名称:名古屋市美術館開館30周年記念 至上の印象派展 ビュールレ・コレクション
場所:名古屋市美術館
訪問日:2018年9月7日
期間:2018年7月28日(土)~9月24日(月・休)
惹句:世界最高峰の印象派コレクション、最後の来日!
絵画史上 最強の美少女
優品選抜(ドリームチーム)、最後の来日
構成:
1.肖像画 2.ヨーロッパの都市
3.19世紀のフランス絵画 4.印象派の風景 マネ、モネ、ピサロ、シスレー
5.印象派の人物 ドガとルノワール 6.ポール・セザンヌ
7.フィンセント・ファン・ゴッホ 8.20世紀初頭のフランス絵画
9.モダン・アート 10.新たなる絵画の地平
私の名古屋での大きな美術展訪問は、配偶者の気分によって大きく影響を受ける。それが暑いのが苦手で、なかなか行く気になってくれなかった。(それと混んでいるのも嫌い。) やっと涼しくなったので行ったが、やはり混んでいた。さすが人気の印象派。
でも内容の充実度には驚いた。海外の美術館からの特集展は、Wiki等で見ると目玉は少なくてほとんどが二線級というのが多い。でも今回のはコレクション自体が閉館しているためか、Wikiで引用されているほとんどの作品がこちらでも展示されている。早い段階で東京で見ておけばと思った。
なおこのビュールレコレクションは、武器商人として大金持ちになったビュールレさんが個人でコレクションしたものと言うのが売りだが、日本の松方幸次郎さんの松方コレクションのほうがはるかにスケールは大きいと思った。
全体として、やはり構成4~7の印象派の展示が充実している。wikiでは8,9の印象派の後の作品紹介はなかったが、かなり面白いものを持っているんだなって思った。
各構成ごとに、概要について示す。
1.肖像画 7点
肖像画に関しては、17世紀のオランダの大家フランス・ハルスの絵を展示するとともに、19世紀のアングルのラフな作品、クールベの作品、ルノワールの男の肖像画、ドガの踊り子ではない作品を展示している。すなわちハルスの生き生きしたタッチを印象派の先駆として捉えるとともに、それぞれの有名作家の本流のテーマではない絵を持つことによって収集家としての視野の広さ、ユニークさをアピールしようとしていると思う。
下の左はハルスの「男の肖像」、右はアングルの「アングル夫人の肖像」である。
ハルスは笑顔の画家と言われているが、これは大笑いではないものの、澄ました顔をちょっと崩して、人間味あふれる顔になっている。17世紀の絵と思えないほど、タッチが荒々しい。
右のアングルは、本来新古典主義の作家で緻密なタッチと重厚さに定評がある。しかしこの絵はタッチの粗い仕上がりで、未完ともいわれている。でもその不完全さが作品の若さや2人の愛情を感じさせる。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/57/a6/6bed350bf8a88cc0d0482766c446bb2c.jpg)
2.ヨーロッパの都市 6点
この項についても、18世紀のイタリアの高名な作家、グァルディとカナールのヴェネツィアの風景の作品を、印象派の先駆の作品とするとともに、シニャックやモネ、マティスの印象派の作品と対比させ、1.と同様な効果を得ようとしている。特にマティスの絵は彼が独特の画風を形成させる前のものである。
下は、グァルディの「サン・マルコ沖 ヴェネツィア」。船よりも空や海の輝きの揺らぎを描いていて、確かに印象派そのものである。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/05/2e/3ea5c86fdf1469feddaeaa7698df92fb.jpg)
次は印象派の呼び名を確立したモネの「陽を浴びるウォータールー橋、ロンドン」。 踊る光が描かれていて、印象派から抽象画への境界へ展開していく状況がわかる。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/45/78/edf25decb6a3ce0b1c452c09647fb21b.jpg)
3.19世紀のフランス絵画 8点
ここには、コローやクールベの肖像画、ドラクロアが2枚、シャバンヌ、そしてマネが3枚展示されている。多分4~7の作家の特集に外れたものをいれたのだろう。ドラクロアを除き、やはり従来の作者のイメージとは異なるものを所有している。
