===== コンテンツ(もくじ) =====
序 チェリーセージ全般について
1、サルビア・グレッギー
2.サルビア・ミクロフィラ
→ その59
3.サルビア・ヤメンシス
4.チェリーセージの区別整理と栽培メモ
→ その60
===== 序: チェリーセージ全般について =====
チェリーセージに関しては、バラバラに書いてきたのでまとめることにした。
チェリーセージと一般的には呼ばれているが、ここには三種類があり、葉と色とでおおよそが区別できる。
基本は2種で、『サルビア・グレッギー(Salvia greggii)』と『サルビア・ミクロフィラ(Salvia microphylla)』。そして、この2種が自然の中で交配して出来たのが『サルビア・ヤメンシス(Salvia x jamensis)』という。
'''区別の仕方は'''
葉の場合、細長くシワシワがあるのがグレッギーで、小さい卵形のツルッとした光沢のある葉をしているのがヤメンシス。ミクロフィラはグレッギーに近い葉。
ヤメンシスは、そもそもの由来がグレッギーとミクロフィラの交配なので花の色が豊富で、園芸店でツルッとした葉とカラフルな花は大部分がヤメンシスといっても良い。
いづれも、メキシコ原産で、1500~3000mの高山に自生している。そしてここからが面白いのだが、この3種は高度で生育が分かれており、低いところにはグレッギーが、その上にはミクロフィラが咲いている。そして山を登るにつれカラフルな花が咲いていて、別種とは気づかなかったようだ。これが両種が自然に交配したヤメンシスだった。メキシコはセージの宝庫だからワクワクする。
それぞれの概略は次のとおり。
● グレッギー (Salvia greggii)
一般的にチェリーセージといわれており、ピンクがかった赤い花を次々と咲かせる。寒さにも強いので、霜に当てなければ、一年中咲く。茎は木質化し、太くなっていく。3年目くらいでもろくなるので、挿し木などで増やしていく。
● ミクロフィラ(Salvia microphylla)
グレッギー同様にメキシコ原産地だが両者のちがいがよくわかりにくい。ミクロフィラ・ホットリップスが有名で、気温によって花の色が変化する。暖かい時は赤一色に、寒い時は白一色になる。気温がはざかいの時(夏から秋とか)は三色がいっぺんに出ることがある。
● ヤメンシス(Salvia x jamensis)
グレッギーとミクロフィラの自然交配種がヤメンシス。
1991年に英国の植物学者ジェームス・コンプトンによってメキシコの山岳地帯jameの村付近で発見した。比較的最近発見された種でもある。Jameの渓谷には、グレッギーの真っ赤な花が咲き乱れていましたが、高度が高くなるにしたがって花の色が変化していくことに気づき発見したそうだ。
これら3種をチェリーセージと総称しているが、現在は3種とも結構な園芸品種が出回っており、区別が難しくなってきている。
'''真っ赤なチェリーセージとの出会い'''
セージにはまるきっかけがこのチェリーセージ(グレッギー)だった。
ヨードチンキ臭い葉の香り、この香りが気に入ってしまった。そのせいなのか、良く飲むアイラ島のシングルモルトウィスキーの香りが気にならなくなり心地よくなった。今では、チェリーセージ系9種類に増えてきた。花色は、赤、赤と白ミックス、イエロー、赤紫、オレンジ、ピンク、パープル、サーモン、サーモンイエローと花の色数を増やしている。
===== 1.サルビア・グレッギー =====
(写真1)チェリーセージ、S.グレッギー
園芸店でチェリーセージとして売られているが、この中は3種に分けられる。基本系は、学名ではサルビア・グレッギー、英名ではオータム・セージと呼ばれる。真っ赤な色のセージがこれにあたり、通常この種をチェリーセージといっている。四季咲きで、霜に当てなければ2月頃まで咲いている。
このチェリーセージ=サルビア・グレッギーは、メキシコ・Saltilloで植物採集を行っていたアメリカの歴史学者で貿易商のグレッグ(Josiah.Gregg 1806-1850 )によって1848年に発見・採取された。学名は、発見者にちなんでグレッギーと名付けられた。英名では、オータムセージ(Autumn sage)と呼ばれ、森の賢人という意味を持つ。森の入り口辺りのブッシュに生え、何となく賢くたたずんでいるのだろう。オランウータンも森の賢人と呼ばれているが、考え深げなところが似ているのだろうか?
