モノトーンでのときめき

ときめかなくなって久しいことに気づいた私は、ときめきの探検を始める。

スカビオサ・エースオブスペード(Scabiosa 'Ace of Spades')の花

2008-06-21 05:05:51 | その他のハーブ
(写真)スカビオサ‘エースオブスペード’の花の集合体


今年初めてスカビオサを栽培する。

和名では、セイヨウマツムシソウという。
この属の特色は、真上に伸びる茎の頭に花が密集して咲くところにある。
これを頭状花序といっているが、
キクとの違いは、ガクのような花びらを包むものがないことである。

スカビオサは花色が豊富で切花でも人気になっているようだが、

スカビオサ‘エースオブスペード’は、暗赤紫色の4枚の花弁からなる筒状の花が
円周から円心に向かって咲き上がっていき、
そのイメージは、スペードのエースのような呪術的な切り札的印象もあるが、
毅然とした美しさを持っている花だ。

(写真)1個の花々


スカピオサの由来
スカビオサの原産地は、地中海沿岸で耐寒性がある多年草だが、
日本には明治の初期に入ってきたようだ。

スカビオサの語源は、皮膚病の疥癬(かいせん)を意味するラテン語で、
英名での sweet scabious はこの花の薬効を語っている。
(結核を根絶したかと思ったら増えているようであり、疥癬も増えないといいのだが。
ネットカフェ、24時間レストランなどの住民はどうしているのだろう?)

また、特色のある花姿から
‘pincushions(ピン-クッション)’つまり針をさしておくクッションとも言われる。
(お針箱はいまや化石化した商品であり、この化石を開度生き返らせる必要がありそうだ。
と男がほえてもしょうもないか!脳梗塞予防に良さそうだが。。。)

或いは、その孤立した美しさから‘mournful-widow(モーンフル-ウィドウ)’
‘悲しみにくれる未亡人’とも呼ばれる。

日本には秋の草原に咲く‘マツムシソウ(Scabiosa japonica)’1種だけがあるが、
この紫色の群生は美しい。
夕方には松虫の鳴き声が聞こえ、きっと命の洗濯をしたと感じるだろう。

そして、温泉、お酒とコースが進むにつれ
一年草のはかなさと美しさを記憶のどこかに残し、
トラという動物となっていくのだ・・・・・

わけわからずに、‘mournful-widow’はいいね。本当にいいね!。
などのたまい、
人間に戻ると、朝陽に映るマツムシソウの美しさに新たに感動し、
‘mournful-widow’(であればいいが・・・)を直感で感じる。

(写真) ‘mournful-widowの立ち姿


スカビオサ・エースオブスペード
・マツムシソウ科スカビオサ属の耐寒性のある多年草。
・学名は、Scabiosa atropurpureaの園芸品種Scabiosa atropurpurea 'Ace of Spades'(スカビオサ‘エースオブスペード’)。
・英名では、pincushions(針山)、sweet scabious(疥癬に効く=セイヨウマツムシソウ)、mournful-widow(悲しみに沈んだ未亡人)などいろいろある。
・原産地は、北アフリカ、南ヨーロッパ、トルコなどの地中海沿岸地域
・草丈40~60㎝
・開花期 5~7月 花は周りから咲き花心に向かって盛り上がるように咲く
・高温多湿は苦手で夏場は涼しいところに。
・過湿は苦手で乾燥気味に育てる。
・開花後は速めに切り戻す。咲き終わったら半分ぐらい切り詰める。
・酸性土壌は苦手で、苦土石灰を混ぜ込んでおきます。

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サルビア・コクシネア'Snow Nymph'の花 & 山本由松 ストーリー

2008-06-20 08:14:10 | セージ&サルビア
(写真)S.コクシネア・スノーニンフの花


サルビア・コクシネアは、アメリカ大陸のテキサス、メキシコ、ブラジルなど
年間を通じて温度が高く、乾燥して腐葉土が多い土壌で自生している。

トロピカルセージとも言われるように
温帯では見られない、ウルウルの光沢がある鮮やかな色彩に特色がある。

ピンクと白の桃源郷のような品種 コーラルニンフ('Coral Nymph’)
緋色ともいえる鮮やかな赤が燃えるように輝いている品種 レディインレッド('Lady in Red' )が有名だが

これは、白一色のスノーニンフ('Snow Nymph')
亜熱帯地方の乾燥したところで、 “雪のように真っ白な美少女”とは幻覚かもしれないが
サルビアでこのように鮮明な白一色も珍しい。

しかも
直立した茎に輪状につぼみがつき、次から次と真っ白な口唇形の花が咲き
ハチドリが大好きなセージでもあり、
羽を高速運動させ、空中に停止しながら蜜を吸う姿は、
白地に浮き彫りになるハチドリの色がさぞや美しいことだろう!!

