(写真) 幻影的なカリガネソウの花
散歩コースのハーブ園の半日陰のチョッと湿ったところに、
チェリーセージの枯れたような枝に、アオジソのような大き目の葉がつき、
セージに似た潅木が1本だけあった。
そこには、
風に舞う幻影的な青紫の花が咲いていた。
上に2枚、下に3枚の花弁が開き、この形態は南アフリカのペラルゴニュウムのようでもあり、
タイムなどの小花もこの形状だ。
ただチョッとちがうのは、雄しべ、雌しべなどの植物の中心の機能が異なっており、
「J」の字のように湾曲している。
この形状が不思議であり、青紫の色彩とあって“幻影”的な感じをかもし出しているのだろう。
この“幻影”もロマンではなく、合理的な裏づけがあったから驚きだ。
虫たちが蜜を吸いに来て下3枚の花弁に止まると、
その重みで花弁が沈み「J」の字の雄しべ・雌しべがバネのように落ちてきて
虫たちの背中に花粉をつけ、或いは他の花の花粉をもらい受粉を行っているという。
なんと素晴らしい特異性を持った差別化がされているのだろう。
自然は合理的で、その合理性に美しさがあることに感心する。
(写真)カリガネソウの横顔
ず~と 名前を知らなかったが、名前は、カリガネソウという。
クマツヅラ科の多年草であり、古代からのハーブ、バーベイン(くまつづら)も同じ属だ。
新しい分類方法では、
シソ科に入るようであり、セージの仲間の可能性が出てきた。
開花期には、葉などから独特の匂いがするので嫌われるようでもあるが、
とげとか匂いは草食動物への防御手段であり、防護本能が強いのだろう。
同属のバーベインは、古代から万能のハーブとして薬だけでなく神事にも使われてきた。
このカリガネソウも何かあるに違いない。
10月にはいったので、種が取れるようになってきた。
その種をもらってきたので、さっそく蒔いてみることにした。
知らないことは聞き、ほめた効果だったのだろうか。
(写真)カリガネソウの立ち姿
カリガネソウ(雁草、雁金草)
・クマツズラ科カリガネソウ属(新しい分類ではシソ科となる)の耐寒性がある多年草。
・学名は、Caryopteris divaricata Maxim. 。和名がカリガネソウ(雁草、雁金草)。別名が帆を掛けている姿からホカケソウ・帆掛草。
・原産地は、日本、朝鮮半島、中国の山野の比較的湿ったところに自生する。
・草丈は60~80cmで株張りが同じぐらい。
・葉は卵形で比較的大きく縁に鋸状のギザギザがあリ、アオジゾに似る。開花が近づくと臭気を放つ。
・開花期は晩夏から秋で、青紫の帆掛け状の花を咲かせる。
・晩秋に萼の中に3~4この黒い種子をつける。これをまくかさし芽で殖やす。種をもらったのでさっそく蒔いてみる。
属名の語源は、
ギリシャ語でのcaryo(クルミwalnut、胡桃の木を意味する"karya"、"kaura"に由来)と
pteris(=ptera=pteridiumギリシャ語でのシダfern、翼wing、翼のような)の合成であり、胡桃のような葉を意味する。
命名者Maxim.は、
Maximowicz, Carl Johann (Ivanovič) (1827-1891)
ロシアの植物学者。プランとハンターとして活躍し、函館の開港を知り1860年には函館に到着し14ヶ月滞在し手植物調査を行った。1861年11月には横浜に行き、長崎、横浜で植物調査を行い、1863年の末には喜望峰に向けて出発し翌年ペテルスブルグに帰る。
その後、ロシアの植物情報のセンターとして活躍し、1世紀前のイギリスのバンクス卿のような存在となった。