てんちゃんのビックリ箱

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名古屋城本丸御殿 訪問

2019-10-31 09:44:26 | 美術館・博物館 等

 名古屋では、愛知県知事と名古屋市長がケンカをしている。
愛知県知事が必至に擁護していたあいちトリエンナーレに関してはご存じの通り、市長が「表現の不自由展」の特に天皇の展示部分が問題と抗議していて、会場前で座り込みまで行った。

 それに対して名古屋市長が推進している名古屋城本丸再建に関しては、文部科学省の承認の見通しもないのに、市長決済で強引に木材の買い付け/製材まで行ったことに対して(製材までしてしまうと木材の劣化が始まる)、市に損害を与える可能性が高く100条委員会ものだと攻撃している。

 名古屋城はかつて国宝1号であったが、太平洋戦争終盤に空襲によって本丸および本丸御殿は焼失し、再び燃えないようにと市民の寄付の1/4を含めてコンクリートで再建された。それを河村市長が、まず本丸御殿を再建し続いて本丸を建設しようとしている。
 再建された本丸御殿は素晴らしいと評価されていて、確かに最近の名古屋市観光の目玉になっている。
 
 本丸御殿は2018年6月に完成した。いつでもいけると思って延び延びになっていたが、県知事とトリエンナーレ、市長と名古屋城の組み合わせが面白くて、やっとこさ出かけた。


 建物は焼失前の記録をもとに、外構造だけでなく内装まで完全に同一の形状、材料で製作された。焼失前に外され保管された障壁画を含め、天井画、各種取り付け金具も完全にコピーされた。すなわち江戸幕府始まってすぐの1615年にできた建物が、まっさらの状態で存在していることになる。
 出来た当初は藩主の住居だったがその後すぐに引っ越し、将軍が上洛する際の御座所として改修された。

 あまり勉強せずに行ったが、京都二条城の二の丸御殿とほぼそっくりだった。二条城は将軍上洛時の御座所としてほぼ同時期に製作され、障壁画担当も2か所とも狩野探幽でありほぼ同様なものを描いている。

 参考として、まず二条城二の丸御殿の写真を4枚並べます。二条城の中は写真を撮れないので、HPのものを転載しました。後の名古屋城のものと比べてください。

まず入口。書院造りの重厚なもの。



 入ってすぐの虎の障壁画。迫力があります。




 有名な松の障壁画。




 部屋の上部や廊下の上部の破風も立派






 二条城は古色蒼然としていて歴史の重みを感じるが、名古屋城は新築バリバリである。柱などが真っ白で気持ちがいい。

 徳川幕府が金に飽かせて作ったものを、職人を大量動員し現代に再現したもので、すごいというか驚いた。

 入口は空間がないので全体を写すことができなかった。新しいものは案外軽やか。



 
 建物内部はすべてレプリカであることから写真撮り放題。そして照明と採光等で部屋内も明るく、完璧にコピーした障壁画や建具もよく見える。素晴らしい出来である。

 やはり、入口すぐ近くには虎の障壁画。





 松を含めて いろいろな木々、風景の障壁画がある。










 建物に使用している建具類も立派。

 



 そして破風。これは二条城とそっくり。





 天井もすごい。








 見終わって、よく作ったと感心した。現在いる工芸家を動員して作ったとのこと。

 でもやはりなにか足りない。
二条城の御殿と比べると、歴史の空気がない。二条城は美術品、工芸品としての存在に歴史の意味付けが入っている。

 そして二条城の場合、その時代に周りにないものを生みだす必死さが作品に入っているが、こちらのものはかつて出来ているという前提のもとにそれに似せようと作ったものだから素晴らしくてもやはりコピーなのだと思う。



 実はこの訪問は、タイの人と一緒に行った。彼は「日本はまだこんなものを作るだけの余裕があるのですね。」と、たぶん皮肉で言ったのだろう。
 彼には贅沢で「どんなもんだい。」と自己満足しているけれども、将来にどう役に立つのかわからないものと見たのだろう。

 彼と私で意見が一致したのは、名古屋や愛知はこういった方向性のものを見せるのではなく、トヨタ産業技術記念館やノリタケの森、またヤマザキマザックの博物館など、明治から現代にいたる産業技術の展示を連携して充実させること。世界へ寄与できるとおもう。

 それとともに、現代美術は当たりはずれでまだまだ外れのほうが多いかもしれないが、現代の課題を意識しなにか世界に貢献できるという籤を提供する意味で、余裕のあるところが、継続して続けてほしいと思う。


<追加>
 二条城は、廊下が鶯張りになっていて、歩くとキュキュッと音がし歴史を歩いている気がわきますが、名古屋城のほうはそんな楽しみはありませんでした。





コメント (2)
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