メカのアイディアを考える時、思考実験という方法があります。
思考実験とは、量子物理学等で分かりにくい抽象的な理論を、日常的な事象に
当てはめて考える方法で、有名なシュレディンガーの猫などもこれに入ります。
今回は水上機についての考察を紹介します。日付は2000・7・5とあります。
順番に解説してゆきましょう。
最初の図は理想の飛行体です。プロペラの推力によって引っ張られる飛行機は、
前方からの空気抵抗も受けます。上下が対称になってるとバランスがとれて
理論的には理想的な飛行ができるはずです。
フロートは、水に浮かんでいる時は必要ですが、飛行中は多大な空気抵抗を生みます。
胴体部分と空気抵抗のバランスが取れる形状は、このようになります。
理論上はこのような形なら飛行中の姿勢は安定するはずです。
実際の飛行機では、このような形状はありえません。飛行機は、必ず着地(着水)
するときの形状も考えて設計されているのです。
現実での手直しでは、フロートはありふれた形状と位置に、プロペラは胴体の
先端にあります。プロペラと胴体は水面に接触しないようになっています。
上の図ではプロペラの推力軸と機体の空気抵抗の中心の間にズレがあり、飛行中
の姿勢が安定しません。このままでは、フロートの抵抗で常に下を向いて飛行
するようになるでしょう。
そこで主翼と尾翼の位置に修正を加えてバランスを取ります。
このような水上機は、T字尾翼であることを除けば、現実に良く見られます。
思考実験によって実際の設計技師の思考をなぞった訳です。
次は3番目の図からの別の回答です。
主翼の位置を修正せず、胴体をフロートと対称位置にしてみるという解決案です。
プロペラの後ろにはエンジンを格納する部分と主翼があり、この形状でも
飛行中の姿勢は安定し、着水も出来るはずです。
実際には、胴体部分の空気抵抗が二倍になってしまう上に、機体の強度の
問題もあります。
そこで、現実的な手直しを施します。
プロペラ軸を中心にフロートと空気抵抗のバランスが取れるように胴体をやや
上乗せ気味に結合します。水平尾翼はT字か十字にして、主翼はエンジンの真中の位置にします。
この位置に主翼を置けば、主桁を中心にエンジンを取り付けたりコクピットから
の視界を確保できます。
こうして、多少変わった形ですが、自分なりのデザインを導く事が出来ました。
おそらくは、過去にこれと同じ事を考えた人が居る事でしょう。
しかし、自分なりの考え方をまとめると言うことは、非常に重要な事だと思います。
思考実験は一つの有効な方法です。しかし、こうした思考のパズルをする前に
一通りの知識を得ておく事も重要です。深く知識を知っておけば、また違った結論
が導き出されるかも知れないのです。
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