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6/26日曜日、お遍路歩き始めから48日目。
85番八栗寺から88番大窪寺までの距離が26km余り。最後の大窪寺までの遍路道は
山越えになるので厳しいとは聞いている。(手前の長尾寺で一泊して翌日大窪寺を打って結願する人が多いらしい)
87番長尾寺までの所要時間によっては大窪寺まで行ってみようと考えていた。
そして、その日は朝から快調な滑り出しだった。
修験道の山だという八栗寺では前夜、雷をともなう激しい雨が降った。
明けた朝は、徐々に青空が広がり始め、光り輝く美しい光芒に包まれた。
85番八栗寺を8時前に出発して山道を下ると、海の寺、86番志度寺に到着。
五重の塔がそびえ、歴史を感じさせる本堂の佇まい。
志度寺を10時過ぎに出発。
長尾寺手前で、香川在住の写真ヤさんヒロツさんと出会う。
今日は会えるかもしれないと待っていてくれたようだ。
お接待のスポーツドリンクを頂いて、写真の話やお遍路のエピソードを語る。
ありがとうヒロツさん。また石鎚で会いましょう。
長尾寺12時半到着。
これなら十分、大窪寺まで行けると判断。
長尾寺で突然の雷雨。
雨は短時間で上がったが、再び真夏の日差しが照りつけ、余計に蒸し暑い。
それでも一面の青田が広がり、吹き渡る風が青い稲の海を波立たせる。
これが私の原風景だと思う。
夏休みのうだるような午後、止まったような時間のなかで窓越しに観た青田を渡る風と波立つ草の海。
結願の寺へ向かう道は、時間を遡るような懐かしい風景が広がる。
山道へ入る手前で出会ったお遍路さんも良いお顔だった。
「結願ですか?」と訊ねると、
ちょっと困ったような顔で「私に結願はありません」と応える。
その柔和な表情にお遍路の奥深さを思い知らされた。
ダム湖を廻り込んだ対岸を歩く遍路道は心癒された。
草に埋もれるような野仏たち。
渓流沿いを歩く涼しい山道が続く。
最初はなだらかな林道歩きが続き、意外と楽な行程になりそうだと思った。
でも、それは甘かった(笑)
林道を逸れて、本格的な山道へ入ると急勾配の登りに息が切れる。
そんな山道のアップダウンが続き、大窪寺まで後3kmの道しるべを見た。
再び林道に出て、渓流沿いの道を歩いていた。
時刻は、もう5時半を回っている。
薄暗い林道のカーブに箱バンと呼ばれる軽乗用車が停まっている。
車の横にソファを置いて寛ぐ老夫婦の姿が見えた。
「涼しそうですね」と言葉をかけると、ニッコリ微笑みながらおじいさんが立ち上がった。
私がそのまま行こうとすると、「ちょっと待って」とおじいさんが呼び止める。
近づいてくるおじいさんの手には、車のクーラーボックスで冷やしておいたと思われる飲み物が3個。
甘酒に牛乳にオロナミンC。
どれもお年寄り好みの飲み物に思えたが、「じゃあ、これを」と炭酸系のオロナミンCを頂いた。
「お接待ありがとうございます」とお礼を言うとにこやかに微笑むおじいさん。
ソファに座っているおばあさんにも「ありがとうございます」と飲料水の瓶をかかげてお礼を言う。
小柄なおばあさんもにこやかな表情で私を見送ってくれた。
早速、冷たい炭酸飲料を咽喉に流し込みながら先を急いだ。
しばらく歩いていて、ふっと気付いた。
「なぜ、あんな寂しい場所におじいさんとおばあさんはいたのだろう?時刻は5時半を回っている。
それに、この林道は、もう廃道に近いような荒れ具合だし、林道に入ってから一台の車とも出会っていないし、
もちろん人とも出会っていない…」突然、頭が痺れたようになった。
「父さん、母さん…」降って湧いたような、言葉が唇から洩れた。
振り返り、思わず手を合わせ合掌した。
固く瞑った瞼から堰を切ったように涙が溢れだした。
咽喉から振り絞るような嗚咽が漏れ、声を上げて号泣していた。
「父さん、母さん会いに来てくれたんだ…結願の寺を目前にして姿を見せてくれたんだ…」
溢れる想いに胸が張り裂けそうだ。
「救われる…私は、これで救われる…48日間歩き続けた先に、こんな風景と出会えるなんて。」
最後の山道を歩きながら涙は止まることなく溢れ続けた。
もちろん、これが勝手な私の思い込みだということは判る。
それでも、これがお遍路の風景なのだと信じている。
お大師様に導かれて歩き続けた48日間の軌跡のなかで私が熱望した風景だったのだろう。
その風景と結願を前にした薄暗い黄昏の山道で出会えたことの至福の喜び…
お遍路の旅は、心の軌跡だ。
その先で観る風景は、それぞれの心の内にある。
ありがとうございました。お大師様。
6/26の歩行距離、26.7km。
間もなくして嘘のように日も射して来ました
昨夜は秋を思わせる涼風が家中を吹き抜け、久々に穏やかな眠りに着きました
48日間、本当によく歩きぬきましたね
御大師様のお導きで最高のご褒美を戴いたのですよ
有るんです、世の中不思議な事が・・・・
私は今まで何度も何度も体験しています
さあ、最高の笑顔でmyportraitを
ランスケさんご苦労様。
ついに結願だそうですね。
おめでとう
なんとうらやましいことでしょうか。
あれから私は仕事々の毎日です。
6月27日所用で琴電屋島駅の近所にいました。
屋島駅から正面に屋島寺を見、大変歩きたくなりました。ランスケさんは、もう結願かなと思いながらしばし頂上を眺めていました。
私は暑い今をあきらめ、秋に結願する計画に
変更しました。
ランスケさん今度は高野山ですね、頑張ってください。
また会えれば
岡山のKより
6月27日屋島駅へ行ったと書いていましたが。
6月26日の誤りでした。
日にちを間違えるほど羨ましく思っております。
岡山のKより
それとももう済ませたかな?
とにかく、結願おめでとうございます。
今年は異常なほど高温多湿の中、よくがんばり通しましたね。
高野山は季節の良いときに訪れてください。
紅葉の季節が良いと思いますよ。
ご両親とおばさまの供養、しっかりと勤められました。
本当にご苦労様でした。
御大師様のお言葉を
いただけるのでしょうか?
すでに霊山寺に行かれ、
クニシンさんと美酒を酌み交わされている
頃でしょうか?
おめでとうございます。
「私に結願はありません」
この言葉の意味をズーと考えています。
まったく願をかけていないのか、
結願のできないぐらいの願なのか?、
想いは深まります。
それぞれのお遍路、深いですね。
遍路とは本当にわからないものです。わからないことがたくさんあるようです。
何回もお四国さんをしている人に会い、なぜそんな何回もするのかしらと初めは思いました。今はそんな気持ちが少しわかり始めました。それが本当に分かったのかは自分でもわかりません。それを求めて私もあせらず続けます。
そして毎日観てくれている沢山の皆さん、ありがとうございました。
泣いても笑っても今日が最後です。
50日間の軌跡を噛みしめながらゴールを目指します。