(写真)スノーニンフの花々


S.コクシネア名前の由来
S.コクシネアは、1770年代に新種としての命名と登録がされており、
この頃からヨーロッパで栽培されるようになったようだ。

そして、そのあでやかな花の色から
緋のような色では → Scarlet sage
血のような真っ赤な色から → Blood sage
熱帯地方の植物なので → Tropical sage
そして、原産地から → Texas sage
など様々に呼ばれている。

それだけまだ共通認識が出来上がっていない植物でもあり、
寒暖の差がある温帯では栽培が難しいことにも一因がありそうだ。

サルビア・コクシネア発見者に日本の“Yamamoto”さんが・・・
キュー王立植物園のデータベースに
S.コクシネアの採取者として
日本の“Yamamoto”がブラジルで採取したと登録されている。

コレクター(採取者)のデータベースで確認すると、“Yamamoto”さんは1名しかいない。
Yamamoto Yoshimatsu (山本由松1893-1947)である。

時代考証的には100年ほどおかしく、S.コクシネアの発見者ではなさそうだが
日本の植物学者・プラントハンターとして面白い存在なので紹介してみる。

山本由松は、1893年(明治26)に現在の福井県鯖江市に生まれ、
福井師範学校を卒業し小学校の教員などを経て、東京大学理学部に入学。
早田又造教授に師事し、正宗巖敬とともに台湾、屋久島の植物の分類学的研究を行った。

在学中に台湾総督府中央研究所の嘱託となり、台湾の植物研究に没頭していった。
1928年(昭和3)には台北大学に迎えられ、
台湾・ジャワ・スマトラなどのジャングルに入り植物探索を行うなど、
約180種もの新種を発見したプラントハンターでもあった。

戦後は、中華民国政府の招きで台湾大学院教授に就任し、台湾の植物学の発展に貢献したが
1947年(昭和22)、つつが虫病に感染しこれがもとで亡くなった。
35年間台湾の植物研究にささげ、
彼を記念した「Yamamoto Yoshimatsu Commemorable Pavilion」が台湾につくられた。

太平洋戦争という激動期を経ているが、
このような純粋に初志貫徹した稀有な生き方が出来たことも素晴らしい。
植物は国境という人為的な境界線を低くする何かを持っているのであろうか?

あいにく、主題であるブラジルに植物探索に行き、S.コクシネアを発見した
という記録にはたどり着いていない。

S.コクシネア発見者である、山本さんは何処に??

(写真)S.コクシネアの花


サルビア・コクシネア‘スノーニンフ’(Salvia coccinea 'Snow Nymph')
・シソ科アキギリ属の耐寒性がない多年草だが、冬越えが難しいので1年草扱いがされる。
・学名、Salvia coccinea(S.コクシネア)。英名Tropical sage(トロピカルセージ)、Blood sage、Texas sage、Scarlet sage。和名はベニバナサルビア。
・白色なので、Salvia coccinea 'Snow Nymph' (Nymph Series)
・原産地はテキサスからメキシコなどの中央アメリカ、カリブ諸島、ブラジルなど
・開花期は、6月~11月。花柄を摘むと脇から新しい花が出る。
・草丈50~60㎝、春先に摘心して丈を詰め、枝を多くする。

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蝶の舞い。白蝶草(=ガウラ)の花

2008-06-19 07:24:42 | その他のハーブ

(写真)白蝶草の舞い


一直線の枝の先に花が咲き乱れ、
風に揺れる様はまるで蝶のようである。

重力とは無縁にまた、直線・曲線といった数式では表せない
複雑な軌跡を描く。

日本的なハーブと思いきや、北米原産の種である。
明るい林の中、草原が生息地であり
群生する姿は、蝶の大群が編隊飛行している観がある。

育て方は至って簡単で、日当たりの良いところに植えておけば良く、
生育するにつれ株が大きくなるので、フェンスで囲うと良い。

(写真)白蝶草の花


白蝶草の採取者は、アメリカへの逃亡者であり、独学で植物学を学ぶ
白蝶草の命名者はジョージ・エンゲルマン(George Engelmann 1809-1884)
ハーバート大学のグレイ教授(Samuel Frederick Gray 1766-1828)の2名になる。

エンゲルマンは、ドイツ生まれで医学博士を取得し、1834年にアメリカに移住してきた。
植物に興味を持ち、ロッキー山脈と北メキシコの植物相を調査研究し、サボテンに関しての優れた業績がある。
またミズーリー植物園の学術的な構築者でもある。

そしてこの白蝶草の学名“Gaura lindheimeri Engelm. & Gray”についた
種小名の「lindheimeri」は、人名であり白蝶草の発見者であった。

Ferdinand Jacob Lindheimer (1802-1879)は、ドイツフランクフルトで生まれ、
ボン大学に通いジョージ・ブンセン(George Bunsen)の学校で教えていた。
1833年の暴動で学校は閉鎖され、治安妨害の嫌疑がかけられたので、
米国に逃げ出し、1834年には、メキシコの農園のマネージャーになった。

ここから動植物に関心を持つようになり、
ミズーリ植物園のエンゲルマン及びハーバート大学のグレイ教授の支援を受け
独学でのアメリカ西部・テキサスの植物相の研究を行い、数百種の新植物を発見したという。

白蝶草の“Gaura lindheimeri”のように、彼の名前が使われているのは
50種にも及ぶようであり
テキサスの植物学への貢献は非常に大きく、独学でも結構やれるという事例でもある。

ただし、エンゲルマン、グレイなどいい仲間がいたから出来たこともあろう。
意欲と仲間 これがあれば人生はあっという瞬間しかない!!
意欲も仲間もないと、なんと人生は長いのだろう・・・・

まさに白蝶草は、こんな動きの瞬間をとらえているようだ。

(写真)白蝶草の花々


白蝶草(はくちょうそう)
・アカバナ科ガウラ属の耐寒性がある多年草。
・学名は、Gaura lindheimeri Engelm. & Gray。英名はWhite gaura、Lindheimer's beeblossom。
・和名が白蝶草(はくちょうそう)、別名ヤマモモソウ。
・原産地は北米(テキサス)
・花期:6月~9月
・草丈:100~150cmで茎の先に花序がつき蝶のような白い花がたくさんつく。
・日当たりが良ければ土質を選ばない。
・耐寒性・耐暑性強い。乾燥気味に育てる。
・庭植えの場合は、フェンスで囲い形を整える。
・葉に紫色の斑点が出るが病気ではない。

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カンパニュラ=セルビアン・ベルフラワー(Serbian bellflower)

2008-06-18 06:10:29 | その他のハーブ


星のようなキラメキ・・・・というのであろうか

美しい青紫の花が、ベルのように釣鐘状になったり、
一筆書きの星のように平らに開いたり
咲き散らかっている。

冷涼なところが好きで、風通しが良い半日陰で
陽が当たると美しいブルーに、
陽がかげるとチョッと赤味が出てパープルに近づく。

今でもきな臭いバルカン半島原産であり、
乾燥した冷涼なところに自生する。

この花の美しさには、数多くの悲しい物語を秘めていそうだ。



カンパニュラ=セルビアン・ベルフラワー(Serbian bellflower)
・キキョウ科カンパニュラ属(和名ホタルブクロ属)で耐寒性がある多年草。
・学名はCampanula poscharskyana(カンパニュラ・ポシャルスキアーナ)。
・英名は Serbian bellflower(セルビアン・ベルフラワー)、Trailing bellflower、和名はホシキキョウ。
・原産地は北部バルカン半島(Croatia, Bosnia, Herzogovina)。
・草丈は10~15cmでほふく性があり横に広がる。
・開花期は5~10月と長期間咲く。花は、5枚の花弁が星のように広がる美しいブルー。
・雨に弱く、涼しい気候を好むので夏場は風通しが良い半日陰が適している。
・増やし方は、秋に株分けをする。

属名のカンパニュラはラテン語で“Campana=鐘”の意味であり、花の形から来ている。
ヨーロッパでは古くから栽培されている花で、夏の冷涼で乾燥した気候を好む特徴がある。

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コモンマロウ(Common Mallow)の花

2008-06-17 07:10:05 | その他のハーブ
(写真)コモンマロウの花


コモンマロウの花が咲くと梅雨が始まり、
そして北国では、田植えの時期になる。

コモンマロウの花は、
赤紫の下地に濃い赤紫の線が葉脈のように入り
全体としては、和紙の絞りが入ったかのような直径5cmぐらいの花びらで
大きな葉の影で1日ぐらい気づかなかった可能性があるほど、咲きはじめはわかりにくい。

一番咲きの花の上にはつぼみが結構準備されており、
下から順番に天上に向かって360度パノラマ的に咲いていく。


この花の花びらを使ったハーブティーは変化があり手品のようでもあり面白い。
薄い青色のティーにレモンを絞ると、淡いピンクに変化する。
作り方は、生の花びら・葉を15gつまみ、お湯を1カップ注ぎ10分蒸らすだけでよい。
のどの薬として古来より使われてきた。
一日花のため、花びらは朝の咲きがけ時に摘むと良い。

属名のMalva(マルウァ)は、ギリシャ語でやわらかいという意味に由来し、
薬用・食用で栽培されてきた。
サラダにも良いそうだが、見た感じでやわらかいとは思えず、まだ食べたことはない。

(写真)コモンマロウの立ち姿


この花は日本の風土になじんだ純和風の香りがするが、
原産地は小アジア・ヨーロッパ南部で江戸時代に日本に入ってきたようだ。

近縁種のタチアオイ(=ホリホックHolly-hock)は、
5万年前のネアンデルタール人の墓で発見された野草の中にも
タチアオイの花があったぐらい古い歴史があり、
ヨーロッパには十字軍の頃に伝わり
日本にはもっと早くに、シルクロードを通り中国経由で入ったようだ。
敦煌130洞窟(366年からはじまる)の壁画にもタチアオイの1株が描かれているようであり、
シルクロード経由で中国に伝来した裏づけとなっている。

和名のタチアオイは立葵と書くが、
葵は、葉が傾いて日に向かい根元を日に照らさないように守るところからきており、
知恵があって揆(はかる)=葵になったという。

徳川氏の家紋は“三つ葉葵”であり、由来は諸説あるようだがめでたい植物としての評価があったようだ。

(写真)コモンマロウのつぼみ、葉、花


コモンマロウ(Common Mallow)
・アオイ科ゼニアオイ属の耐寒性がある多年草
・学名は、Malva sylvestris。英名がコモンマロウ(common mallow)high mallow、和名はウスベニアオイ。
・原産地は、南ヨーロッパ。
・草丈60㎝~100cmで、大柄な葉にはビタミンが豊富。
・開花期は5~8月。開花期に花と葉を収穫しハーブティーに利用する。レモンを入れると青からばら色に変化する。
・耐寒性強いので、戸外でも大丈夫。
・耐暑性やや弱い。鉢の場合は、マルチングし乾燥を防ぐ
・こぼれダネでふえ野生化しやすいので注意する。
・3月頃に、地上部10cm程度を残し剪定し株を若返らせる。
・さし芽でも増やせる。冬越しした株元近くの元気なわき芽をさし芽する。

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スモークツリー・ロイヤルパープルの“けむり”と“実”

2008-06-16 06:36:25 | その他のハーブ

(写真)もやもやしているのがスモークツリーの花序


スモークツリーのフワフワ、もやもやが広がり

そのなかから何か風船のようなものが浮いていた。

海中に漂うブイのようでもあり・・・・・・

摩訶不思議だ。

これが、スモークつりーの“実”とは!!