===== 2.サルビア・ミクロフィラ =====
(写真2)S.ミクロフィラ、ホットリップス
'''ミクロフィラの歴史'''
真っ赤なチェリーセージサルビア・グレッギーは、1848年にグレッグによって発見されたが、サルビア・ミクロフィラは、1885年にアメリカのナチュラリスト、プリングル(Cyrus Guernsey Pringle 1838-1911)によってメキシコで発見された。彼は、35年にわたりメキシコを中心とした北アメリカの植物調査を行い、おおよそ1200の新種を発見したという偉大な成果を残している。
また、サルビア・ミクロフィラにはいくつかの種があるが、その新種の名前には、大航海時代のスペイン統治の植物学者の名残りがある。
Martínとその盟友José Mariano Mociño(1756-1820)の名がついたミクロフィラの種(Salvia microphylla Sessé & Moc)がある。
Martín Sessé y Lacasta (1751-1808)は、スペインの医者・ナチュラリストで、彼はスペイン国王カルロス三世にメキシコでの大規模な植物相の調査・探検を提案し、実施することになった。大航海時代は、香辛料・薬用植物・金を東洋に求めてはじまったが、
重要植物は機密としてスペインが秘匿してきただけでなく、よく知られない植物が多々あった。
マーティンは、メキシコの植物相の調査・植物学の発展に貢献したが、彼が集めた植物のコレクション及び原稿は、また秘匿され死後約2世紀後に世に出てくるという不思議なことになっている。またということは、16世紀後半のフランシスコ・エルナンデスの植物調査の成果が公開されないという同じようなことが以前にもあったが、重要な情報は集めるが秘匿するだけで活用されないという体質が伺える。活用するために集めるという原点を忘れた体質が、頂点から滑り落ちたのであろうか?
スペインに取って変わったイギリスは、キュー王立植物園を植物情報を収集する戦略拠点として構築・活用していくことになる。
(※)[http://blogs.yahoo.co.jp/tetsuo_shiga/21372607.html フランシスコ・エルナンデス]に関してはここを参照。
(写真3)気温で変わるホットリップスの花
サルビア・ミクロフィラの人気商品とでもいえる‘ホットリップス’は、気温で花の色が変わる。通常は、花びらのふちが 真っ赤な口紅を塗ったようになっており、まるで“笑うセールスマン”(藤子不二雄A)の分厚い唇を思い浮かべてしまう。
“真っ白になるのは気温が低い時”。“真っ赤になるのは気温が高い時”。
サルビア・ミクロフィラにはこんな性質があり、1年のうちでも様々に変化する。気温が高い時の赤は、グレッギーの赤よりも鮮やかで美しい。しかし、ホットリップスは、赤・白の通常のときの方がそれぞれが際立って美しい。
この‘ホットリップス’は、サンフランシスコの園芸誌編集者リチャード・ターナー(Richard G. Turner)によって発見された。彼のメキシコのメードが誕生祝で故郷の花を贈ったところ、これがホットリップスだった。原産地は、メードの故郷メキシコのチアパス地域(the Chiapas area of Mexico)になる。
(写真4)ホットリップス赤だけの花
序 チェリーセージ全般について
1、サルビア・グレッギー
2.サルビア・ミクロフィラ
→ その59
3.サルビア・ヤメンシス
4.チェリーセージの区別整理と栽培メモ
→ その60
===== 序: チェリーセージ全般について =====
チェリーセージに関しては、バラバラに書いてきたのでまとめることにした。
チェリーセージと一般的には呼ばれているが、ここには三種類があり、葉と色とでおおよそが区別できる。
基本は2種で、『サルビア・グレッギー(Salvia greggii)』と『サルビア・ミクロフィラ(Salvia microphylla)』。そして、この2種が自然の中で交配して出来たのが『サルビア・ヤメンシス(Salvia x jamensis)』という。
'''区別の仕方は'''
葉の場合、細長くシワシワがあるのがグレッギーで、小さい卵形のツルッとした光沢のある葉をしているのがヤメンシス。ミクロフィラはグレッギーに近い葉。
ヤメンシスは、そもそもの由来がグレッギーとミクロフィラの交配なので花の色が豊富で、園芸店でツルッとした葉とカラフルな花は大部分がヤメンシスといっても良い。
いづれも、メキシコ原産で、1500~3000mの高山に自生している。そしてここからが面白いのだが、この3種は高度で生育が分かれており、低いところにはグレッギーが、その上にはミクロフィラが咲いている。そして山を登るにつれカラフルな花が咲いていて、別種とは気づかなかったようだ。これが両種が自然に交配したヤメンシスだった。メキシコはセージの宝庫だからワクワクする。
それぞれの概略は次のとおり。
● グレッギー (Salvia greggii)
一般的にチェリーセージといわれており、ピンクがかった赤い花を次々と咲かせる。寒さにも強いので、霜に当てなければ、一年中咲く。茎は木質化し、太くなっていく。3年目くらいでもろくなるので、挿し木などで増やしていく。
● ミクロフィラ(Salvia microphylla)
グレッギー同様にメキシコ原産地だが両者のちがいがよくわかりにくい。ミクロフィラ・ホットリップスが有名で、気温によって花の色が変化する。暖かい時は赤一色に、寒い時は白一色になる。気温がはざかいの時(夏から秋とか)は三色がいっぺんに出ることがある。
