やさしい嘘。
雨上がり。
夕立あとの空。
悪意に満ちた雲は流れて消える。
立ち直りの早さは、いつかどこかの彼女達並みだ。
これをさわやかに感じるのは、たぶんまだ若すぎるせいだろう。
雨に濡れて凍え死んだ蒼氓達は、やがて忘れられるしかない。
真っ暗闇の中では、目の前の扉にも気付かない。
それは恐怖。
出口の目の前で息絶えた先人は思う。
これは永遠なのだ、と。
それは悲哀なのか。
それとも滑稽なのか。
雨上がりの空は、例えようもなく美しい。
何も言わないで。
何も見ないで。
何も信じないで。
それができるのなら、どんなに素晴らしいことか。
やさしい嘘。
雨上がり。
夕立あとの空は、誰のものでもない。
濡れた傘を手に持って、キラキラ光る世界を歩こう。
悲しい怒りは胸に仕舞って。
泣いちゃいけない。
何も言わないで。
何も見ないで。
何も信じないで。
それができないから、世界はこんなに美しいのだろう。
やさしい嘘。
雨上がり。
夕立あとの空。