てんちゃんのビックリ箱

~ 想いを沈め、それを掘り起こし、それを磨き、あらためて気づき驚く ブログってビックリ箱です ~ 

安彦良和回顧展 訪問

2024-06-30 10:06:34 | 美術館・博物館 等

<美術館上に鎮座する美かえる君>

開催場所:描く人 安彦良和
開催期間:2024.6.08~9.01
場所:兵庫県立美術館
訪問日:6月18日?

構成:1.北海道に生まれて
   2.動きを描く
   3.カリスマアニメーターの誕生
   4.アニメーターとして、漫画家として
   5.歴史を描く
   6.安彦良和の現在

 私たちは一時期神戸に住んでたが、配偶者にとってその思い出は夢のようで、時々神戸に行きたいと爆発する。そこできっかけを探していたら、この展覧会を見つけたので行くことにした。(見つけた次の日にいった。)
 前回が、青池保子の展覧会だったので、新幹線の中でまた漫画と笑いあった。
 
1.安彦良和氏について
 私はかつてガンダムにも興味はなかったし、この人については知らなかった。結婚したときに配偶者がアリオンという漫画を持ってきたので知った。その後宇宙戦艦ヤマトのアニメに重要な役割をしていたことを配偶者から教わり、そのアニメも知らなかったが歯医者に行った時にいつもアニメの再放送をやっていたので、興味を持つようになった。
 その後、海外や日本の歴史人物の漫画を大人の雑誌に連載しているのを時々見るようになった。
 暫く前に機動戦士ガンダムオリジンという漫画を配偶者が買ってきていたが、途中からやめてしまっていた。全般として理屈っぽい人だなという感じだった。今回はその回顧展という位置づけだった。
 なお入場者はやはり基本的に男性、高年齢者が多かったが、低年齢までバラエティに富んでいた。これは私の世代より上のファーストガンダム世代から、最近のガンダムオリジン世代まで、広くカバーしているためと考える。

2.社会人になる前 
 履歴をみると、1947年の北海道生れ.私の少し上。
 中学校・高校で手塚治虫などの漫画家の影響を受けて、ノートに漫画を書きながら勉強し、弘前大学に入学して大学紛争の中心メンバーとして活躍後、退学処分となった。 この世代は、私が大学入学時に、理屈っぽい小うるさい面倒臭い人達としてとても印象に残っている。その仲間と思ったら親しみがわいた。
 展示には、漫画を書きつつ重要事項をまとめたノートが展示されていた。また大学時代の全学連幹部として書いた論文が展示されていた。


<勉強をまとめたノート 漫画付き>


3.虫プロ経由 アニメータへ
 退学後、絵を書くというチャンスがある虫プロに入る。アニメーションとしての描き方も知らなかったとのことで、ここの研修所で徹底的に基本から学んだとのこと。虫プロの経営が怪しくなり解散するが、ここでもっとも重要だったのが、仲間との人脈。
 手塚治虫の門下になるのだけれど、本人は永井豪に似ていると思っているというのが面白い。


 虫プロ解散後いくつかのアニメ小集団が生れたが、ヤマトやSFロボットを動かす集団に入る。アニメータとして大評判になりカリスマ化する。そしてアニメータだけでなく、アニメの映画監督にまでなってしまう。
 宇宙戦艦ヤマトのアニメの際に絵コンテ(コマワリ)で非常に高い評価を受け、それがガンダムなどにつながる。ガンダムなどロボットものの仕事へいったのは、アニメ関連のスポンサーがほぼ玩具メーカーだけになってしまったため。
 現在の日本アニメの興隆は、その頃の玩具メーカーの支えで才能を持った人が維持されたからと思うと感慨深い。

 ガンダムでは、イラスト、絵コンテ、アニメと大活躍だったようだ。ポスター等も彼の作品だが、原画はとてもくっきりとした色で、昔の映画館の大看板の塗り方を思い起こさせた。
 なお、ロボットの動くアニメの評判は高いが、小さな子供たちが動く場面も優しい眼差しが感じられて好きである。


<機動戦士ガンダムのポスターとイラスト>

4.イラストレータから漫画家への転向
 ジブリや大友克洋などによる新しいアニメの勃興とその高品質に自信をなくし、寧ろ最初からの目標の漫画を目指そうとした。アニメータは集団を指導してアニメという連続した映像を作り出すが、漫画家は、個人で奮闘して作品を作り出す全く違った創作物である。
多分自省的な性格が、それにあったらしい。歴史や宗教などを非常に勉強し、その成果でテーマの設定が独創的だった。国内外の歴史を題材にして独自の視点から漫画化し、漫画界からに留まらない好評価を得る。
 テーマは最初がギリシャ神話だったのが、日本の古事記などを題材にし、戦国時代、日清/日露戦争の頃の極東の動き、そしてとたんにジャンヌダルクやイエスを題材にするなど変幻自在。というかかなり微妙な題材を扱っていて、政治的、宗教的に騒ぎになりそうなテーマを。説得力のあるストーリー展開で文句を言わせない。


<漫画 アリオン(ギリシア神話、虹色のトロッキー(満州の話)>


 この人がアニメでも漫画でも、書きはじめるときは、それぞれの人の視線からだそうで、人が対峙している場合には、その視線の交差からから空間が決るとのこと、映画のコマ割でよくあるような、全景のなかに人を配置していくといったまとめ方ではない。多分それが迫力を生むのだろう。


5.最近(70歳以降)
 改めてガンダムを見つめなおし、自分なりのガンダムを漫画化した。そして新しく総監督としてアニメ化した。(かつてのガンダムは、原作/監督 富野喜幸、メカニックデザイン 大河原邦男、キャラクターデザイン/アニメ化 安彦良和 の合作のようなもの)
 安彦さんとして、富野喜幸版のガンダムを納得できるものに原作から再構成したもの。
 特に拘りのガンダムの中の物語をオリジナルに膨らませ、「ククルス・ドアンの島」として劇場映画化した。
 他人が原作で自分がアニメ化したものを、自分がオリジナルとして再構成したいという意志は凄い。富野氏からは了解を得たようだが、既存ファンのものでもあるからそれと戦っていく覚悟がなければならない。そしてそれに勝利したようである。
 ストーリーはあまり知らないが、最初のガンダムに比べて絵がだいぶ大人になっている。


 この歴史から、自分が各時代にやれることを一生懸命模索し、やりだしたら徹底的に拘る人ということがわかる。


6.終わりに
 安彦さんの作品は断片的にしか知らなかったが、1947年生れということで、かつての生きる意味とはなどを吹っ掛けてきた先輩をイメージし、親近感を持った。
 この人は能力に加えて生きるのに物凄く努力を惜しまない人で、尊敬に値する。また物凄く拘りの強い人で、過去の協同作品でも納得がいかなければ、自分だけで全面改訂してしまう。立派といえるけれども私自身は仕事仲間にしたいと思わない。 

(新方式になってから、書式をコントロールできなくなったので、まずはこのまま掲載)
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする