入り江を見下ろす小高い丘の上に、一本の山桜の樹があった。
樹全体が、しなるような満開の花姿は艶やか。
望月の宵、はらはらと散る桜樹の下、
花明りに眠れれば。
春の夜の浅き夢見し。
春眠の続きは、あの桜樹の下で。
桜の季節になると、入り江の山桜を想い出す。
もうあれは十数年くらい前の話。
四国南西部の岬を巡る旅は、
何処か道迷いを愉しむような風情があった。
傾きかけた陽射しに浮かび上がる丘の上の桜樹は一際目を惹いた。
集落の外れから蜜柑山の作業道がうねうねと続く。
それは、どうやって辿り着いたのか?
記憶の経路が曖昧として、
夢の浮橋を渡った、その先に…
こんもり美しい樹形の満開の桜花は、見事だった。
はらはらと舞い散る花片。
入り江を見下ろす丘の上で、陶然と時を過ごした。
春の夢、シャングリラは、追えば遠ざかる蜃気楼のようなもの。
今回も丘の上の山桜に辿り着けなかった。
桜前線は、水郷、大洲から南が見頃。
松山から海沿いに続く桜並木は、まだ五分咲きくらい。
野福峠、法華津峠そして岬巡りの末に辿り着いた吉田町は、街全体が花盛り。
雨男の自転車旅は、またしてもあえなく撤退。
二三日続く安定した晴天の予報が、わずか一日半しか持たない。
夕闇せまる長い海岸道路、ペダルを漕ぐ足取りも重い小糠雨の帰路でした。
また身体を鍛え直さなければ。
南予地方の岬は今、満開!
自転車の旅、すごい切り取りですね。
大洲城でしょうか?
川城の良さが十分に出ています。
限界集落化している南予、この自然だけは残したいですね。
辿り着けませんでした。残念。
帰郷して間もない頃、何度か南予の山桜を訪ねて旅しました。
その時に観た桃源郷のような風景が忘れられません。
道に迷い、何処か離人症的境地で辿り着いた華やかな桜風景は格別です。
以前、南予の春を浄土のような風景と表現しました。
法華津峠、野福峠、その地名や穏やかな入り江の風景は祝福に満ちています。
今回、野福峠の海を見下ろす桜の樹の下で野営しました。
日が暮れると、一晩中、フクロウの声を聴きながら。
週末、船に乗る為に八幡浜に行きましたが、南予は、もう満開で、ビックリいたしました。
船から、段々畑と、風車を眺めていましたが、山の天辺まで、うねうねと道をつけて、耕した苦労はどんなものだったでしょう。
私には縁遠いランスケさんの自転車旅、どんな美しい景色と、どんな文章で綴られるか、ワクワクします。
なんだか外は強い風が吹いています。
やっと満開になった桜なのに、花散らしの風と雨になりそうです。
今年の桜は短命で終わりそうですね。
私は数ある桜の中でも、山桜が一番好きです。
吉野山に代表されるように、
山桜は桜色の諧調が、とても豊かです。
花と一緒に彩る琥珀色から赤茶の若葉の色が、とても上品。
これに萌黄の色も加わり、山肌が豊かな彩に染められます。
ソメイヨシノの単調な色彩とは好対照です。
四国南西部の海岸線は、この時期、見事な山桜の色に染まります。
誰かが、「由良半島は桜色が雪崩れ打つようだ」と云っていました。
松ぼっくりさん、さすがです。
しっかり旬の風景を見逃しませんね(笑)