(写真)スモークツリーの実


スモークツリー・ロイヤルパープル(Smoke tree'Royal Purple')
・ウルシ科コティヌス属の落葉樹。
・学名は、Cotinus coggygria Scop. 'Royal Purple'。英名は、Smoke tree, smoke bush。和名ハグマノキ(白熊の木)、ケムリノキ。
・原産地、南ヨーロッパ、ヒマラヤ、中国。
・樹高は120cmで芯止めをしている。4mぐらいまで大きくなる。
・開花期は6~7月。花は目立たないが、その後に羽毛状のフワフワしたものが伸びてくる。これが煙のようにたなびく。
・耐寒性、耐暑性に強い。

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ブラジリアンセージ‘パープルスカイ’の花

2008-06-14 08:15:21 | セージ&サルビア
(写真)赤紫色が美しいブラジリアンセージ‘パープルスカイ’


深いブルーが美しいブラジリアンセージの園芸品種がいくつかあるが、
パープル色が美しい花が咲いた。
じっと見ているだけでも良さそうだ。
ブラジリアンセージのことは6月13日のブログをご覧ください。)


流通では、“メドーセージ・パープル”で販売されていたが、
つけあわせをしてみると、
‘パープルスカイ’(Salvia guaranitica ‘Purple Skies’)のようだ。

これをブラジリアンセージ‘パープルスカイ’と呼ぶことにする。

ブラジリアンセージよりも草丈が伸びないので摘心しないでも高さが調節できる。
繁殖力は旺盛で、鉢が直ぐ一杯になってしまう。
茎の色は、黒ずんだ紫で、光沢のある大き目の深緑の葉が美しい。

これだけでも十分に鑑賞に堪えられるが、
感情豊かな深みのあるパープルの花が咲き、芸術性の評価ポイントを高める。

(写真)美しい葉と花


ブラジリアンセージ‘パープルスカイ’(Brazilian sage‘Purple Skies’
・シソ科アキギリ属の耐寒性がある常緑低木。但し、冬場は、地上部から切り戻しを行う。
・学名は確認できなかったので親元の園芸品種で仮おきしておく、サルビア・ガラニチカ‘パープルスカイ’(Salvia guaranitica ‘Purple Skies’)
・英名はBlue anise sage, Brazilian sage、anise scented sage、流通名がメドーセージ。
・原産地は、ブラジル、アルゼンチンを含む南米。
・花弁が3cm級のパープルの花を6月から秋まで多数咲かせる。
・咲き終わった花穂は切り戻す。
・草丈50~70cmで増殖力が強い。
・夏場に乾燥させないように根元を腐葉土でマルチングすると良い。
・さし芽、株分けで増やす。

(写真)草丈50cm程度


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ブラジルのセージ発見の物語とサルビア・ガラニチカ(Salvia guaranitica)の花

2008-06-13 07:46:56 | セージ&サルビア
(写真)サルビア・ガラニチカの横から見た花


深いブルーの花を、秋まで咲かせるサルビア・ガラニチカ。
見るものに、元気と落ち着きを与えてくれる。

梅雨のような嫌な雨の日でも、
この花にはネガティブマインドを吹き飛ばす力がありそうだ。
それだけ、このブルーには元気と勇気にあふれる生命力が潜んでいそうだ。

英名では、アニスセンテドセージ(anise scented sage)と呼ばれ、
アニスのような香りがするセージと表現されているが、
それほど強く香りを感じることはない。

この花にかかわらず、セージ類は花柄とか枯葉を摘むと薬草のような独特の香りがする。
この香りに“不老長寿の伝説”があり、頭脳を明晰にする何かがあるのだろう?


このS.ガラニチカの別名は、バラバラで統一性にかける。
日本では、一般的に“メドーセージ”と呼ばれているが、
本物のメドーセージは別種なので、使い慣れた名前にさようならをすることにした。

