てんちゃんのビックリ箱

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愛知県陶磁美術館の「染付:靑繪(あおえ)の世界」感想

2017-12-30 23:48:48 | 美術館・博物館 等

染付:靑繪(あおえ)の世界
展覧会名:染付:靑繪(あおえ)の世界
場所:愛知県陶磁美術館
期間:2017.11.03~2018.01.14
訪問日:2017.12.26

 愛知県陶磁美術館は、かつての愛知万博会場と隣接した所にあり、名古屋駅から約1時間かかる。とても不便な所。その近くで1時間強の時間の余裕ができたので、訪問したらこの展覧会が開催されていた。

 染付は有田焼の磁器に書かれた青い線の絵程度のイメージしかなかったが、入ってみていろいろわかった。
 まず染付とは、基本は筆を用いて文様が描かれている焼き物のこと。当初は現在の青だけではなく、筆で描かれた黒や赤色のものも染付と呼ばれていた。それが現在では青色のもののみとなっている。そして青色自体もコバルト系の顔料で発色するが、過去から魅力的な材料として扱われていた。

 この展覧会では、青色の顔料の流れ、筆を用いた表現法の流れが一体化する過程、そして青色文様の陶磁器が発展した景徳鎮窯、有田窯、デルフト焼きの名品を展示している。

 展覧会の構成は、以下のようになっている。
  ・9世紀イラクでの黎明期から西アジアでの青色顔料の使用
  ・14世紀以降の中国から東アジアの国々、イラン、オランダ・デルフトの状況
  ・17世紀以降の日本での展開

(1)イラク、そして西アジアの作品について
 9世紀~13世紀のものが展示されていたが、それほど凝った形ではないものに、ブルーの釉がかけられている。ブルーは宝石のラピスラズリの色であり、その色が容器の色となっているのに、使っている人たちは感激しただろう。でもそれより酸化コバルトは黒い色なので、それが高温で焼くことで青く鮮やかに変色することを知った人たちは、本当に感動したのではないか。
 ブルーの地域的適用範囲が暫く広がらなかったのは、宝物だったからだろう。下図はその頃の作品。イラン 12世紀の作品。淡いブルーがとても爽やかな感じである。
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(2)14世紀以降の中国から東アジアの国々 等
 ここの展示が非常に面白いし、勉強になった。青色の文様が陶磁器としてあこがれの対象となったのは、中国の景徳鎮窯に由来する。11世紀初頭にここで磁器が生み出され、そしてそれに青の顔料が使われて素晴らしい輝きを持った作品が生み出されて以降、中国政権はそれを外交の武器として、そして重要な輸出品として扱った。それに周辺国が憧れ、類似品をお作り出し、そして各国の固有の作品へと変化していった。
 西洋まで多量に輸出され、その頃の難破船の中に多量に磁器が見いだされている。日本では有田焼が白磁に青色文様の影響を最もうまく活用し、独自性を発揮した。朝鮮、ベトナム等も景徳鎮窯に似たものを作り出しているが、青色のシャープさは有田焼が素晴らしい。
 西洋でも白磁の青色文様を真似ようとして、オランダのデルフト窯が生み出された。デルフト窯は精緻なプリント技術も生み出して意匠的には東洋製品と肩を並べ、中国が輸出を禁止した時に代替品として非常に発展した。しかし残念ながらこれは技術的限界から、陶器であった。多分この技術的限界を乗り越えることで、ロイヤルコペンハーゲン等の現在の西洋の磁器ブランドが生み出されたのだろう。
 下図は景徳鎮窯の14世紀の作品で、魚と花の文様の壷。魚の姿がとても伸びやか。



 そしてもう一品 景徳鎮窯の作品。これは沈船から引き揚げられたもの。焼き物の形も描かれているものもとてもユニーク、現代的と思う。



 続いて、有田焼、17世紀のもの。描かれている山水画が曲面および周りを囲む人の視線に合わせて描かれていてとても面白い。その洗練性や生地の美しさは、景徳鎮窯に引けを取らない。




 そしてデルフト窯。花や鳥の文様の景徳鎮窯のデザインを模したもの。陶器なのに釉の美しさで、時期と見紛うばかり。そして中国の様式を美しく取り入れている。




(3)17世紀以降の日本での展開
 有田焼とともに、いろいろな地域で青を利用した陶器や磁器が展開した。
 特に中国流の細い筆使いだけはなく、日本画的な洒脱な筆使いが用いられている。また江戸時代で鎖国していたにも関わらず、西洋からの発注で向こうの嗜好のデザインの焼き物が日本で作られている。
 まず、美濃焼の香炉。唐草文様が、大きくぼんやりと柔らかな線で描かれている。




 そして乾山焼きの角向付。太い筆で勢いよく草花の文様が描かれている。一般の染付というイメージにぴったりあう作品である。



 最後に京焼の角皿。これは西洋からの発注品で、文様が西洋の風景である。




 今回の展覧会で、陶磁器の世界における景徳鎮窯の役割の大きさが、非常によくわかった。かつて歴史の時間で少し習ったが、実感がわかなかった。また景徳鎮の方向性を受け継ぎながらも、日本の陶磁器の特色ある発展を、他国に比較して素晴らしいと思った。
 ずっと昔ロンドンへ行った時、デパートでウエッジウッドをお土産に買おうとしたとき、それと、ノリタケ、大蔵陶器が同格で並んでいて、ロイヤルドールトンやアルバートより高い扱いを受けていたので、驚いたことがある。
 世界で現在でも、日本の陶磁器は非常に高い扱いを受けている。私たちはこれに関しては意識せずに非常に素晴らしいものに取り囲まれている、幸せな環境にあるとおもう。
コメント
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