<EVの駆動機構>
<ガソリン車の駆動機構>
EVとガソリン車の駆動機構の比較。EVの機構が非常に単純なことを示している。
今回はとても固いお話です。Goo内のさるブログにこの件に関してコメントを入れたので、一応EVとガソリン車に関する私の意見を、このブログにも書いておくことにしました。
1.はじめに
最近私たちのグループでガソリン車と電気自動車(EV)の比較が話題となっている。
一般的に言われているEVのメリット・デメリットは下記の通り。
(1)メリット
・燃費を抑えられる
(特に深夜電力で充電)
・減税・補助金が受けられる
・走行が静かで、振動が少ない
・環境保全に貢献できる
(走行時はCO2を発生しない)
(2)デメリット
・イニシャルコストが高い
(特にバッテリーが高い)
・航続可能距離がガソリン車に比べて短い
・充電に時間がかかる
私たちのグループの中では、メリットの環境に関して生産段階を考えるとそうでもないこと、航続距離の短さとコストの高さなどからまだまだ魅力が小さいという意見が主流である。
しかし私は、上記のメリット・デメリットは自動車の所有者の立場を主とした意見であり、社会的存在としての自動車を考えると、EVの魅力は下記のように非常に大きいと考えている。
・自動車の将来像であるCASEに適合
・エネルギーの一元管理ができる
・社会的安全性が高く、インフラ維持が容易
それぞれについて記載する
2.社会的に見たEVの優位性
(1)自動車の将来像であるCASEに適合
CASEとは下記である。
Connected(コネクティッド)、Autonomous/Automated(自動化)、Shared(シェアリング)、Electric(電動化)
これらは、自動車が社会にもっと協調してほしいという、社会からの規模であると思う。
EVは蓄えられた電池のパワーが直接モーターを回すエネルギー、そして駆動力に直結する。それに対しガソリン車を含む内燃機関車では、一度燃焼、もしくは化学反応というプロセスでエンジンを稼働させるエネルギーを生み出し、それが駆動力になる。燃料からエネルギーの発生は間接的である。
Connected(コネクティッド)、Autonomous/Automated(自動化)は、周辺の情報を集め自動運転を行うことであるが、エネルギーの発生が間接的であることによって、何らかの外部信号を得た場合に自動車として反応できる範囲が、直接のEVより狭くなる可能性がある。
Shared(シェアリング)は自動車の共有化に関するものであり、車一台を何人かが扱うことになるが、EVは機構がガソリン車よりも構造やシステムが単純で乗り継ぎのチェックがしやすい。残存エネルギーの状態もリモートで把握しやすい。
Electric(電動化)はEVそのものである。駆動力だけでなく制御系やセンサ系が電子機器化する中で、EVは電池のみだが、ガソリン車はエンジンと蓄電池の管理をしなければならない。
(2)エネルギーの一元管理ができる
ガソリン車とEVでは、エネルギーの管理が全然違う。EVの場合、中央で燃料等からまとめてエネルギーすなわち電力を作り、電線を通じて充電ポストに分配する。
ガソリン車の場合は、エネルギーの素であるガソリンを地域そして個々の車に配分し、そこで分散してエネルギーを発生させて直接駆動力につなげる。まともにエンジンが動けば多分効率的だが、運転者の個性で当たりはずれがある。またその配分過程で事故や犯罪等の想定外のことが起こりうる恐れがある。(極端な例としては京都アニメ事件)
エネルギーの管理者としては、集中的にもっとも効率的で環境負荷の小さいエネルギー変換を、安全な状況で実施したいと思うだろう。
(3)社会的安全性が高く、インフラ維持が容易
EVを運用するにあたっての社会的インフラは下記である。
・発電所、・配電ネットワーク(変電所、送電線等)、電力ポスト
・電気関連の整備士、それほど多くない機構系および構造系機械整備士
それに対して、ガソリン車の場合のインフラは下記となる。
・配送前大型燃料タンク
・道路網、タンクローリー、ガソリンスタンド
・エンジンおよび機構系、構造系機械整備士
ガソリン車の場合、燃料配送の社会的負担が非常に大きい。そしてその安全維持も大きな負担である。また自動車整備においても、多量の機構を有するガソリン車は多くの整備修理技術を要する。日本のような人口減少・少子高齢化社会の中で、その能力を安全に維持していくことは難しいと考える。
それに対して、EVの場合エネルギーの配分は送電線と電力ポストであり、作ってしまえば、この維持は容易である。
3.別の視点からの意見
2で示したように社会的に見た場合、EVが優位と考える。
別の視点からも、EVへの流れがあるのではないかと思っている。それは個人の自由と管理のせめぎ合いである。
現在のガソリン車は非常に高性能であり自分でガソリンを入れて、自分勝手にどこまでも行けるものだった。それは過剰かもしれない自由の象徴であり、FUN TO DRIVEであればよかった。
それに対して、EVはconnected すなわち何らかの情報センターとつながりやすく、そのために運転できないような子供や老人をちゃんと目的地まで安全に運ぶのに適しているが、
逆に状況を把握されやすい対象、かつ外部からコントロールされやすい対象であり、また搭載されたエネルギーも把握されて、移動範囲もわかる乗り物である。すなわち管理したいと思えば管理しやすい対象である。通常の場合にはそれは使われないが、異常時にはそれが使われる可能性がある。
今後の社会においては、アメリカの例にみられるように社会の分断が起こるかもしれない。そして過疎化によって管理の及ばない地域も生じるかもしれない。社会混乱のやり方を示すような例示も、かなり見られるようになってきている。そうすると社会を管理する側が、スマートフォンと同様に自動車にもマーキングを付けやすいものになってほしいと思うかもしれない。
いずれにせよ、これからハイブリッド、PHV、EVといったものが少しずつ売られていき、ガソリンの需要は落ちていくだろう。そして自動車の種類が増えるため、整備のやり方が増え、整備工場が非常に苦しむだろう。
特にガソリンスタンドは、今でも需要減少でどんどん減っている。私は今後2~3割ガソリンの需要が減ったら、ガソリンスタンドのネットワークが耐えられず、一気にEV化せざるを得ない状況になるのではないかと思っている。
<追記 EVの航続距離と充電時間(強制)について>
EVは満タン充電で航続距離約200km程度、また満タンにする強制充電時間は約30分が標準のようだ。それに対してガソリン車は満タンで600km~1000km、給油 5分であり、これをかなり不満に思う人がいるようだ。しかしこれはガソリン車の過度の自由度とも言え、疲れ関係なしに長時間ぶっ続けで運転できることを可能にする。EVの200kmすなわち2~3時間走ったら暫く休養しなさいと、自動車側で制約をちゃんとつけているともいえる。