英名のアニスセンテドセージ、原産地ブラジルの名がついたBrazilian sage
味気のない学名などを検討していたが、命名者、採取者を見て驚いた。

そこには、不老長寿の伝説を信じてもよさそうな物語があった。

(写真)サルビア・ガラニチカの正面から見た花


ブラジルのセージ 発見者の物語
S.ガラニチカは、1882年8月に学名が登録されており、採取日はこれより前になる。
その学名は、「Salvia guaranitica A.St.-Hil. ex Benth.」であり、
なんと命名者の一人が、英国の植物学者 George Bentham (1800-1884)だった。
シソ科の権威でありこの時期の中南米の植物の体系を整理していたことがこれでわかった。
(注1)ベンサムは、ボッグセージ、ヤマボウシに登場。
(注2)A.St.-Hil.は、フランスの植物学者サン=チレールSaint-Hilaire, Auguste François César Prouvençal de (1779-1853)。 
1816年から6年間ブラジルRio de la Plataで調査を行い、多くの動植物の標本をパリに持って帰った。現在はパリ自然史博物館のコレクションになっている。


この、ブラジルに咲くセージを採取したのは
コペンハーゲン生まれで病弱なレグネルだった。

Regnell, Anders Fredrik (1807-1884)は、裕福だが家庭的には恵まれない家に生まれ、
17歳の時に医学校に合格し、ウプサラ大学のリンネ派の先生の影響もあり植物学に興味を持つようになった。

1837年に卒業し1840年にはブラジルにわたった。
肺からの出血が止まらず健康的にすぐれないので、スウェーデンから遠い南国への転地でもあった。
この病は、ブラジルへの船旅中に回復したというから転地療法がうまくいった。
セージとは関係なかったのだが・・・・・

リオデジャネイロの医学校に入学し、カルダスという小さな村に生涯住むことになる。
ここに、土地とコーヒー園を取得し、コーヒーが順調に伸びて財を形成することになる。
この財産を一生の道楽である植物の調査探索と研究のために使った。
膨大な植物と標本を収めるハーバリウムを作り、多くの植物学者がここに滞在した。
カルダスという小さな村でのレグネル植物館は察するに相当目立ったことだろう。

これだけなら単に植物好きの偏屈な独身金持ちで終わったが、
母国スウェーデンにブラジルの植物研究を進める基金をつくり、
植物調査などを支援する“Regnellian Herbarium”設立の資金提供を行った。
設立された“The Regnellian herbarium”には、
中南米カリブ海などアメリカの植物標本40万件が集約されているそうだ。

今では世界の科学振興の基金となっている“ノーベル賞”は、
1901年にノーベル(1833 – 1896)の遺言ではじまったが、
これよりチョッと前に、南米の植物の範囲で、レグネルの研究支援が始まっていた。
ノーベル賞は、贖罪的な要素もあるが利益を社会還元するスケールの大きさに感心するが、
的を絞ったレグネルのドネーションも素晴らしい。

ブラジルのセージ S.ガラニチカは、採取日不明だが、レグネルの標本館にあった。
このセージは、健康と勇気と社会貢献を教えてくれるセージでもあり
不老長寿の伝説を創る1話となっても良さそうだ。

実際は、船旅で治ったのだが、
大きな物語の中では目をつぶる真実ということだろうか・・・
或いは、不老長寿は、個人の人間ではなく、人間の社会であると解すべきか??

ということで、
このセージを、“ブラジリアンセージ”と呼ぶことにしよう!!

(写真)ガラニチカの茎と葉


サルビア・ガラニチカ(Salvia guaranitica)=ブラジリアンセージ
・シソ科アキギリ属の耐寒性がある常緑低木。但し、冬場は、地上部から切り戻しを行う。
・学名は、サルビア・ガラニチカ(Salvia guaranitica A.St.-Hil. ex Benth.)。
・英名はBlue anise sage, Brazilian sage、anise scented sage、流通名がメドーセージ
・原産地は、ブラジル、アルゼンチンを含む南米。
・花弁が3cm級のブルーの花を6月から秋まで多数咲かせる。
・咲き終わった花穂は切り戻す。
・草丈50~150cmと大柄で、増殖力が強い。5月までに摘心を行い丈を調節し、花穂を増やす。
・夏場に乾燥させないように根元を腐葉土でマルチングすると良い。
・さし芽、株分けで増やす。

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その41 “ヤマボウシ”と『Flora Japonica (フロラ・ヤポニカ)』

2008-06-12 08:09:20 | ときめきの植物雑学ノート

No2:ヤマボウシの歴史と名前の由来
(※ No1:日本原産 ヤマボウシの“実”と“花”はこちら)

