退院してから半年間、長いリハビリ療養の日々だった。
その間、ずっと思い描いていたのは、何時か通い続けた、あの森や山へ還りたいと云う想いだった。
皿ヶ嶺の森や石鎚の山へ還る日。
それは、遠い見果てぬ夢のような、なかなか辿り着けない長い長いリハビリの日々でした。
そして、ついに11月の晴れた朝、その日がやって来ました。
朝早くからお弁当も作ってわくわく(笑)
さぁ、出発だ。
8時半発の郊外電車に乗って、朝の光が車窓から溢れ、流れゆく車窓の風景に、ゆらゆらリズムを取りながら、
「連れて行ってあげる~♪」~マスクの中でハミングしている(笑)
「あっ、高校生の頃好きだった娘が住んでた街だ」
「K子ちゃん~元気?~」本当、笑顔の素敵な可愛い子だったなぁ~
ずっと、こんな調子で、うきうきわくわくわく感が止まらない~
9時05分見奈良駅に到着。
改札を抜けて、さぁ皿ヶ嶺登山口に向かってスタート。
今日は、いつもの軽いスニーカーではなく、転倒防止に山登り用の3シーズン用登山靴を履いている。
登山口までの堅いアスファルト舗装の道は、結構足や膝の負担がある(帰路の長い下り坂でそれを思い知らされることになる)
途中の山麓で大好きな野菊の写真やブログ用の自撮り写真を撮っていたので登山口到着は11時半。と遅れた。
これからは、植林された杉林の薄暗い山道が続く。
最近雨が降ったのか?地面が濡れて滑りやすい。
山登り用のストックを持ってこなかった。
杉林に落ちている枯れ枝を何本か拾って、杖として利用可能か試してみる。
杖としての耐用強度と弾力性を確かめ、掌で握る部分の小枝や突起を小石で削り落とし、
杖として利用可能な最適な一本を見つけた。
今回の山登りが、なんとか無事に終え、帰還できたのは、この一本の杖を思いつき利用したことに尽きる。
私の視覚障害は、空間認知の障害。眼の前のモノとの距離感が正常に機能しないので、転倒や衝突や道迷いを繰り返すことになる(汗)
杖があれば、手探りで周囲の空間の情報を触手しながら確認、認識できるのだ((笑)
この発見は、暗闇で暗中模索していた私には、まさに目の前に明るい光を見い出した光明の瞬間だった((拍手)
視覚障害者が白い杖をついて歩く意味を、やっと理解した(遅い)
これも前回の石手寺裏山の転倒、道迷いを繰り返した手痛い失敗が身に沁みて堪えたからだと思う。
失敗から教訓を学ぶことも、大事な生きることの智恵なのだろう?
健常者の頃は気づかなかった毎日の営みの中のあれやこれやが、今の私にとっては身体機能の及ばない障害にもなり、新たな気づきや智恵ともなる。
毎日を誠実に生きること。
老齢の障害者となった私が生き延びるには、達観や冷笑しないで、精一杯、毎日の営みと誠実に向き合い続けること。
それが今の私が辿り着いた生きる術(すべ)なのかな?
人生の機微、人生の真実は、そこいら中に転がっているから面白い((笑)長生きするのも悪くないかな?
あらぁ~杖の発見が驚愕的な視野回復の道しるべとなって光明を見い出したので、話が横道に逸れて長い~~((笑)
車で来た人の登山口である風穴に到着したのは13時半。
途中の登山道で、下山してくる皿ヶ嶺のアイドルと呼ばれるNさんと出会った。
彼女は、花の山として有名な皿ヶ嶺の山野草情報に精通していて、
私を始め、皿ヶ嶺に通うリピーターは、みんなこの人から、この森の魅力を伝授され、
四季を彩る森の豊かな恩恵と、その奥深いSense ofWonder を享受している。
再開した山歩きの記念すべき日に皿ヶ嶺のアイドルNさんと出会えるのも山の神様からの贈り物だろう((笑)
久しぶりの再会が嬉しくて話が弾み、話が長くなってしまった((笑)
今日は山頂までは行かないで、高層湿原のある竜神平までのブナの森周回コースと決めていた。
風穴13時半出発なら、充分明るい内に下山できる時間帯なのだ。
秋の陽射しに彩られたブナやミズナラの夏緑樹の森は、オレンジ色や黄金色の暖色系の明るい光が燦燦と降り注ぐ。
眼を奪われる光景に、やっぱりカメラを持つ手が止まらず、遅々として前に進まない。
視線が足元から外れ疎かになると、ズルッ~あわや谷側斜面に滑り落ちるところだった(汗)
反射的に杖を持つ手が支え踏み止まり、身体を安全な場所へ移動した。
これも杖のおかげで助かった危険回避だった。
竜神平の愛大小屋前の木製ベンチで、歩き疲れてお腹が減ったので遅い昼食とした。
お弁当は朝食の残り物のトマトやタマネギスライス、レタスにブロッコリー野菜たっぷりのサラダにロースハムとオムレツを
軽くトーストしたパンで挟んで辛子マヨネーズで和えたトーストサンド。
「う~ん、長時間歩いて山で食べるランチは、多少見た目が不細工でも美味しい~」
ここで元気のでる甘いスイーツでもあれば最高なのだけど、男ヤモメのお爺さんは気が利かない。
こんな時、女性と一緒に来れば、みるみるお菓子や果物が並び、満ち足りた充足のランチとなるのですが(笑)
あっ、これって男女の役割分担に触れた配慮に欠けたセクハラ発言になるのかな?
