆器、陶磁器、人形などの広い範囲であり、時間がそれほどなかったのと、あまり見慣れてないものが多いので、ポイントを絞って鑑賞した。


(1)鈴木長吉の<12の鷹>
 今回の展示品の中で、中心となっているものである。1893年にシカゴで開催されたコロンブス世界博覧会で展示され、その精巧さと美しさに大評判となったものである。鈴木長吉は、鷹を飼いスケッチをするなど、準備だけで4年をかけている。この美術館で数年かけて修復し、シカゴ博と同様の状態にしてのお披露目となっている。
 
12種類の鷹の生態を金工で各種の金属を用いて製作したものだが、表面の羽毛の加工を鏨などで精密に彫り上げている。眼は材質を変え輝くようにし、嘴は漆塗りで艶々としている。姿は本物そっくりだが、材質は金属の鈍い輝きを持っており、別の世界の生き物を感じさせる。
最初の図は展示状況全般、そしてその後に4羽の例を示す。姿は生き生きとしており、眼の鋭さが素晴らしい。



  


  



(2)帝室技芸員の作品
 宮内省が優れた工芸家として認めた帝室技芸員のうち8名の、陶磁器や漆器、服、金工などの作品が展示されていた。ここでは私がそれなりに理解できる陶磁器の作品を示す。
 最初の作品は初代宮川香山の「鳩桜花図高浮彫花瓶」。非常に高い浮彫のある陶器で、鳩の頭や尾は、容器から完全に離れている。容器自身の模様や浮彫の形は素晴らしいが、それよりこれでなぜ焼くとき割れたり形が変になったりしないのだろうと本当に不思議である。



この人は、2番目の「色入菖蒲図花瓶」という、とても現代的なまるっきり作風の異なる作品も作っており、美を追求する視野の広さを感じる。3番目は七代錦光山宗兵衛の、「上絵金彩花鳥図蓋付飾壺」。姿の美しい壷に煌びやかな花鳥が描かれた、これこそ最高級工芸品といった作品である。
 美術工芸に関しては、官が開催した文展で1926年までそのジャンルが認められず、厳しい時代もあったとのこと。

  



(3)その後の作品について
 明治以来の伝統を守りつつ、海外からの影響など新しい潮流を取り入れた作品が多量に展示されている。特に人間国宝制度が取り入れられた後の作品は、ほぼ人間国宝による作品である。
 素敵だなと思った作品を8点ほど紹介する。
 まず漆器 赤塚自得作「常緑蒔絵料紙硯箱」。描かれた松の力強さに、全体がぼんやりと輝いているさまが素敵。そして 二十代堆朱楊成作の「彫漆六華式平卓」、これは木彫に漆が置かれている。木彫の立体感と鮮やかな漆色が華やかである。

  



北原千鹿作の金工品、「金地象嵌月ニ竹文手匣」。純金製の入れ物。2種類に反射する蓋の竹の細かい紋様がおしゃれ。六角紫水作 「金胎蒔絵唐花文鉢」。金属の上に蒔絵が施されているのだが、妖しい輝きに心奪われる。持ったら体温を奪われ、そして心も吸い取られそう。

  



清水卯⼀作 陶器「⻘瓷⼤鉢」。つるんとした凹面に、ギラギラと破片が浮遊している。でも形はがっしりと力強い。
三代德田八十吉 磁器「燿彩鉢 創生」。これも妖しい光沢、眼がさまよう。中央の濃紺へ光ごと吸い取られるように感じる。

  


そして女性の作品を二点。
秋山信⼦作  桐塑の人形「命名」。優しい顔と手。衣服の紋様が面白い。         江里佐代⼦作 「截金六角組飾筥 六花集香」。形そして紋様に、女性のきめ細やかさを感じる。

   



今回はあまり時間がなく残念だったけれども、とても素敵なものが展示されていた。写真は一部を除きほぼ自由なので、バリバリ撮影したかった。この分野に興味ある人にとっては、とても有意義な展覧会だと思う。特に12羽の鷹は驚きである。


ただ工芸品、特に陶磁器などに関しては、以前貴重なものを触らせていただいた時実感したのだが、触って重さを感じる、また手触りを感じる・・・ 見るだけでなく、その触った時の意外性を認識することも、その芸術性の要素にあるのではないかと思っている。そういった意味で、こういった分野への対応は難しい。

 

コメント (2)
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