左はコローの「読書する少女」、風景画ではないコローを始めて見た。熱心に本を読んでいる女性が、素直にどこにでもある風景として描かれている。服の面の揺らぎが優しい。
右はマネの「オリエンタル風の衣装をまとった若い女」。シースルーの服を着た女性が立っている。美しい絵ではなく所有したいとは思わないが、そのアンニュイな佇まいは眼を奪い、精神的に訴えかけるものがある。とても現代的だと思う。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/12/f7/96a87e97f43fcfa340e23173d7943237.jpg)
4.印象派の風景 マネ、モネ、ピサロ、シスレー 8点
印象派と言う言葉で、小中学校の頃から慣れ親しんだ風景画が並べられている。どれも光が踊る風景画である。
この中から2点、まず1点目は 私の好きなピサロの「ルーヴシエンヌの雪道」。単調になりがちな雪の風景を、微妙に色調やタッチを変え、暖かい雰囲気で描いている。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/3c/27/f9bb7faad12e7e17f7834c142f4ebc80.jpg)
もう1点はモネの「ヴェトゥイユ近郊のひなげし畑」。無彩色に近い背景に、オレンジの点描風のひなげしが圧倒的な迫力を持っている。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/36/c8/2e7d1810880fd4c643abdac529913aab.jpg)
5.印象派の人物 ドガとルノワール 7点
印象派の中で、人物を対象とした二人の作品で、ドガ3点+彫刻1点、ルノワール3点が 展示されている。
ドガは踊り子で有名だが、それが1枚。他は家族、そして競馬風景を描いたもの。どれも瞬間の生き生きしたポーズを捉える絵である。そのうちやはり踊り子の絵「待合室の踊子たち」。出を待つ踊り子たちの、めいめいのポーズが楽しい。やはり北斎漫画の影響を受けているなと思う。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/51/6c/e623399e79c94eec9d9805692328b9cd.jpg)
そしてルノアールは、この展示会の看板の「イレーヌ・カーン・ダンヴェール嬢」。これは本当に美しい。ヨーロッパの8歳の美少女の、輝く美しさと繊細さを完ぺきにとらえている。特に柔らかな髪の美しさ、本当にいじらしい手の表情が素敵だった。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/70/70/445029405f93c15616cb02532d1b7842.jpg)
6.ポール・セザンヌ 6点
セザンヌで思い浮かぶ静物の絵はなく(コレクション自体にもない)、風景が1点で、後は人物に関わる絵であった。
左は、イレーヌ嬢に並ぶ看板の「赤いチョッキの少年」。手前の手が異常に長く、向こうの手が貧弱という遠近感無茶苦茶で、だけれども全体としてみるとバランスが取れている不思議な絵である。子供の表情は真剣に考えている様子で、結論がでたらすくっと立ってバリバリ活動を始めるだろう。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/78/93/d608ba8f312df82d3bfe8cb90e752872.jpg)
右は「庭師ヴァリエ(老庭師)」。セザンヌさん流の、色のアンサンブルで描いたもので、実際の色の変化ではないけれども、心地よさを感じる作品。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/59/f7/c41234ded73cd6ea45ec42d6bf7d43bc.jpg)
この2点は、対象を描くのに現実の形や色に拘る必要はないということを示している。抽象画への導入と考えていいと思う。
7.フィンセント・ファン・ゴッホ 6点
どの作品もゴッホの自殺前のほぼ10年以内の、彼が傑作を量産した時期のもの。風景2点、ミレーの影響の農夫2点、自画像1点、花が1点。
そのうちまず「自画像」。彼はこういったうねるタッチで自画像をいくつか描いている。眼は何かにとらわれたような感じ、何を見ているのだろう。背景から見事に顔が浮き上がっていくが、どこへ行こうとしているのだろう。自分と回りの人との違いをどう感じていただろうか?
