深夜の都心の温浴施設
老若男女みな裸裸裸
男湯にいるのは
茶髪の厳つい兄ちゃん
疲れた顔の雇われ中年
太った毛むくじゃらのオヤジ
騒がしいイマドキの若者たち
ハゲて痩せた白髪のお爺ちゃん
その他大勢そして自分
それでもやはりみな裸裸裸
みなどんな仕事をしていて
みなどんな人生を歩んできて
そして今日どんな出来事があったのか
誰もわからない
誰も気にしない
みな産まれたままの姿で
この日の湯を楽しんでいる
どんなに身分や境遇が違っても
誰もわからない
誰も気にしない
そんな場所
深夜の都心の温浴施設
老若男女みな裸裸裸
自分は端っこの大きな湯船で
彼らを見ている
自分を見ている
みな人としてこの世に産まれ出て
同じような姿形を授かってきたのに
みな人生は違う
ここを出るとまた
それぞれに着飾って
それぞれの肩書きを背負い
それぞれの想いを抱えて
それぞれの道に帰っていくのだろう
自分は端っこの大きな湯船で
みなと同じように素っ裸のまま
彼らを見ている
自分を見ている
人は
あんな瑞々しい身体で産まれて
あんな逞しい身体に成長し
あんなぶよぶよに肉が付き
容貌は緩みシワを重ね
あんな風に小さく痩せ衰えて
たぶんもうすぐ
この世から居なくなるのかな
どんなに身分や境遇が違っても
人はみな同じ
老若男女みな裸裸裸
深夜の都心の温浴施設にて
ああ極楽極楽