日本原産でもあるヤマボウシの名前は、
丸い坊主頭の花が、白い“ほう”という頭巾をまとっているその花姿から
山法師(ヤマボウシ)と名付けられたという。

このヤマボウシをヨーロッパに紹介したのは、シーボルトとその協力者のツッカリーニによる
『Flora Japonica (フロラ・ヤポニカ)』(出版年度1835-1870、30分冊)であろう。
(資料)京都大学理学部植物学教室所蔵 『Flora Japonica』

シーボルト(Siebold, Philipp Franz Balthazar von, 1796-1866)は、
1823年~1828年まで日本に滞在し、長崎出島を居住地に植物などの収集を行い、
12000点もの植物標本を持って帰り、これをベースに日本の植物誌を発表した。

分類学的な分析は、ミュンヘン大学教授ツッカリーニ(Joseph Gerhard Zuccarini 1797-1848)が担当した。
残念ながらシーボルトよりも短命であり、しかも、二人の死後に「フローラ・ヤポニカ」が完了している。

この訳本を読んでみてイギリスの植物学者ベンサムの名前が
ヤマボウシの属名になった謎が解けた。

ヤマボウシなどが属していた“コルヌス Cornus”という名前は、
紀元前3世紀の植物学の父テオフラスタス(Theophrastus B.C371~287)の時代に、
この木があまりにも硬いのでつけられた名前であり、
コルヌスは「つの」を意味する。

ヤマボウシも最初はこのコルヌスに属しており、学名はCornus kousa Buerg. ex Hanceであった。
種小名の“クーサ Kousa”は、箱根などでのヤマボウシの方言“クサ”に由来するという。
シーボルトは江戸にも来ているので箱根を越えているが、
“山の帽子” (=高山植物という間違った認識)という記載だけがされており、
クーサに関しては何も触れられていない。
別の文献では、ヤマボウシを発見した九州から名前を取った。という指摘があり、
長崎出島に行動範囲を制約されていた環境から見て捨てがたい指摘と思う。

このコルヌス属の中で、1825年にヒマラヤで発見された美しい常緑樹があった。
これをカピタータ(Cornus capitata)というが、

この種をコルヌス属から独立させたほうが良いと思った人間がいた。

イギリスの植物学者リンドレイ(John Lindley 1799-1865)で、
同時代のシソ科の権威でもあるベンサム(George Bentham 1800-1884)に献じ
新しい属を作り Benthamia と名付け、カピタータをこの属の帰属とした。

『Flora Japonica (フロラ・ヤポニカ)』で、ヤマボウシを記述したツッカリーニは、
この属に2番目の種としてヤマボウシを付け加えることにした。
新しいヤマボウシの学名は、シーボルトとツッカリーニが命名者となり
Benthamia japonica Siebold & Zucc.(ベンサミア属ヤポニカ、シーボルト&ツッカリーニ)となった。

(写真)ヤマボウシの花と実


シーボルト&ツッカリーニが、ヤマボウシをミズキ属から分離独立させたのは、

「ハナミズキは、花が散形花序の形に広がっており果実もそれぞれが離れている。
一方のヤマボウシは、花が頭状に集まり果実は成熟に従いお互いにくっつき
見かけは一個の果実となる。」

『Flora Japonica (フロラ・ヤポニカ)』に記載している。
ツッカリーニの分類学的な視点は素晴らしいといえる。

ヤマボウシがヨーロッパに紹介されたのは1830年代であり、
ヤマボウシの新しい学名が登録されたのが1836年であるので、このあたりだろう。
イギリスでは、1892年には第一級の花木と評価されるまでになり、庭木として普及した。

京都大学理学部植物学教室に『Flora Japonica』のデジタル版がある。 
ヤマボウシ(Benthamia japonica Sieb. et Zucc.)をご覧になっていただこう。


植物画としての写実性と美しさを有する優れた作品であり、
『Flora Japonica (フロラ・ヤポニカ)』は、下絵を描いた川原慶賀などの絵師の高い職人技が支えており、
19世紀の植物画の水準を高めた作品となっている。

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日本原産 ヤマボウシの“実”と“花”

