展覧会名 平成30年度 第4回コレクション展 没後50年 マルセル・デュシャン特集
場所 京都国立近代美術館
期間 10月16日~12月16日
訪問日 11月17日
先日この美術館に行き、藤田嗣治展を見てきた。そちらのほうは重いので後回しとし、同時に開催されていたコレクション展のうち、マルセル・デュシャンのものが面白かったのでここに書くこととした。
デュシャンは最初は油絵で抽象画を書き十分な大家として扱われていた。しかしある時期にそれを止め、日常の既製品にちょっと手を加えただけの「レデイ・メイド」シリーズを発表し始めた。その思想は「見るものが芸術を作る」もしくは「芸術とは、見る側が決めることである」である。この考えは美術に革命をもたらしたとされる。
美術館内の一室の2/3くらいを占めているが、そこは下記のようになかなか不思議な空間になっている。キュレータの展示方法もいい。特に影の使い方が面白い。中央テーブルの中心が「レディ・メイド」シリーズの最初の作品の「車輪」。
そして、非常に有名な「泉」。便器にMOTT氏の署名を書いただけの作品を、自分も審査員の展覧会に出品し、MUTT氏の作品でないとして拒絶されると審査員を止め、下記を主張した。
「マット氏が自分の手で『泉』を制作したかどうかは重要ではない。彼はそれを選んだのだ。彼は日用品を選び、それを新しい主題と観点のもと、その有用性が消失するようにした。そのオブジェについての新しい思考を創造したのだ。」
理屈っぽい人が、普通の常識に囚われている人をからかっているようなものだ。
元の作品は存在しないが、彼はコピーを承認し世界に数百点存在するとのこと。これはその1点。
以下に印象に残ったもの。「パリの空気」。 単なる空気なのか、ワインを一滴とか、香水が一滴とか入っていたら面白い。
もしかすると遠い将来、地球の過去の空気をサンプル調査したいとして、異星人が割ってみるとかいうシーンを想像すると楽しい。
シャベルがぶら下がっている。影との対比が面白い。
そして ビン乾燥器(影)など。基本的にどう見るかが問われている。
非常に知性のある人であり、作品には技能だけでなくコンセプトが必要と主張した。コンセプチュアルアートの創始者であり、20世紀にアメリカがアートを支配する基盤を築いた。(フランス人だが、アメリカに帰化)
この人は知性があって、いろんな意味を込めて作品を作ったのだろうが、知性もなしに自分勝手に作品を作っているケースと見分けがつかない。困った状況ができたことになった。
でもあっさりと自分基準で、これは作者関係なしに感動する、高名な作者でも受け入れられないものは受け入れないという、鑑賞者側の自由が出来たようなものだ。そして美を、それぞれの自分勝手基準に開放した。
今は美は、その自分勝手基準で混乱しているだろうけれども、また改めて民族美や人類美の再構築が行われるだろう。
なお今回のコレクション展は、他も非常に面白い。藤田展で展示されていない、この美術館の藤田作品も展示されている。藤田嗣治展に行かれた人は、ぜひ通常展示も見られたほうがいい。