実は別の記事を準備していたが、前回に続いてART HUB NAGOYA訪問記を入れます。なお今回は美術品の価格にも着目して記載しています。
ここで書く近代西洋絵画巨匠展で、リニューアルの特別展は一区切りとなる。今回いった時に開催されていた展示は下記です。そのうち作陶展は時間がなかったので見なかった。
現在はすべて完了している。
・近代西洋絵画巨匠展 1月15日(水)〜21日(火)
・唐津 西岡 慶 作陶展 1月15日(水)〜21日(火)
・Michael Hitoshi展 1月15日(水)〜21日(火)
・谷口 洸 展 ーSoft Rain and the Lakeー 1月15日(水)〜21日(火)
・4和田真理子 個展 雪月風花 1月8日(水)〜21日(火)
1.近代西洋画巨匠展
以下等のメンバーの絵画が、価格付きで展示されていた。ゴッホやモネなど超ビッグネームはないが、かなりのビッグネームのものが展示されていた。日本の中ではビュッフェやシャガールなどこういった人が好みだからこそ国内で動いているのだなと納得した。
特に目立ったものを以下に示す。
(1)シャガール
会場内で幅が1.6mと最も大きな絵で価格も約7億円のもの、そしてその他に数点が飾られていた。以下はその最も高価な絵。ロマンチックな絵を描くシャガールだが、この絵は宗教性が強くちょっと暗い。ロマンチックそのもののものもある。
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シャガール 「預言者・イザヤ」
(2)藤田嗣治
小さな絵が1点置かれていたが、それが3億円強。この2人の子供の絵は、後期のもので他でもよく見るパターンのもの。すっきりしていてその中でもいい作品なのでは?
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藤田嗣治 「二人の少女・パリの屋根」
(3)ヴラマンク
数点あり以外と思ったが、昭和前期の画家たちが彼などの野獣派が好きで、それと関連して国内に入ったのだろう。マティスも入ったのかもしれないが、そちらは価値が上がって市場に出てこないのかもしれない。
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ヴラマンク 「花瓶の花束」 2千万円弱
(4)ビュッフェとユトリロ
この二人の風景画は、私が大人になる前は美術雑誌などで人気で良く取り上げられていた。それで国内に多数入ってきたのだろうが、今はどんな人気だろう?
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ビュッフェ 「百日草の花束」 5千万円弱
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ユトリロ 「……通り モンマルトル」 約6千万円
(4)ローランサン
柔らかい色彩のローランサンも日本人好みだが、彼女は高齢になるまではいろいろな作家の影響に揺れ動いていたよう。展示されているのは画風確立後。
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ローランサン 「三人の美女/空気の妖精」 3千万円弱
(5)カシニョール、アイズピリ
リトグラフが国内で人気の最近の作家で、その原画か。色の鮮やかさやパターンの鋭さでインパクトがある。価格はそれほどでもない。
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カシニョール 「ドーヴィルの波」 2千万円弱
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アイズピリ 「青い背景の花束」 800万円弱
2.Michael Hitoshi展
空中からヘリコプタを使って、真俯瞰の写真をシリーズで撮影している。通常とは異なる視点で美を引き出そうとしている。活動は評価され多くの賞を受賞している。グーグルマップなどでスマホで俯瞰写真を見ることがあるが、それをシャッターチャンスと構図を考え、選び抜いて細密に撮影したものと思えばいい。焼き付けにも工夫があるのだろう。
焼き付けたサイズは幅1m以上で、美しく非常に迫力がある。光の濃淡にほれぼれする。100万円のオーダーだが、大きな開いた壁があればあってもいい。
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3.谷口 洸 展 ーSoft Rain and the Lakeー
黒田清輝の「湖畔」という洋画にモチーフを得て、制作しているとのこと。さざ波のきらめきや、水面に揺れながら反射する空や雲のイメージを描いているそうで、それを感じながら見て回ってほしいとのこと。
作品1枚はシンプルな曲線と直線の組み合わせ、ペタッと中間色が塗られている。1枚独立ならば、普通のちょっと爽やかなイラスト程度なのだが、数枚、もしくはもっと多くが、ここで展示されているよりももっと高密度で展示されると、水面や木の葉が揺れているような、作者の言っているイメージが感じられる。飾るにはやはりちょっと長い通路が必要かも。
これは1枚が20万円程度。
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4.和田真理子 個展 雪月風花
とても女性らしい感性で、雪の結晶、花などを日本画の画材で丁寧に描いている。雪を対象にするのは2年前に札幌に移住してからとのこと。冬の美しい白い世界、そこから始まる春の生命力に圧倒させられたとのこと。作品にもそのような自然への美しさに感動している優しい視線、素直な語り掛けが感じられる。展示されているもので約20万円くらい。
この人の作品は、やや薄暗い場所においておくと、静かに輝きだすような気がする。
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5.終わりに
今回、圧倒されるような価格の近代西洋絵画、大型パネルの緻密な写真、若いアートを価格付で鑑賞した。そして高価格の近代洋画の作者は、価格のことは置いておいてそれぞれキャラが立っていること、そして迫力が在ることはわかる。これらは、自由に動く大金を持ってそれが許容範囲ならば、桁に関係なく買ってもいいと思うのでないか? そして今回の西洋絵画が億円のオーダーで、前回の日本画が1000万円のオーダーなのは前者が世界をマーケットにしているのに対し、後者は狭い国内だけだからだろう。
ともかく海外の有名作家の美術展を開催したら、高価なものが会場に集中し防犯対策とか保険金が大変だろうということがよくわかった。
若い二人の作品は、それほどお金を持っていなくってちょっと買って飾ってみようかなといった人たち向けの値段設定か。どちらの人もいい感じだが、谷口さんは軽やかで、和田さんのはじわっと輝くのでその人の好みとTPOで選ばれるだろう。
価格付きで絵画を見ると、いろいろ考えて面白い。でも画廊がつけるこういった価格は表向きで、実際の取引価格は取引状況(税務処理も含めて)で大きく変わるに違いない。だいたいオーダーがわかったので、今後は価格については書かないこととする。
なお私たちがあぶく銭を偶然手に入れてすごい作品を買ったとしても、素人には維持能力がないから、どんどん価値を下げていってしまうとのこと。所有するといったことは考えない方がいいようである。
私たちが購入を考えるようなリーズナブルな価格のものは、寧ろ消耗品と考えたほうがいいのだろう。
(でも、浮世絵は包み紙にするような消耗品から成りあがったのだが)
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