フジバカマは中国から薬草として入ってきたハーブであり、
原産地中国では、紀元前に書かれた『易経』に蘭草(らんそう)として載っている古い植物という。
良い香りがするのでラン同様に蘭と呼ばれ、母屋を奪ってしまうほど好まれたようだ。
日本には、早くに伝来したようだが、『日本書紀』(720年)から登場し、
万葉集の山上憶良(660?―733)の詩で “秋の七草” の一つとなったが、
この1首しか読まれていずこの頃はまだ高嶺の花だったようだ。
その後野生化し、関東以西の湿り気のある川原に生息するようになったが
いまは川原がコンクリート化で消滅し、絶滅危機植物の仲間入りをしている。
春秋の七草はそのうちに、変えないとだめになるのではないだろうか?
というほど、日本の自然環境が変化し、季節感も崩れ、日本文化も守りにくくなっていくのだろう。
(写真)フジバカマの花
米粒大の薄い赤紫のつぼみが多数枝の先につき、
この状態が結構長いが、これだけでも見ごたえがある。
このつぼみが破れて白っぽいしべが出現するが、まるでイソギンチャクのようだ。
フジバカマで売られていても、よく似たヒヨドリバナだったりするので注意してみておきたい。
区別は葉にある。
フジバカマの葉は、深く切れ込んだ3枚の葉からなり、
ヒヨドリバナは、細長い1枚の葉なので見分けやすい。
というほど、原種が絶滅しつつあるということだろう。
ハギ、オミナエシ、ワレモコウに引き続き秋の七草のうち4種を取り上げたが、生存危機状態は似ている。
川原、野原、空き地などの公共スペースの消滅、外来種の増殖に負けてしまう弱さ
など植物の環境も激変している。
植物にもグローバル化による競争の波が押し寄せており、金利の影響で開発が進んだり遅れたりする。
国土省の治水・防水という考え方は、日本の植物相を一変させ絶滅危惧植物を増やしてしまった。
この反省に立ち水辺を作ってみたら、豪雨によりヒトの命を流してしまうことにもなった。
自然をコントロールするということは難しいことだ。
さらにそこには、日本の情緒・文化を守ろうという考えがないので、
何処にでもある殺風景な景色が出来上がってしまっている。
人工物を扱って国土をコンクリート化した国土交通省、生き物を扱うが自然を考えてこなかった農林省
この二つが合体し、日本の国土デザインを再考してもらいたいものだ。
フジバカマの名前の由来として“不時袴”という説がある。
緊急時にも下着姿ではなくズボンをはいて対応できるようにしている
そんな緊急対応を説いている花のようだ。
延長線上には、たいした未来がない。
江戸から明治に変わったぐらいの大変化が欲しいところだが、
これまでをデザインしてきた人たちの延長線発想では無理だろうから、
“頭の挿げ替え”か“異質の合体”が欲しいところだ。
その首を洗う時は、フジバカマが良さそうだ。入浴剤として試してみよう。
(写真)フジバカマの立ち姿、葉が3枚に切れている
フジバカマ(藤袴)
・キク科ヒヨドリバナ属の耐寒性がある多年草。
・学名は類似を含めて二つある。日本の種に関しては、ツンベルクが命名したEupatorium japonicum Thunb. 。原種に関しては、Eupatorium fortunei Turcz.。和名がフジバカマ(藤袴)
・原産地は中国。日本、朝鮮半島にも生息。
・草丈1m、葉は3深裂でこの点が長楕円形の1枚葉のヒヨドリバナと区別される。
・開花期は8~10月。枝の先に淡い赤紫の小粒がつき、これがはじけて白っぽい糸状のしべが現れる。
・肥沃で湿り気の土壌を好む。
・甘い香りを生かしてポプリ、入浴剤として利用する。
・
<参考>ヒヨドリバナ
http://www.botanic.jp/plants-ha/hiyodo.htm (ボタニカルガーデン)