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/08/d7/27e2705e1b994db1cef9723b176866c6.jpg)
もう1枚は尊敬するミレーの種まく人に題材を得た「日没に種まく人」。 この絵を見た時、浮世絵の影響が物凄く強いと思った。ゴーギャン等の影響を受けてと解説に書かれているが、展示説明に書かれていた木だけではなく、配色や夕日の構図も浮世絵の影響が強いと思う。紫の畑、金泥を塗ったような空に真っ黒の農夫の力強さ。現代のデザインへも通ながっていく。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/02/bd/3ad64b168e07b33e253f48276f9a182f.jpg)
8.20世紀初頭のフランス絵画 8点
ロートレック、ゴーギャン、ボナール、ピカソ、ヴュイヤールが展示されている。いわゆるポスト印象派の時代になっている。
ロートレックの「コンフェッテイ」。 ポスターの原画だそうだが、自由な線が圧倒的な迫力を持っている。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/61/5f/8bd4e780bfb9f2cc7996a2d7032f3b40.jpg)
そしてゴーギャンの「肘掛け椅子の上のひまわり」。 ゴーギャンにとっては、ひまわりはたぶんゴッホの象徴。椅子の上に置いてそこにいてほしいと思ったのか。 暗い部屋の中から二人で、窓から見える明るい海へと、一緒に出ていこうと思ったのだろうか。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/4c/a3/6429b48b111ca403c5fd71fc3b1171de.jpg)
9.モダン・アート 7点
Wikiには出ていないが、印象派以降のフォービズムやキュビズムの作品も蒐集している。ブラマンク、ドラン、ブラック、ピカソなどである。 そのうちピカソに1点 「花とレモンのある静物」を紹介する。
最初にこの絵を見た時、ダースベイダーかと思った。この絵はナチスがパリを占領していた頃に描かれたもの。それを反映して、黒い線が多用されている。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/23/a9/da1542eef3d03d306b1e2fdd9640ebee.jpg)
10.新たなる絵画の地平
ここでは、モネの2m×4mの大型の睡蓮の絵 「睡蓮の池、緑の反映」のみが展示されている。この絵は最初装飾画として軽んじられ安値で取引されていたものが、一転芸術作品とみなされ、非常に重要な評価がなされるようになったものである。
非常に落ち着いた色調で、大胆に構図が構成されている。モネ自体が近代における絵画の変革の象徴とみなされており、この章の表題になったと思われる。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/64/b6/13f9ffb088bd56a51a855207406715af.jpg)
おわりに
ビュールレコレクションの重要作品が大量に来ているのでびっくりした。惹句の「優品選抜」は正しい。 そしてビュールレさんという人が印象派を見事に体系的に集めており、その中でコレクションを特徴づけるために、ややユニークな作品を集めていることがわかった。
でも松方さんはもっとすごい。
この展示会は、見て損は絶対にない展示会だと思う。残念ながら名古屋市美術館は展示の空間構成に問題があり、混みやすい。もっといい場所で展示されればよかった。
場所:名古屋市美術館
訪問日:2018年9月7日
期間:2018年7月28日(土)~9月24日(月・休)
惹句:世界最高峰の印象派コレクション、最後の来日!
絵画史上 最強の美少女
優品選抜(ドリームチーム)、最後の来日
構成:
1.肖像画 2.ヨーロッパの都市
3.19世紀のフランス絵画 4.印象派の風景 マネ、モネ、ピサロ、シスレー
5.印象派の人物 ドガとルノワール 6.ポール・セザンヌ
7.フィンセント・ファン・ゴッホ 8.20世紀初頭のフランス絵画
9.モダン・アート 10.新たなる絵画の地平
私の名古屋での大きな美術展訪問は、配偶者の気分によって大きく影響を受ける。それが暑いのが苦手で、なかなか行く気になってくれなかった。(それと混んでいるのも嫌い。) やっと涼しくなったので行ったが、やはり混んでいた。さすが人気の印象派。
でも内容の充実度には驚いた。海外の美術館からの特集展は、Wiki等で見ると目玉は少なくてほとんどが二線級というのが多い。でも今回のはコレクション自体が閉館しているためか、Wikiで引用されているほとんどの作品がこちらでも展示されている。早い段階で東京で見ておけばと思った。
なおこのビュールレコレクションは、武器商人として大金持ちになったビュールレさんが個人でコレクションしたものと言うのが売りだが、日本の松方幸次郎さんの松方コレクションのほうがはるかにスケールは大きいと思った。
全体として、やはり構成4~7の印象派の展示が充実している。wikiでは8,9の印象派の後の作品紹介はなかったが、かなり面白いものを持っているんだなって思った。
各構成ごとに、概要について示す。
1.肖像画 7点
