どんこの空(そら)に 。

きっと何かが足りない~それを探す日記~

ゆらゆら原人。

2010-02-01 | Sandstorm

冬の露天風呂は思い出させる。

よく行ったスキー場近くの温泉旅館。

湯気の向こうの夜空。

思い出は、

言葉でも写真でもなく、

ひんやりとした肌寒さと足下からの温かさで蘇ってくる、

あのえもいわれぬ高揚する官能。

苛むものは何もなかった。

明日も明後日も、

やって来るのが楽しみだった。

そんな官能が、体の中から湧き出てくる。

自分が休みのたびに露天風呂に誘われるのは、

きっとそんな理由もあるのだろうか。





でも最近、少しずつ、少しずつ、

自分の中から、そんな官能が薄れ消えていくのがわかる。

入れば入るほどに・・・。

離したくないのに、

だからまた戻って来てしまうのに、

そのせいで感じられなくなっていく。





湯船に浸かって、

ゆっくりと身体を後ろに倒す。

風呂場の明かり、

湯気、

夜空。

上を向いたまま、

半分の頭を湯船に沈める。

湯気、

星。

目を閉じる。

雪。

あの時に見た、雪。





首を左右に振る。

温かい世界が、耳の中まで入ってくる。

鼓動。

自分の鼓動。

聞こえてくる自分の鼓動。

心を鎮め、耳を澄ますと、

さらに自分の呼吸する音が聞こえる。

自分の呼吸する音。

呼吸する音。

生きているのだ。

生きているから。

確かに、ここにいるから。





ゆっくりと、目を開ける。

湯気の向こう・・・、

そこに見えたのは、

やはり綺麗な星空だった。

明かりに照らされる湯気の光は、

ゆらゆらと幻想的に星空を彩っていた。





いかん、いかん。

このままでは自分は、

いつまでたっても、ゆらゆら原人のままだ。








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