平成24年度の予算が内閣によって発表され、とたんに札束が次から次に岩手県に降ってきた。
「三陸沿岸復興道路整備に1088億円」「岩手県内三陸沿岸道路等では3次補正予算で720億円がすでに計上されている」「三陸鉄道の復旧費用は22億5千万円」「湾口防波堤など被災地港湾の復旧・整備は全体で2275億円」「農林水産業の経営再開には全体で1557億円を計上し、うち水産業の復旧・復興は843億円」「津波観測網を強化するため126億円」(12/25岩手日報)
ちょっと待っていただきたい。この札束はみんな岩手県や被災地に落ちるのか? 違うのである。国内の大手ゼネコン、大手土木工事会社、建設会社、資材会社、コンサルタント会社など、大手業者に落ちるのである。被災地は工事の場所というだけである。降るのは岩手県だが札束が渡る(落ちる)のは別の方角である…
復興道路の測量が始まる。宮古松山-田老間。3次補正予算分。
国会議員や宮古市長が祝辞を述べた。(12/24同)
「胆沢ダムに144億3千万円」「簗川ダム(盛岡市)は事業継続の方針」「被災地の地上デジタル放送分305億3千万円」(12/25同)
この札束もまた被災地は素通りですか? その通りです。胆沢ダムや簗川ダムは被災地ではないが札束が岩手県に落ちるわけではない。デジタル予算も「整備費」という事で受信料がただになるわけではない。
岩手県予算も札束では負けてはいない。「県予算要求1兆1383億円 復興で 過去最多」「本年度に比べて4430億円(63.7%)の大幅増」(12/17同)という事であるが…。主な復興関連の要求事業は「災害公営住宅整備として本年度の750戸に加え千戸分の建設費(228億円)を盛り込んだほか、民間アパートなど550戸分の建設費補助(10億円)を新規計上。道路事業は復興支援・関連33カ所の整備費として56億円を要求した。また、漁港の復旧に394億円、養殖施設などの復旧に42億円を計上。被災した民間医療施設の移転や新築などに対する補助(20億円)は新規事業として要求した」
なんだなんだ、主な復興関連と言っても、漁港の復旧が大きいと言っても、全部でざっと1000億円いっていないではないか!! 主な復興関連と言っても、主なものの中味がこれではがっかりである。金額も少なく中味もうすいように思う。やっぱり便乗事業が多いのか?そのような復興予算の内容のほかに、、、、例えば民間アパートの建設補助とはどういう予算の使い方なのか?被災者に補助して被災者が入居アパートを自由選択するというのならともかく、ここでも、業者に札束を配ることしか考えていない。被災者に配れ、と言いたい。
マスコミはこうして予算の記事をどんどん書くが、ただ書くだけでは誰でもできる。事業内容、配分細目、執行状況など見識を持って報道してほしい。復興予算なら被災者の立場で書くべきだ。予算については分からないことが多すぎる。政治家や官僚は札束の雨を降らせているが、はたしてそれが被災地の復興に役立っているのかどうか?沸きに湧いているのは当の政治家や官僚、そして中央の経済界ではないのか?直接の被災者、家を壊され、流され、仮設住宅の後の住む家を心配している人には兆のお金も、億のお金も届いていないのではないか?温度差などというものではない。復興問題が利害問題になって、被災地、被災者の住環境・資金問題はどんどん忘れられて行くように感じる。
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