肖像画に関しては、17世紀のオランダの大家フランス・ハルスの絵を展示するとともに、19世紀のアングルのラフな作品、クールベの作品、ルノワールの男の肖像画、ドガの踊り子ではない作品を展示している。すなわちハルスの生き生きしたタッチを印象派の先駆として捉えるとともに、それぞれの有名作家の本流のテーマではない絵を持つことによって収集家としての視野の広さ、ユニークさをアピールしようとしていると思う。
下の左はハルスの「男の肖像」、右はアングルの「アングル夫人の肖像」である。
ハルスは笑顔の画家と言われているが、これは大笑いではないものの、澄ました顔をちょっと崩して、人間味あふれる顔になっている。17世紀の絵と思えないほど、タッチが荒々しい。
右のアングルは、本来新古典主義の作家で緻密なタッチと重厚さに定評がある。しかしこの絵はタッチの粗い仕上がりで、未完ともいわれている。でもその不完全さが作品の若さや2人の愛情を感じさせる。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/55/fc/6d17d2a50e12582f25028298fa74b9f2.jpg)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/57/a6/6bed350bf8a88cc0d0482766c446bb2c.jpg)
2.ヨーロッパの都市 6点
この項についても、18世紀のイタリアの高名な作家、グァルディとカナールのヴェネツィアの風景の作品を、印象派の先駆の作品とするとともに、シニャックやモネ、マティスの印象派の作品と対比させ、1.と同様な効果を得ようとしている。特にマティスの絵は彼が独特の画風を形成させる前のものである。
下は、グァルディの「サン・マルコ沖 ヴェネツィア」。船よりも空や海の輝きの揺らぎを描いていて、確かに印象派そのものである。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/05/2e/3ea5c86fdf1469feddaeaa7698df92fb.jpg)
次は印象派の呼び名を確立したモネの「陽を浴びるウォータールー橋、ロンドン」。 踊る光が描かれていて、印象派から抽象画への境界へ展開していく状況がわかる。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/45/78/edf25decb6a3ce0b1c452c09647fb21b.jpg)
3.19世紀のフランス絵画 8点
ここには、コローやクールベの肖像画、ドラクロアが2枚、シャバンヌ、そしてマネが3枚展示されている。多分4~7の作家の特集に外れたものをいれたのだろう。ドラクロアを除き、やはり従来の作者のイメージとは異なるものを所有している。
左はコローの「読書する少女」、風景画ではないコローを始めて見た。熱心に本を読んでいる女性が、素直にどこにでもある風景として描かれている。服の面の揺らぎが優しい。
右はマネの「オリエンタル風の衣装をまとった若い女」。シースルーの服を着た女性が立っている。美しい絵ではなく所有したいとは思わないが、そのアンニュイな佇まいは眼を奪い、精神的に訴えかけるものがある。とても現代的だと思う。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/33/4a/a9a6596f6e765d5f908013e069143ee5.jpg)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/12/f7/96a87e97f43fcfa340e23173d7943237.jpg)
4.印象派の風景 マネ、モネ、ピサロ、シスレー 8点
印象派と言う言葉で、小中学校の頃から慣れ親しんだ風景画が並べられている。どれも光が踊る風景画である。
この中から2点、まず1点目は 私の好きなピサロの「ルーヴシエンヌの雪道」。単調になりがちな雪の風景を、微妙に色調やタッチを変え、暖かい雰囲気で描いている。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/3c/27/f9bb7faad12e7e17f7834c142f4ebc80.jpg)
もう1点はモネの「ヴェトゥイユ近郊のひなげし畑」。無彩色に近い背景に、オレンジの点描風のひなげしが圧倒的な迫力を持っている。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/36/c8/2e7d1810880fd4c643abdac529913aab.jpg)
5.印象派の人物 ドガとルノワール 7点
印象派の中で、人物を対象とした二人の作品で、ドガ3点+彫刻1点、ルノワール3点が 展示されている。
ドガは踊り子で有名だが、それが1枚。他は家族、そして競馬風景を描いたもの。どれも瞬間の生き生きしたポーズを捉える絵である。そのうちやはり踊り子の絵「待合室の踊子たち」。出を待つ踊り子たちの、めいめいのポーズが楽しい。やはり北斎漫画の影響を受けているなと思う。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/51/6c/e623399e79c94eec9d9805692328b9cd.jpg)
そしてルノアールは、この展示会の看板の「イレーヌ・カーン・ダンヴェール嬢」。これは本当に美しい。ヨーロッパの8歳の美少女の、輝く美しさと繊細さを完ぺきにとらえている。特に柔らかな髪の美しさ、本当にいじらしい手の表情が素敵だった。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/70/70/445029405f93c15616cb02532d1b7842.jpg)
