てんちゃんのビックリ箱

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第109回院展 訪問 感想

2024-12-04 09:55:49 | みんなの花図鑑


美術展名:再興第109 回日本美術院展覧会(院展)
場所:松坂屋美術館
期間:11月22日ー12月2日   前期:11月22日ー26日   後期:28日ー12月2日
訪問日:前期:11月25日 後期:12月2日

 美術のクラブの人から招待券を頂いて、院展の名古屋巡回展を訪問しました。前期にまず訪問したら配偶者が気に入ったので、後期も訪問しました。
 
 日本美術院は、明治時代に岡倉天心が創設し、その後横山大観らが復興し育てた日本画の牙城。その展示会である院展は内閣総理大臣賞や文部大臣賞があるほどの権威がある。
 大学の頃京都で院展に行ったが、その時は洋画の近代から現代の絵に振れていたので、似たような大きな絵ばっかりという印象だった。今回行ってまず思ったのは、院展てこんなに小さかった?ということ。展示リストを見て納得、特別賞の作品と同人の中でも少数の人が通期なだけで、その他の同人や入選作でも前後期に別れていて、その他の非入選作は愛知、三重、岐阜の3県の人の作品のみが前後期に展示されている。2回訪問しての規模ならばそれなりに納得できる。京都のその展覧会には、同人や賞作品が全部出ていて地元作家の作品も多かったのだろう。

 日本美術院には、下から研究会員 570名(一回でも入選したもの)、院友 648名(3回以上の入選)、特待 160名(20回以上の入選または4回以上の奨励賞など)、招待 2名(高レベルの入賞が条件)、同人 37名(招待の中から人格/美術重視で既存同人による推薦/選挙)というヒエラルキーがある。その下に応募してもまだ入選を果たしていない集団がいることとなる。
 同人の中でも、数人の理事、監事、理事長がこの組織を動かし、いわば権力構造のトップで、理事長は文化勲章を授与されている。
 美術展の構成は、最初に同人の絵、次に重要な賞の作品がならび、その後に入選作品や地域の作品が並んでいる。
 入るととても美しい空間が広がる。同人の作品はそれぞれに美しく、完璧であることを競ってる。それぞれにちょっとした驚きもあるが、予定調和的なもの。とても心地よい空間を作っている。
私の配偶者はそれを気に入って、前期にいって鑑賞とセットで贅沢なお茶をしたことで、後期は贅沢な昼食とセットでとても満足したようだ。

 それらの同人の作品を紹介する。(なお展示会は撮影可能)
 まず、文化勲章を授与された田淵俊夫氏の作品。完璧な色あいで南国の直射日光の熱さを感じさせる。



田淵俊夫  遠い思い出 灼熱の詩

 続いて、中部地域出身の理事 松村公嗣氏の作品。シマウマのだまし絵のような作品でとても面白い。



松村公嗣  

 私がロマンチックで気に入ったのが 理事 西田俊英氏の作品。これも大作で、精緻に描かれている。真ん中にいる小さな妖精も私からみれば大作。



西田俊英  妖精の森 

 理事は最上層に君臨するだけに、ものすごく力が入っているなと感じた。

 同人中で、大臣賞受賞がなされた。(なぜだか、同人内で選ぶこととなっているらしい)

 内閣総理大臣賞は、以下の作品。下のほうに恐竜や動物を描き、上に植物、中央に帆などを組み合わせて描き、夢のような空間を描いている。



内閣総理大臣賞  前田力 博物学

 文部科学大臣賞は以下の、金色の枯野を吹き渡る風に枯葉が飛ばされていくという装飾的作品。金によって見る角度、そして多分ライティングによってかなり見え方が違うという技術を入れ込み、直接作品に向き合うことが要請される。



文部科学大臣賞  山田伸  神渡し


 同人作品はどれも主張しあっているが、神渡しには、私としてはユニーク性があると感じられた。博物学はテーマの発想や表面の線の描き方など面白いけれども、賞の意義はなんだろう?

 多分 同人は入選等を何度も得て上がってきたのだから、かなりの年齢と思われる。それらの人々が、この展示会にむけて大作を作ってくる。自分の評価を維持するために大変な努力をしているのだろうなとおもった。そして描かれた完成品はある意味落ち着き過ぎたアカデミックの権化で、芸術的感動を呼ぶものというよりは美しい装飾品のように感じられた。描いている人の匂いといったものも私としてはそんなに感じられなかった。ここまで上がって来たら、後はどこかの寺院などで襖絵を描くのがゴールかなと思った。


 日本美術院賞や奨励賞、そして入選などの同人外のランクに来ると、未完の若々しさといったものが感じられて、見るのが楽しかった。

 日本美術院賞の2件のうちの一つ。きれいな青に金の輝きが爽やか。装飾的でも同人クラスの人とは輝きの質が違う。



樋田礼子 井の頭(11) ー樹下生生ー

 奨励賞で私の好きな絵は、次の絵。私が工学系であることもあるが、趣味の隠れ工房で楽しんでいる雰囲気が好き。



山口貴士  私的飛行計画

 配偶者の好きな絵は、ブラインドでモノトーンに近い状況になったところでピアノを弾く少女。想いが伝わってくるようとのこと。



氷見剛 休日

 入選および一般(中部のほぼ3県の作者)の部屋はほぼ2部屋あり、洋画の展覧会とほとんど変わらないようなものも見受けられた。ただしやはり日本画のほうが、ちゃんとした基準以上の作品になっていると思った。そして個人の勝手な美意識を押し出して標準的な観客を置いてきぼりにするようなことはない。それが配偶者などにとっても安心して気分よく見られる理由だろう。

 この領域は、前期と後期で雰囲気がガラリと変わった。ちょっとびっくりして展示品リストを見ると、この枠の男女比率が前期が男性:女性が3:2だったのに対して後期は2:3になっている。そして絵の感じが全然違う。 男性は何か苦労して絵を構築しているのに対して、女性は直線的に求めるものを得ようして得られている感じがした。
 ともあれ、同人クラスは完全な男社会と思われる。しかし若い画家はほとんど五分五分くらいになっているのではないか。その波が今後上のほうにまでくるとこの世界も変わってくるのではないかと感じた。

 以下に入選の女性1件と、一般で愛知の女性の作品を1件載せておく。



宮野里美  千紫万紅



宮城翔子 卯の花くたし

 アカデミックで心地よい雰囲気を楽しむことができる展覧会であった。
コメント
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