小さい頃、暫く母が家にいなかった時期がある。
その時は確か私が、小学校高学年の頃。2つ下の妹も小学生、弟2人はどうだったか思い出せない。そして夏から秋のどの時期だったのだろう・・・
一生懸命思い出す。
母は家で働いていたが、体調を崩すことが多くなった。だるそうに僕たちの世話をした。
「貧血なのよ。」
貧血がその時はどんな病気か知らなかったが、母のために出来るだけお手伝いをしようとした。
ある日の夜、母はいなかった。
私と妹を、父が呼んだ。
「お母さんはな、手術をすることになったんだよ。しきゅうきんしゅという病気でね、悪いものがおなかに出来たんだ。おなかを切って、それを取りだすんだよ。そんなにむずかしいことじゃないんだ。
だけれども、元気になるまで入院するから、暫く帰ってこられない。
だから、お父さんがその間早く帰ってくるけれども、いろいろ手伝って欲しいんだ。」
妹が、言った
「お母さん 本当に元気になって帰ってくるの。」
「そうだよ。3週間ぐらいしたら帰ってくるよ。」と父。
「じゃあ、私 頑張る。頑張ってお手伝いする。」
この時、僕も頑張ろうとおもった。 だけど、妹のようには言葉に出ただろうか・・・
その日から、父は朝は食事の準備をしてから、出勤。そして本当に夕方早く帰ってきて、ご飯を炊いた。
妹は、食事の準備と小さな子の世話に一生懸命。
僕だって、お風呂を炊くとか、掃除や選択にそして戸締りと頑張ったはずなんだ・・・ だけどもっと頑張れたのでは・・・・
一度父と一緒に、隣り町の病院へ、母を見舞いに行った。
真っ白い部屋に母はいた。多分手術のすぐ後だったのだろう。
「お母さん。」と呼びかけると、寝込んだままで弱々しく笑った。
僕の不安を感じたのか、今度は本当ににっこりと笑って言った。
「よく来たね。お母さん大丈夫だよ。」
「僕たちも元気だよ。僕も○子も頑張ってお手伝いしているし、△△や□□も泣いたりしていないよ。」
「そう、よかった。お母さん必ず2週間ぐらいしたら元気で帰るからね。」
家に帰ると、弟2人を面倒見ていた妹がすぐ玄関を開けた。
「どうだった?」
「元気だよって、お母さん言ったよ。」
「よかった。」
妹は、また小さな2人のところへと帰っていった。
どれぐらい経ったか、母がたくさんの荷物を持つお父さんと帰ってきた。
「よく頑張ったね。ご苦労さん。もう大丈夫だよ。」
その日は、お父さん得意のすき焼きだったに違いない。家が本当に明るくなったのを感じた。
あの時、妹は本当に強くなった。父も今から思うに、すごく頑張った。
そして帰ってきた時の母の笑顔。
生き生きとした3人。その3人はもういない。
逆に生きている弟たちの姿は、そこにほとんど思い出せないし、思い出の中の私自身も、立ち尽くしているだけ。
なくなったSNSからの転載。