ヤバイ。誠実に生きると誓ったばかりなのに(汗)ごめんなさい。
竜神平から帰路についたのが15時過ぎだった。
この時間の秋の斜光線は波長が長く風景を輝かせる魔法の光なのだ。
皿ヶ嶺で一番好きなブナの森の小径を、これから通る。
見事に足が止まってカメラを持つ手が止まらない(笑)
この幸せな時間が、その後の疲労困憊の長い暗中模索の下り坂の帰還路となった。
ヘッドランプと杖が無ければ、間違いなく救急車で運ばれ、再入院だっただろう(汗)
やっぱり懲りないおじさんだ。
自然の中で美しい光景に出会うと我を忘れて夢中になるという癒やし難い性癖があることは、百も承知のはず。
こんな時に踏み止まり軌道修正する理性を発揮できないと、本当に野垂れ死にだ。
「明るい内に帰還する」
これが視覚障害のある私には、山歩きの鉄則。
風穴に到着したのが16時45分頃。
暗闇の杉林の下山路は、ヘドランプと杖があったとしても転倒のリスクが高過ぎる。
路面の坦なアスファルト舗装の林道を下山路として利用することにした。
この選択は、転倒のリスクが低減できるが、杖で路面を探っていても、ふらふら向感覚がブレて、あらぬ方向に向かって足を向けていることが多々あった。
私の視覚障害は、想像以上に厄介だ(汗)
これが道迷いの原因なのだろう?
道路側面の白線とガードレールの反射板の灯りが頼りだった。
山麓の人家の灯りを見い出した時は、本当にホッと胸を撫で降ろした。
堅い靴底の登山靴で下る長いアスファルト舗装の下山路は、足が棒になるという比喩のリアル体験だった(苦笑)
それと平日の林道は、日が暮れると、車が見事に通らないのだ。
あわよくば街か駅まで乗せてもらおうかと願っていたのだが、見事に思惑は外れた(汗)
見奈良駅到着19時45分。
駅から皿ヶ嶺往復の歩行距離は31.4kmでした。
疲労困憊くたくたに草臥れた身体を座席にもたれホッと一息入れる電車の帰路でした。
まぁ反省材料満載の皿ヶ嶺登山でした。
でも、自然の中で過ごした時間は、間違いなく明日からの毎日を生きる希望と癒しと糧(かて)となってくれました。
無事帰還できた報告と感謝を帰宅して仏壇の父母と姪と御先祖様に手を合わせ祈り感謝(合掌)
そして何よりの収穫は、ストックの重要さ・・・
年を取るとストックはありがたい。
先日の石鎚登山には頼り切っていました。
行き帰りの風景写真、ランスケさんの心情が分かります。
あまりに感動しすぎて、時間が少しと歩く距離が長すぎます。
私の方は時間を見つけ、愉しんでいます。
歳とともに生活が変わります。
頑張って下さい!
まずは一安心((笑)
明るい内に行動すれば新居からの電車利用の皿ヶ嶺の森歩きが可能なことが分かりました。
これから日が短くなるので、今回の皿ヶ嶺登山から学んだ多くの教訓を活かした写真撮影を心掛けます。
本当、杖の効果と活用、目から鱗でした。
これから散歩にも山歩き用のストックを活用したいと思います。
これで転倒や衝突が回避されそうです。
ずいぶん気持ちが楽になりました((笑)
ひょっとしてと言う思いはあったのですが・・・
お正月に石鎚山登山をされていたので
お元気とばかり思っておりました。
大病を患っておられたとか、皿ヶ嶺に来られるようになって
良かったですね。
わいわいさんの悪性リンパ腫も克服出来たのですが
去年から、治療の影響で肝臓が悪くなっていたりして又、病院通いでした。
年齢が上り、今頃になってタバコの影響が出て来て
階段状の登りになると、しんどくなるようです。
ここ数年、石鎚山にも登っていません。
皿ヶ嶺オンリーになっています。(^^ゞ
私も、フイルムカメラからミラーレスカメラに替えたし
わいわいさんも、写真で作品作りを目指すようになってきたので
あちこち出掛けて撮り続けたいと思っています。
又、皿ヶ嶺でお会い出来たらいいですね。
完全に加齢による健忘症でお顔を忘れていました(汗)ごめんなさい。
皿ヶ嶺のアイドルNさんとも会えたし、幸先の良い皿ヶ嶺復活登山でした。
今年2月の自転車転倒時の事故が原因で救急車で運ばれ、
脳出血と診断され3カ月間入院しました。
自転車転倒の外傷自体は軽傷だったのですが、
血管の老化による脳内の出血が酷く、
半身不随半盲状態だったと聞いています。
私は若い頃から、アウトドア志向が強く、年中野外で身体を動かすタイプだったので、
ストレスによる胃潰瘍以外、病気らしい病気を患うこともなく(山歩き時の滑落や自転車転倒による骨折は何度かありましたね)65歳を超えるこの年齢まで、いたって健康体で暮らして来ました(笑)
でも、まさかこんな落とし穴が待ち受けているとは思ってもいませんでした(汗)
歳を取るということは、身体の経年劣化と並行して、付き合ってゆかなければならないという自然の摂理を思い知らされました。
そうでしたか?
わいわいさんも悪性リンパ腫を克服されましたか(拍手)
さすが長年山で鍛えたタフなわいわいさんです。
お千代さんもリュウマチの療養と向き合う毎日ですよね。
でもそうやって御夫婦で病と向き合い、同好の志として共に山歩きや写真を楽しむお姿、
羨ましいです((笑)
私も歩みは遅くても一歩一歩、視覚障害の回復に向けてリハビリ療養を続けてゆきます。
また皿ヶ嶺や何処かでお会いでき、楽しい写真談義できたら嬉しいです((笑)
もう一人、皿ヶ嶺の案内人、おいわさんにもよろしくお伝えください((笑)