1、閉伊川河口水門 2、宮古湾のディレクション 3、防災施設
(前ページよりつづく)
b、だれが宮古湾の津波防災ディレクションをするのか?
宮古湾では、湾レベルの津波防災はできないと思われてきた。湾口に難があり、湾口防波堤は無理だという理由だと思われる。官僚やコンクリート族の単純な利害判断である。しかし釜石湾や大船渡湾において、その湾口堤防が、物も思想も無惨に破綻し、その無効性が証明された今、その徹を踏まないようにして、まったく新しい角度から宮古湾レベルの防災は乗り出すことになる。
宮古湾の新しい津波防災
(1)今回の津波がもたらした浸水や物理的被害を基準にして、湾全体で、将来の、地区ごとの被害調整を行う事である。端的に言えば、今回の基準は受入れた上で、受入れた場合の津波対策を考える事である。言葉を変えれば、将来の津波もその浸水や被害の総量は今回と変わらないという事である。その上で対策を考え、配分を考えて行く。
(2)津軽石川、閉伊川を宮古湾第一の擁(容)水貯水場または遡上放水施設と考えて、可能なかぎり宮古湾侵入の津波を呼び込む。そのように整備、浚渫,拡幅をするべきである。整備によっては閉伊川の今回の横溢現象は回避できたのでは?と思ったりする。そうであれば河口水門はますます不要となる。水門の理想を言えば上流の最大キャパシティー次第で開閉調整することになるが永久全開が一番の理想である。この水門については古いものとは発想の根拠が違うので誤解(設計ミス)のないように、またもともとの必要性には細心の注意が必要である。
(3)今回の浸水の範囲を基本的に固定化して(かさ上げなどしないで)、その深度に耐えうる建物を造ること。つまり沿岸陸上部で、湾内の津波の全横溢水量を呼び込むのである。かさ上げによる防災は原理的に不可能である。だから地盤の土盛りはあくまで建造物のための水準保持くらいの意味でしかない。
(4)(3)における水深は破壊力のない量だけの死んだ水深の事を言っている。だからこの場合陸上での被害はほとんどないといえる。(4)が前提という事です。
その本題は、沿岸を襲ってくる津波の加速度(=G)、つまり津波の破壊のエネルギーをつぎのa、b、c によって殺(そ)ぎ&いなす考え方である。その徹底と計算。津軽石川、閉伊川へのいなしの考えは先に書いた。次は、湾岸各地区において津波の威力を弱める対策である。
a、港外防波堤の適切な配置。
b、港内実用施設(港内防波堤、岸壁、ふ頭、建物,浚渫工事など)の強化復旧、配置。
c、その全ての統一配置。普代村太田名部漁港の例
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これが津波の本当の破壊力から防災・減災するスタンダードな方法である。基本的考えとしては津波襲撃を正面から阻止する事は避けていることである。津波阻止は不可能な事であり、強引な阻止は余りにも痛ましく危険な副作用が大きすぎる。その典型的な施設が陸上に構築される防潮堤でありはずかしい湾口防波堤であった。※防潮堤は津波の阻止に対して効果はない。ただ同じような物を津波のエネルギーを殺ぐための配置のための一助にする事はある。
(5)自然と景観
最大の課題はだれがそのディレクター役をするのかという事である。
答え、被災地の住民である。地域住民は、当局の災害行政、学者の各種データ、コンクリート族をふくめた民間各種企業と、強く一線を画しつつ、かつ、それらのファシリティ(能力)を果敢にひき出さなければならない。
沿岸住民、漁業家、港湾関係者だけでなく、各業、各層、老若、男女、自薦、他薦で選ばれた地区住民がその主役でなければ新しいものは出てこない。さしあたり、発言を前ページで抜粋させてもらった方々のような地域のベテランたちであろうか。あるいは、新しい発想の期待できる男女の若者が中心になるのでなければならないかもしれない。また、現在の地区復興まちづくり会によって推薦していただく方々である。当面は、そのような場所で広く議論する事であろう。
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