2008-06-11 08:30:21 | その他のハーブ

日本など東アジア原産のヤマボウシ。
ヨーロッパへの紹介は、シーボルトが絡んでいたが、
ヤマボウシの属名“Benthamidia”は、
19世紀イギリスの植物学者ジョージ・ベンサム(George Bentham 1800-1884)の名が入っていた。

ベンサムは, “ボッグセージ”の学名の命名者であり、
昨日記載した“ボッグセージ”を調べていてこのことがわかった。

この日本原産のヤマボウシが世界に広まる第一ステージの関係を確認することとし、
植物の特色から見てみる。

ヤマボウシ、ミズキ、ハナミズキの違い
「ヤマボウシ」は、「ミズキ」、「ハナミズキ」と間違えられやすい。
この稿の最後にそれぞれの特性を記載したが、
単純には、
花が咲いてから葉が出るのがハナミズキで、実は1mm程度の球がバラバラで北アメリカ東部が原産地。
ヤマボウシは、葉が出てから花が咲く。秋に熟した実は5~8mmの球となりオレンジ色。
ミズキとヤマボウシの違いは花と実。ミズキは5~8mmと小さい花が多数集まり
ライラックのような花房を形成し、晩秋に熟した実は黒色。

似たもの同士だが、このように違いがある。
この違いにベンサムなどのヨーロッパの植物学者が絡んでくることになる。

ヤマボウシの実 と 花

(写真)ヤマボウシの赤く色づいた実(6月9日)

(写真)実の林立


(写真)ヤマボウシの花(5月7日)

(写真)ヤマボウシの花の林立


5月初旬に咲いたヤマボウシの花は、といっても・・・
白い4枚の先がとがった花びらに見えるものは、花を保護する“ほう”で、
中心に球状にあるのが花(花弁、雄しべ、雌しべ)というから不思議だ。

6月になると、“ほう”が落ち、マッチの軸が林立するように、実が熟し始める。
秋には、さらにオレンジ色が増し、甘くておいしい実になるという。
完熟を食べたことがないので、チョッと期待しよう。


ヤマボウシ
・ミズキ科ヤマボウシ属の落葉高木。ミズキ属から分離。
・学名は Benthamia japonica Sieb.ex Zucc。(=Cornus kousa Buerg. ex Hance。)
・和名のヤマボウシは山法師で、比叡山の僧兵の白い頭巾に見立てて名がつく。
・原産地は、日本、朝鮮、台湾、中国などの東アジア。水はけのよい湿地の傾斜地などに自生する。
・樹高10mと高く、枝は鳥の足のように3つに別れ、その先に楕円形の淡い緑の葉がつく。
・5~6月頃に枝先に花をつける。
・4枚の白い大きな花びらが開くが、これは花びらではなく苞(ほう)。この苞の中心に淡い黄色の小花が球状に集まったものが花。
・秋には球状の集合果が紅色に熟し甘みがあって食べられる。
・枝はきめが細かく美しい。
・夏場に根元をマルチングし乾燥させないようにする。
・花、果実、紅葉が楽しめる美しい樹。
・剪定は11月頃行う。この時期には、来年の花となるつぼみをつけているのでこれを見分けてカットする。剪定をしないと花つきが悪くなる。


ハナミズキ(学名:Cornus florida L.)
ハナミズキはヤマボウシに花が似ているのでアメリカヤマボウシと呼んだ。
日本への渡来は、明治45年に尾崎行雄東京市長がアメリカ合衆国に桜の苗木を送り
この返礼として大正4年に日本に贈られたのが最初で、日比谷公園などにこれを植えたそうだ。
ハナミズキは準備がいい植物で、8月頃になると小さい擬宝珠(ぎぼし)のようなつぼみをつけ
来春の準備を完了させる。

ミズキ(学名:Cornus controversa Hemsl.)
日本の風景を形成している落葉高木で、樹高10mにもなり、枝は水平にそして階段状に広がる。
5月頃に新しい枝先に多数の白い小花をつけ、春風に揺れるさまは美しい。
ミズキ科ミズキ属で、日本のほか韓国からヒマラヤまで分布し、
湿気のある山野の傾斜地などに繁殖する。
ミズキの材はこけしの材料として最適であり、あの硬くて優しい感触は素晴らしい。

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