絵画の6月末から7月前半の3回の講義は、テーマが「野菜・果物の写生」、そして先生は日本画京都画壇の重鎮。ネットで調べてみると、何度か記念切手の原画を描いているし、年賀ハガキの図案も描いている。
1回目と2回目の講義では、各自が自由に持ってきた野菜もしくは果物一種を水彩で写生した。そして3回目は6人のグループでそれぞれが持ち寄ったものをまとめて写生した。
この先生はとても自信を持っていて厳しい。まず持ち込んで来たもののサイズや置き方をチェックする。そして対象のサイズが小さすぎるものや描くのが難しいものは、我々の能力が足りないとして、変更させる。(サイズについては、小さいものを大きく描くのは難しいという理由。)
そして、絵になる置き方を考えさせてから、写生開始。
描いている途中もぐるぐる生徒の間を周り、デッサンの狂いや怪しい色彩をチェックしていく。その人のデッサンは本当にうまい。ただしデッサンのほうは、おかしいというだけで手を出さない。それに対し色彩のほうはすぐ手を出す。生徒のパレットに何種類か色を並べて、それを混ぜ合わせ色作りを実演してくれる。多分デッサンはしょうがないとして、色作りの楽しさを知ってほしいとおもっているのだろう。
それでは、今回描いたものを紹介する。
1.第1日 ブロッコリー
皆さんがリンゴ、バナナ、玉ねぎやニンジンなどを持ってきたが、私はブロッコリーを持って行った。複雑そうだけれどもそれだけに適当に描けるのではないかとおもった。持って行ったのは私1人。難しすぎるというチェックはされなかった。
描きだすと、リンゴやバナナなど単純そうなものは先生の形や色のチェックが厳しかったが、構図とデッサンについてはなんとか通った。
しかし色を配置しだすとやっぱり難しい。茎を描いている時に先生の色のチェックが入った。私が2~3色で描きだしたのをみて、もっとたくさんの色をパレットに出せといって、数色絞りだして混ぜだし、「こんな感じ、黄土色がキーなんだ。」といって去っていったが、茎の何処に塗ればいいかわからなかった。また色をたくさん出して狙った色を作るという方式は、私の場合ほぼパステルで2色混合くらいからはじめ、それに色を足して行く方法をとっているので、なじみにくかった。
ただし黒も白も必要なら使ってもいいとのことだったので、それにはほっとした。(他の先生ではその2色の使い方にうるさい人がいる。)
教室の1時間半と家へ帰っての1時間で書いたのが下記の絵。粒々の穂のところの描き方がわからなかったので、点描のようにした。
教室で見たブロッコリーの色が、家で見た色と採光が違うためにだいぶ違ったので、構図を変えてあらためて描いたのが下の絵。
全体的に白っぽくなったが、家でのブロッコリーの状況に近く、粒々の花の所もちょっとイメージが近付いたかなとおもった。。 でもクラスのメンバーに見せると、教室で描いたもののほうがくっきりして力強くていいとのこと。
2.第2日 玉ねぎ
第1日に近くの人が玉ねぎを描いていたので、私もこれにすることにした。
単に玉ねぎだけでは面白くないので、玉ねぎの皮を一緒において描くこととした。先生は、この構図にはかなり興味を持ってくれたようだ。
描きだすと、立体感を出すのがなかなか難しい。先生が下記のヒントをくれた。
・色は中から塗り、周辺は濃度を押さえる。
・光によって輝いているところを旨く描く。
そのヒントを元に描いたのが次の絵。でも先生もあまり立体感が出ていないと評価。
そこであらためて家で玉ねぎを描くこととした。上記2点を強調するとともに、デッサンで玉ねぎの経線(上から下へ向かっての曲線)と影を強調することとした。
2つの玉ねぎを描いた結果が下の図。 ただし2つの玉ねぎを同時に描くのではなく、左を完成後に右側を描くようにした。
左は難しい色の配置の中で、立体感をだそうとしてあまりうまく行かなかった。右は皮の白い輝きを作ることができ、かなり立体感がでたと思う。
3.第3日 果物・野菜多種の組み合わせ
6人のメンバーで果物・野菜を持ち寄った。トマト、ナス、ピーマン、しょうが、スモモ、オクラ、玉ねぎ・・ 誰もが一度描いたものを持ってきた。やはり1品は描いた経験があるものが安心だったのだろう。
今回のポイントは、持ち寄った対象のそれぞれの位置関係とサイズの比較。
私の座席の位置は、やや遠くで机の線が斜めに見える場所だった。その線が遠近感と競合して、配置をちゃんと押さえるのが難しかった。
教室で私が描いたのは下の図、ただし教室ではデッサンとそれぞれの対象に薄く色配置し、家で3時間ほどかけてちょんと色を塗ったもの。
デッサン段階で玉ねぎとナスがやや大きいかなとおもったが縦使いのスケッチブックにいい感じに収まっていた。先生も面白そうという感じで、特に指導はなかった。
教室で薄く色配置が出来てしまったので、私も早く描けるようになったものだと思った。
家で上の絵の状態になった段階で、ナスはやっぱり大きいけれども、とても存在感があっていいなと気に入った。
確認のために、対象の写真を撮っておいた。多分視点が、上のものよりも低かったのだろうけれども、その写真を元に描いたのが下の図。玉ねぎはあいかわらず大きいが、ナスはかなり小さくなっている。色彩は上のものとほぼ安定していた。そして全体として教室で描いたものは対象それぞれが自由で大暴れしている感じだが、こちらのほうはおとなしく仲よく収まっている感じで。こんな感じもいいなとおもった。
ところで、先生は背景の描き方を教えますよと言っていたのが、時間が足りずに教えてもらえなかった。それにも関わらず、我々が考えて背景を描いてみなさいとのことだった。
先生の作品をインターネットで検索すると、花の絵などは一色の単純なものが多かった。でも、標準的な色ではなく独自の色を作っているので難しい。
そこで、ありそうな背景を描き加えてみることにした。
教室で描いたものはそれぞれの自由な雰囲気をイメージし、叢の背景とした。転がりたいとおもったら何処までも転がっていったらいい。
家で描いたものは、板の床を描き加えた。外から採ってこられて、おとなしく料理を待っている感じかな?