先日書いたように、以前参加のSNSの使い勝手が非常に悪くなるということで、内容をサルベージ中ですが、これもそこで書いた話。
外国人に対応しなければならなくなったという人には 「日本 その姿と心」という本をいつも紹介する。これは、それに関わる思い出。
今の肘をぶつけ合うコンタクトよりは、絶対に握手のほうがいいですよね。
大学の頃 私の教授が中心メンバーの国際会議が、大学近くで行われた。
講座のメンバーは、学生も含めて、その会議の支援のためにいろんな雑務をやった。
最終日参加者の見学ツアーが組まれ、私たち学生は、外国語をまともに話せもしないのに、付添説明要員としてツアーに参加するように教授から指示があった。
みんな大慌てで、コースの勉強と、質問されたとき何を話したらいいかを企画の旅行会社に聞き、パンフレットだけは受け取った。旅行会社はむしろ余計な御世話って感じだった。
当日 数台のバスのそれぞれに 旅行会社の担当1名、学会からの説明担当1名、支援学生2名がつき、客を待った。私は最終号車を担当した。
それぞれの車に、20~30人が乗り、出発していく。
しかし私たちのバスには、ドイツの有名教授とそのお嬢さんしか乗ってこない。
旅行会社の人が問い合わせると、10数人が買い物に行っていて、暫くするとこちらに向かうとのこと。30分このバスだけ出発を遅らせることになった。
そのお嬢さんは、高校生で、ものすごい美人。背が180cm以上でそれこそ、かのクラウディアシーファーみたい(昔の美人)。それがものすごく甘えた声で、パパの教授にべったりくっついている。
この先生も、にこにこしながら国際会議の間、彼女を見せびらかしていた。
30分たって、けっきょく集団はこず、それと一緒だった人が一人だけ来た。残りの人は土産物屋に完全にトラップされてしまったから、出発してほしいとのこと。
その人は、一見日本人のようでもあり、そうでもないようでもあり・・・ ドイツ人の先生とは、流暢な英語をペラペラ。学会付添の人とも親しげに話しており、有名人のようだった。
それで、ともかくはお客さま3名、付添4名で見学に出発することになった。私も含む支援学生2人はとても間に入る雰囲気ではなく、本来ならばお役御免だが、ついていくことにした。
内容は、会社2か所と日本の工芸の展示場所。
訪問先の会社はすごく喜んだ。有象無象の怪しい奴らが来るのではなく、有名教授のほぼ単独訪問。予定された会議室から応接室へ変更され、えらいさんが出てきて挨拶した。
なお、ここでは後から来た人は英語をしゃべっていた。
2か所めに動く途中で、後から来た人に英語で話しかけると、わははと笑って、日本語で大丈夫と答えが返ってきた。
日本在住の中国系の人とのこと。日本企業の海外進出の支援をやっていて、世界をまたにかけているそうだった。
「今回は、楽でしたね。だけどスタート前はどきどきしたでしょう。」
「はい。何をしゃべられるか不安で・・・」
「そういったときは、あるテーマ一つはちゃんと勉強してしゃべることができるようにして、話をそちら側に誘導するのですよ。ちょっとカッコイイ話題をひとつ持ってさえいれば十分。
日本人は、日本のことをしゃべるのが下手なのですよ。ところが外国の人はそれが聞きたいのですよ。」
そこで、と言って彼が出してきたのが、最初に紹介した本。
新日本製鉄の能力開発室が編集したもので、日本に関わる地理、政治、経済、文化、宗教、風俗等のいろんなことを英文と和文で書いてある本。
「この本は、面白いですよ。お客さん連れて行く時に見るのですが、日本に住んでいて何も日本のことを知らないと実感します。私自身客を連れていく時、テーマを決めて、ある部分を読んで説明に使おうと心掛けているのですよ。
最後に工芸品のところに行くでしょ、次の見学はさぼってこの着物のところと書道のところ、あと人形、付け加えれば扇子のところぐらい目を通しときなさい。ちょっと説明やってみませんか。」
そういって、本を押しつけられた。
そこで次の場所は降りずに、言われたところを一生懸命読みだした。バスの中で運ちゃんと一緒に待つこと多分1時間強。それぞれが1p程度。最後は声に出して読んでみた。
そして、最後の工芸品展示場所。教授とその人を先頭に歩く集団の一番最後を歩いていたら、墨跡展示のところで、彼氏が立ち止まって僕が詳しいとか言って手招きした。
ともかくもしゃべりだし、特に実感のある正月の書き初めの話を強調。それで彼はウィンク。
その近くにあったのが着物で、まあこれもどんな時に着物を着るかという話と、TPOで着るものが違うんだとかいう話をじたばたやった。
こっちは多分真赤でしゃべっているのだろうが、大教授はにこにこしながら簡単な質問をしてくれ、彼女はキャーって感じで注目していてくれるので、気分よくなった。
最後に土産物コーナーがあり、人形とか扇子が置いてあった。そこで彼女は立ち止り私のほうを見たので、一夜漬けどころか一時間前漬けのお話を披露。これはお金が動くので、彼がちゃんと助けてくれた。
彼女がバスから降りるときにサンキューと言って握手をしてくれたとき、とっても細いきれいな指だった、本当に天にも昇る気持だった。
外国人とのお付き合いでは、あれが最高の感激経験。
その後すぐこの本を買い、外国人と付き合う時とか、本棚でふっと眼がとまったとき読んでいる。
今度ある人に紹介するときネット検索をしてみたら、中国語版が出ている。大したものである。この本はかつて新日鉄が日本でNo.1企業であった頃、会社がそれを意識して発行したものと思う。新日鉄は他にも同様な書籍を出して、社会貢献しようとしている。 現在のNo.1企業であるトヨタは、そういったことがないように思う。
下記は その本の説明
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