● ヤメンシス(Salvia x jamensis)
グレッギーとミクロフィラの自然交配種がヤメンシス。
1991年に英国の植物学者ジェームス・コンプトンによってメキシコの山岳地帯jameの村付近で発見した。比較的最近発見された種でもある。Jameの渓谷には、グレッギーの真っ赤な花が咲き乱れていましたが、高度が高くなるにしたがって花の色が変化していくことに気づき発見したそうだ。
これら3種をチェリーセージと総称しているが、現在は3種とも結構な園芸品種が出回っており、区別が難しくなってきている。
'''真っ赤なチェリーセージとの出会い'''
セージにはまるきっかけがこのチェリーセージ(グレッギー)だった。
ヨードチンキ臭い葉の香り、この香りが気に入ってしまった。そのせいなのか、良く飲むアイラ島のシングルモルトウィスキーの香りが気にならなくなり心地よくなった。今では、チェリーセージ系9種類に増えてきた。花色は、赤、赤と白ミックス、イエロー、赤紫、オレンジ、ピンク、パープル、サーモン、サーモンイエローと花の色数を増やしている。
===== 1.サルビア・グレッギー =====
(写真1)チェリーセージ、S.グレッギー
園芸店でチェリーセージとして売られているが、この中は3種に分けられる。基本系は、学名ではサルビア・グレッギー、英名ではオータム・セージと呼ばれる。真っ赤な色のセージがこれにあたり、通常この種をチェリーセージといっている。四季咲きで、霜に当てなければ2月頃まで咲いている。
このチェリーセージ=サルビア・グレッギーは、メキシコ・Saltilloで植物採集を行っていたアメリカの歴史学者で貿易商のグレッグ(Josiah.Gregg 1806-1850 )によって1848年に発見・採取された。学名は、発見者にちなんでグレッギーと名付けられた。英名では、オータムセージ(Autumn sage)と呼ばれ、森の賢人という意味を持つ。森の入り口辺りのブッシュに生え、何となく賢くたたずんでいるのだろう。オランウータンも森の賢人と呼ばれているが、考え深げなところが似ているのだろうか?
===== 2.サルビア・ミクロフィラ =====
(写真2)S.ミクロフィラ、ホットリップス
'''ミクロフィラの歴史'''
真っ赤なチェリーセージサルビア・グレッギーは、1848年にグレッグによって発見されたが、サルビア・ミクロフィラは、1885年にアメリカのナチュラリスト、プリングル(Cyrus Guernsey Pringle 1838-1911)によってメキシコで発見された。彼は、35年にわたりメキシコを中心とした北アメリカの植物調査を行い、おおよそ1200の新種を発見したという偉大な成果を残している。
また、サルビア・ミクロフィラにはいくつかの種があるが、その新種の名前には、大航海時代のスペイン統治の植物学者の名残りがある。
Martínとその盟友José Mariano Mociño(1756-1820)の名がついたミクロフィラの種(Salvia microphylla Sessé & Moc)がある。
Martín Sessé y Lacasta (1751-1808)は、スペインの医者・ナチュラリストで、彼はスペイン国王カルロス三世にメキシコでの大規模な植物相の調査・探検を提案し、実施することになった。大航海時代は、香辛料・薬用植物・金を東洋に求めてはじまったが、
重要植物は機密としてスペインが秘匿してきただけでなく、よく知られない植物が多々あった。
マーティンは、メキシコの植物相の調査・植物学の発展に貢献したが、彼が集めた植物のコレクション及び原稿は、また秘匿され死後約2世紀後に世に出てくるという不思議なことになっている。またということは、16世紀後半のフランシスコ・エルナンデスの植物調査の成果が公開されないという同じようなことが以前にもあったが、重要な情報は集めるが秘匿するだけで活用されないという体質が伺える。活用するために集めるという原点を忘れた体質が、頂点から滑り落ちたのであろうか?
スペインに取って変わったイギリスは、キュー王立植物園を植物情報を収集する戦略拠点として構築・活用していくことになる。
(※)[http://blogs.yahoo.co.jp/tetsuo_shiga/21372607.html フランシスコ・エルナンデス]に関してはここを参照。
(写真3)気温で変わるホットリップスの花
サルビア・ミクロフィラの人気商品とでもいえる‘ホットリップス’は、気温で花の色が変わる。通常は、花びらのふちが 真っ赤な口紅を塗ったようになっており、まるで“笑うセールスマン”(藤子不二雄A)の分厚い唇を思い浮かべてしまう。
“真っ白になるのは気温が低い時”。“真っ赤になるのは気温が高い時”。
サルビア・ミクロフィラにはこんな性質があり、1年のうちでも様々に変化する。気温が高い時の赤は、グレッギーの赤よりも鮮やかで美しい。しかし、ホットリップスは、赤・白の通常のときの方がそれぞれが際立って美しい。
この‘ホットリップス’は、サンフランシスコの園芸誌編集者リチャード・ターナー(Richard G. Turner)によって発見された。彼のメキシコのメードが誕生祝で故郷の花を贈ったところ、これがホットリップスだった。原産地は、メードの故郷メキシコのチアパス地域(the Chiapas area of Mexico)になる。
(写真4)ホットリップス赤だけの花