内田英雄文 古事記あらすじ22
第八章海幸山幸
㈠山幸彦の願い
笠沙(かささ)の都は明るく豊かな年月が過ぎて行きました。邇邇藝命のお二人のお子様のうち、兄ぎみの火照命(ほでりのみこと)は「海幸彦」となって魚をとり、弟ぎみの火遠理命(ひおりのみこと)は「海幸彦」となって山の獣や鳥をとっておいでになりました。
ある日二人は道具を手入れしていました。弓矢の手入れをしていた山幸彦が、互いの道具を取り換えてみてはどうかと言い出しました。そして自分は海に、兄上は山に行ってみてはどうかと言いました。
海幸彦は大切な道具を人に貸すなんて嫌だと、断りました。山幸彦は断られるとますます道具を借りたくなりました。翌日は山にはいかないで、海のことばかり考えていました。
その日夕方海幸彦が帰って来るのを持ち構えて、明日だけでいいからと熱心に頼みました。
しかし海幸彦はてんで相手にしてくれません。そうなるとよけい借りたくなるのが人情です。夜が明けるのを待ち構えてまたお願いに行きました。そしてやっと貸してもらいました。
㈡失くした釣り針
山幸彦は夢中になって釣りを垂れましたが、小魚一匹釣れません。どうして釣れないのだろうと、思っていると手ごたえがありました。山幸彦はぐいぐいと竿をあげましたが、途中で糸が切れてしまい、大切な釣り針を失くしてしまいました。
一方お兄さまの海幸彦は弟の弓矢を持って山に行きましたが、獲物は取れずすぐに家に帰って弟の山幸彦を待っていました。夕方になって一匹の魚も連れずに戻った弟に、早く自分の釣り道具を返せと催促します。
ところが山幸彦が大切なかぎ針を失くしたと聞き、真っ赤になって怒りだしました。自分の剣で千本の針を作ってお返ししますと、必死で謝る山幸彦に「海の中に潜ってその針をとった魚を捜し出せ。もしあの釣り針を持ってこなければ、再び家に帰って来るな」と言いました。海幸彦は山幸彦の謝る言葉も聞かないで、山幸彦を追い出してしまいました。
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