勃ちあがった象の白い涙の物語

ロックンロールにゃ老だけど死ぬにはチョイと若すぎる

「Victim of Stars 1982-12」 デヴィット・シルヴィアン

2012-05-31 22:55:03 | 音楽
所詮はベストなのであまり高い評価をするのは如何なものかという気持ちもあるが、素直にこれはいい曲が詰まった聞き応えのあるアルバムであると言える。

もう生まれたばかりの赤ん坊が大人になるには十分すぎるくらい前の話になるが、私の知り合いにこのデヴィット・シルヴィアン(略してデビシル)の熱狂的なファンの娘がいた。最初は、その美形なルックスだけを気にして音楽を聴いているようなミーちゃんハーちゃんの類だと思っていたが、映画「戦場のメリークリスマス」も高く評価していて、この二つの共通項に坂本龍一というキーワードがあることを考えると、けっしてそういうわけではなかったようである。

そんな彼女に、当時、デビシルのテープを借りて聴いたことがあるのだが、正直、眠気を誘う以外に何の感慨も持てず、すごく退屈なものに感じたという記憶がある。
そんなわけだから、あまりデビシルというアーチストには何の興味も無かったのだが、このアルバムを聞くと、そんな思いは間違いだったと気づかされる。

ベスト・アルバムであるので、いわゆる一般受けする曲ばかりなのだろうが、それでも、このアルバムに収められている曲の美しさには感心させられる。
個人的な傾向として、ピアノをはじめとする鍵盤楽器系の音が好きなのだが、このアルバムの楽曲の多くは、非常にピアノの音が自己主張していて、普通、これだけピアノが自己主張しているとジャズやクラシックっぽい方向へ向かってしまうものだが、彼の音楽は、しっかりロックしている。

ただ、難点は、やはり彼のボーカルだろうなぁ。
これはたぶんに個人的な趣味だが、どうもあのボーカルにはイマイチ感心できず、これだけ美しいメロディの楽曲に、彼のボーカルが乗ると、少し興ざめしてしまう。
誰か優秀なボーカリストを雇い入れて、彼は楽曲制作のアーチストに専念するという選択肢はなかったのだろうか。