モノトーンでのときめき

ときめかなくなって久しいことに気づいた私は、ときめきの探検を始める。

その58:カンナ・トロピカーナ(Canna 'Tropicanna®')の花 と 権利

2008-10-08 07:49:10 | ときめきの植物雑学ノート

植物雑学ノートとしてイレギュラーだが旬なので割り込みをすることにした

カンナが、
カラフルな葉をまとい
輝くばかりの鮮やかなオレンジの旬の花をつけていた。

(写真) 強烈で刺激的なオレンジの花


ここは、散歩の目的地で折り返し点にあるハーブ園。
ハーブ園にカンナがあること自体不思議であり気になっていたが
調べてみると面白いことがわかった。

カンナはその根茎に豊富な澱粉をストックする農作物でもあり、
コロンブス以前の南米では主要な農産物であったようだ。
ジャガイモは、アンデス山脈を中心とした地域での主要なデンプン質の農作物だが、
カンナとは棲み分けていた可能性がある。

さらには、葉の強い繊維質を使いパティオの屋根を葺いたり、紙をすいたりしたようだ。

美しいだけでなく、生活に役に立ったカンナ。
いまは、美しさだけが求められるようになってしまったようだ。

(写真) 刺激的で魅力的な葉


このカンナの種名は、よくわからない。というほど数多くの品種改良がされた。
しかし、ブランド名は『 Canna 'Tropicanna®' 』として世界的に知られているようだ。

この品種改良とブランド化、ここにカンナの国際的な争いの歴史があるが、
まずは、ブランドではなく美しい植物をチェックしよう。

150~180cmのスリムな身長に
魅力的な色彩の葉。
春はパープルの葉が現れ、直ぐに現在のような葉になるという。
緑、黄色、ピンク、赤の縞模様の大きな卵形の葉は、すそ広がり的に長い茎を支えている。
夏には情熱的なオレンジの花が咲き、今が最高の旬の時期だ。


カンナの歴史とブランド化での争い
現在のカンナは、
19世紀中頃から交配が繰り返されて出来た園芸種が中心となっているが、
カンナの原産地は北米・南米で、いわば西欧から見た新世界の熱帯・亜熱帯地帯植物だ。
インド・アジアの熱帯・亜熱帯原産説があるようだが、疑問のようだ。

ヨーロッパへの普及はコロンブスが新世界にたどり着いた16世紀以降で、
日本には江戸時代の初期に渡来し、 『ダンドク(曇華)』と呼ばれたという。
http://homepage2.nifty.com/nijime/htm/koi)dandoku.htm (小石川植物園)

新発見・品種改良・新種栽培などの“New”は、価値があり名誉もある。
これを“権利”として獲得する争いが工業製品だけでなく農業分野まで、
そして“種(遺伝子)”まで来た歴史の1ページを作ったのが
カンナ‘パッション’(Canna 'Phasion')だ。

カンナ‘パッション’の最も初期の記録は、ローデシア(現在はジンバブエ)
Bulawayo市のRademeyer氏の庭で1955年に発見されたという。

そしてこの種は、めぐり廻って南アフリカの「Theunieクルーガーの庭」にあり、
1991年にケープタウンで園芸業を営む“カーステン(Keith Kirsten)”によって発見された。
彼は、1994年に“Canna Phasion”を登録し権利を確保した。

ここに争いの原点があり、ヨーロッパでも権利を主張するものがいて、
争いは、南アフリカとヨーロッパとの間で起こった。

発見、新種栽培は守られ保護されるべきものだが、
これを証明する必要がある。

カースティンが発見したものは新しいか、庭の所有者との権利関係は、彼が新種として育てたか
などなどが争点になったようだ。

結果的には、南アフリカ、ヨーロッパとも権利は否定されたようだ。
現在のブランドである『 Canna 'Tropicanna®' 』は、
オーストラリア、メルボルンにある国際的な園芸マーケティング会社
“Tesselaar International”が南アフリカでは1994年に、英国では1997年に取得した。
http://tesselaar.com/

こんな美しいカンナだからこそ、手中にしたい人間が群がったのだろうか。
発明・発見などの偉大な業績は報われるべきだが、
脇が甘いとつけ込まれることがあり、
発明・発見者の能力とは異なるところで報われない可能性がある。
能力が違うよき友・パートナーが必要であり、ホンダ、ソニーの初期にはこれがあったようだ。

(写真) ハーブ園のカンナ


カンナ・トロピカーナ(Canna 'Tropicanna®')
・カンナ科カンナ属の半耐寒性の多年草の球根植物。
・学名は、Canna 'Phasion' 。'Phasion'の由来は「sport of 'Striata'」直訳すると“縞模様の細い筋が入った(=stripe)”カンナとなる。
・この種の起源は、Canna 'Wyoming'(カンナ・ワイオミング)の突然変異の種の栽培品種といわれている。
・この品種の英名は、カンナ・トロピカーナ(Canna 'Tropicanna®')で登録商標なので自由に使えない。
・カンナの英名は、ユリ科でもないのにCanna lily。和名はダンドク(曇華)。
・カンナの原産地は北米・南米、西インド諸島。コロンブス以降にヨーロッパなどに普及する。
・草丈150~180㎝、株張り30~90㎝で、花壇の中心的な存在。
・葉は大きな卵形で、緑、黄色、ピンク、赤の縞模様が入った美しい葉。
・開花期は8~10月で、鮮やかなオレンジの花が咲く。


<参考サイト>
ダンドク(曇華)(リンク:小石川植物園)
http://homepage2.nifty.com/nijime/htm/koi)dandoku.htm
オーストラリア、メルボルンにある“Tesselaar International”
http://tesselaar.com/

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