チューリヒ、そして広島

スイス・チューリヒに住んで(た時)の雑感と帰国後のスイス関連話題。2007年4月からは広島移住。タイトルも変えました。

オルゴール

2005年03月12日 05時47分55秒 | Weblog
スイス製のオルゴールを買いました。明日が結婚記念日なので、そのプレゼントです。一緒に店に行って選びました。いくつかのオルゴールを聴かせてもらったあと、さんざん考えて選んだのが上の写真のもの。

奏でるのは、魔笛、アイネ・クライネ・ナハトムジークのメヌエット、トルコ行進曲の3曲。クリスタルの箱に納まった、どっしりとした作りで、これまで聴いたことがないくらい低音が綺麗に響くオルゴールです。

オルゴールの歴史は200年少し。1796年に、ジュネーヴの時計職人アントワーヌ・ファーヴル (Antoine Favre) が発明したと言われています。もともとは時計のおもちゃ程度でしかなかったこの「自動演奏機」はしかし、サント・クロワ (Sainte-Croix) の町を国際的に有名にし、この町で作られるオルゴールは、19世紀半ばのスイス総輸出高の10%を占めるまでに至りました。

しかしその後、エジソンが発明したフォノグラフ(蝋管再生機)、さらにグラモフォン(蓄音機)に市場を奪われたことや、第1次世界大戦、そして1929年の世界恐慌によってオルゴール産業は大きな打撃を受けました。オルゴールが復活したのは、第2次世界大戦後にヨーロッパに駐屯したアメリカ兵に人気を博したおかげだそうです。

ところが、日本製品との競争にさらされたせいで、ほとんどの製造業者が作るのを止めざるを得なくなり、今日スイスで残っているのは Reuge 社と Gueissaz-Jaccard 社くらいです。その日本人がスイスに来て、スイス製オルゴールを買うというのも、どことなくバツが悪い気がしないでもないですが。

奨学金で食いつないだベルンの貧乏留学生時代、息子の誕生、再度のベルン滞在、そして今回のチューリヒと、我々夫婦の歩みにとってはスイスで暮らした日々が大きな意味を持っています。この、とても大変だった、しかし楽しかった日々を、オルゴールを聴くたびに思い出せるでしょう。