6.ポール・セザンヌ 6点
セザンヌで思い浮かぶ静物の絵はなく(コレクション自体にもない)、風景が1点で、後は人物に関わる絵であった。
左は、イレーヌ嬢に並ぶ看板の「赤いチョッキの少年」。手前の手が異常に長く、向こうの手が貧弱という遠近感無茶苦茶で、だけれども全体としてみるとバランスが取れている不思議な絵である。子供の表情は真剣に考えている様子で、結論がでたらすくっと立ってバリバリ活動を始めるだろう。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/78/93/d608ba8f312df82d3bfe8cb90e752872.jpg)
右は「庭師ヴァリエ(老庭師)」。セザンヌさん流の、色のアンサンブルで描いたもので、実際の色の変化ではないけれども、心地よさを感じる作品。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/59/f7/c41234ded73cd6ea45ec42d6bf7d43bc.jpg)
この2点は、対象を描くのに現実の形や色に拘る必要はないということを示している。抽象画への導入と考えていいと思う。
7.フィンセント・ファン・ゴッホ 6点
どの作品もゴッホの自殺前のほぼ10年以内の、彼が傑作を量産した時期のもの。風景2点、ミレーの影響の農夫2点、自画像1点、花が1点。
そのうちまず「自画像」。彼はこういったうねるタッチで自画像をいくつか描いている。眼は何かにとらわれたような感じ、何を見ているのだろう。背景から見事に顔が浮き上がっていくが、どこへ行こうとしているのだろう。自分と回りの人との違いをどう感じていただろうか?
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/08/d7/27e2705e1b994db1cef9723b176866c6.jpg)
もう1枚は尊敬するミレーの種まく人に題材を得た「日没に種まく人」。 この絵を見た時、浮世絵の影響が物凄く強いと思った。ゴーギャン等の影響を受けてと解説に書かれているが、展示説明に書かれていた木だけではなく、配色や夕日の構図も浮世絵の影響が強いと思う。紫の畑、金泥を塗ったような空に真っ黒の農夫の力強さ。現代のデザインへも通ながっていく。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/02/bd/3ad64b168e07b33e253f48276f9a182f.jpg)
8.20世紀初頭のフランス絵画 8点
ロートレック、ゴーギャン、ボナール、ピカソ、ヴュイヤールが展示されている。いわゆるポスト印象派の時代になっている。
ロートレックの「コンフェッテイ」。 ポスターの原画だそうだが、自由な線が圧倒的な迫力を持っている。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/61/5f/8bd4e780bfb9f2cc7996a2d7032f3b40.jpg)
そしてゴーギャンの「肘掛け椅子の上のひまわり」。 ゴーギャンにとっては、ひまわりはたぶんゴッホの象徴。椅子の上に置いてそこにいてほしいと思ったのか。 暗い部屋の中から二人で、窓から見える明るい海へと、一緒に出ていこうと思ったのだろうか。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/4c/a3/6429b48b111ca403c5fd71fc3b1171de.jpg)
9.モダン・アート 7点
Wikiには出ていないが、印象派以降のフォービズムやキュビズムの作品も蒐集している。ブラマンク、ドラン、ブラック、ピカソなどである。 そのうちピカソに1点 「花とレモンのある静物」を紹介する。
最初にこの絵を見た時、ダースベイダーかと思った。この絵はナチスがパリを占領していた頃に描かれたもの。それを反映して、黒い線が多用されている。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/23/a9/da1542eef3d03d306b1e2fdd9640ebee.jpg)
10.新たなる絵画の地平
ここでは、モネの2m×4mの大型の睡蓮の絵 「睡蓮の池、緑の反映」のみが展示されている。この絵は最初装飾画として軽んじられ安値で取引されていたものが、一転芸術作品とみなされ、非常に重要な評価がなされるようになったものである。
非常に落ち着いた色調で、大胆に構図が構成されている。モネ自体が近代における絵画の変革の象徴とみなされており、この章の表題になったと思われる。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/64/b6/13f9ffb088bd56a51a855207406715af.jpg)
おわりに
ビュールレコレクションの重要作品が大量に来ているのでびっくりした。惹句の「優品選抜」は正しい。 そしてビュールレさんという人が印象派を見事に体系的に集めており、その中でコレクションを特徴づけるために、ややユニークな作品を集めていることがわかった。
でも松方さんはもっとすごい。
この展示会は、見て損は絶対にない展示会だと思う。残念ながら名古屋市美術館は展示の空間構成に問題があり、混みやすい。もっといい場所で展示されればよかった。