野田村の小田村長は、移転元の土地の買い取り価格について「移転先の団地の価格を下回ることはない」と説明した。(12月5日、岩手日報Web newsより)
これは、自治体首長の、被災跡地の買い上げ価格についての初めての判断ではないかと思われる。高地移転に伴う、被災跡地(移転元)買い上げ価格を、ニュータウンの区画分譲価格と同価格にするという見方は,同面積交換などの形で、以前からあったが「下回ることはない」という事はそれを上回る英断であるといえよう。被災跡地の買取り価格のメドがたった事で野田村の復興計画はもう一歩前に進むことになるのではないかと思われる。
野田村のこの動きはその早さだけでなく、被災住民主体による復興への一つのスタンダードとして、宮古市、釜石市,大船渡市を初めとする沿岸自治体に大きく波及するのではないかと思われる。いや、そうでなければならない事だと思う。
他方,住宅建設に関しては「土地と住宅を一括購入した場合」実質的な自己負担は1200万円──などモデルケースを提示したという。(この事に対する住民の疑問から「下回ることはない」の判断が明らかになったのであるが) 住宅建設費に関しては、国,県、自治体の支援や補助をもっともっと明らかにする必要があるであろう。
●一括購入の「一括」の中味には注意する必要がある。時には土地を、時には住宅を、別々に検討する事が大事である。一括にはごまかしがつきものだ…
●私自身は自宅を空き家にしていたのでその恩恵には浴していないが被災者生活再建支援金とは何だったのだろうか?全壊世帯200万円とは? 私の空き家にもそこそこの家財があった。全壊被災者にとっては200万円は流された家財費にも足りないのではないかと思う。流され壊された家屋躯体については200万円はどんな埋め合わせになるのであろうか?……
●そもそも、200万円は国費からのものであろうか?県から?市から?町村から?それとも、赤十字社などの一般義援金からなのか?
そこが不思議である。総理大臣は復興予算について「全て国費で」と大いに胸をはっている。県知事は「復興予算に上限を設けない」と言っている。…そして赤十字社だけでなく、あらゆる金融機関,マスコミ、地方自治体はいま盛んに義援金の募集をつづけているが…被災者に配分される計画はどうなっているのか?そこのところが分からない。
──「東北って復興したんですか」。在京の被災地出身者が聞かれたという。現地の映像を目にする機会がめっきり減ったからだ。体験した人としない人。温度差が日々広がる──これは日経新聞コラムからの引用である。温度差の事は仕方がない面があるが、「東北って復興したんですか?」の問いかけは思ったよりも強烈である。それは温度差や映像の頻度のせいだけではなく、心配や、同情や、寄付や、支援品,ボランティア、全ての国民が関心を寄せた東北の震災・津波被害の復興が、はたして、本当に進んでいるのであろうかという真っ当な疑問なのである。応援団にも情報が届いていなかった。この人たちこそ東北の被災を思って再び増税を甘受し、三たび復興国債を購入している人たちである。善意の予算や、義援金は大きかったが、それが見通しとして、被災者の復興実感にならず、喪失感だけが空回りしている状態がつづいている。「東北って復興したんですか?」と言われて、下を向くようなことがあってはならない。
【岩手日報全文】
野田村は4日、東日本大震災の被災世帯を対象とした高台移転などの意向調査を始めた。小田祐士村長は、高台移転に伴い災害危険区域に指定される浸水した土地の買い取り価格について、移転地の分譲価格を上回る価格で買い取る方針を提示。土地区画整理事業を導入するエリアでは、約2年後から一部で住宅建設が可能となる見通しを示した。
村役場で開かれた説明会には、米田、南浜地区などの約80人が参加。村は防災集団移転促進事業を活用する方針のエリアや土地区画整理事業の検討エリアなどに応じて、可能な移転選択肢や補助などを説明した。
高台団地に土地と住宅を一括購入した場合、実質的な自己負担は1200万円-など想定されるモデルケースを提示したが、浸水した移転元の土地の買い取り価格が決まらない中での選択に、住民からは「判断できない」という声が相次いだ。
これに対し小田村長は、移転元の土地の買い取り価格について「移転先の団地の価格を下回ることはない」と説明した。
村は12日までに計6回、関係者説明会を開催。6月に実施した村民アンケートでは、約170世帯が「高台移転」を希望している。
(2011/12/05)