内田英雄文 古事記あらすじ20
第七章天孫降臨
㈢輝く目
お供の神々も揃いご出発も間近にせまったとき、突然下界のほうに金色の光が輝いているのが見えました。空の道の四つつじに、怪しい一人の神が立ちはだかっています。
普通の二倍はあろうという背の高さです。顔は真っ赤で鼻は高く、目は金色で眩しい光が輝いています。だれもあの神の正体をただしてくるものがおりません。そこで天照大御神は天宇受売命に、あの神の元に行き、どのような考えでそこに立っているのかただしてくるように仰せられました。
天宇受売命は相手の目を見ながらにこにこ笑いました。相手の神はますます顔を赤くして、大きな目玉から金色の光を出し、天宇受売命を射すくめようとします。しかし天宇受売命はその光を受けとめて立っています。やがて相手の神は光をやわらげ、いさぎよく自分の負けを認めました。
神は猿田毘古(さるたびこ)と名乗り、「邇邇藝命さまの道案内を申し上げようと、お待ちしていたのです」と、謹んで答えました。
下界に天下るにつけ、どうしても必要な道案内の神でした。力強い味方を得て、大御神さまもお喜びになり、ご安心なさいました。
㈣三種の神器
いよいよ出発の日です。天照大御神は邇邇藝命をお呼びになり、ご自身で鏡、勾玉、剣の三つの宝物をお渡しなりました。
第一は八尺鏡(やたのかがみ) 大御神の魂がこもっています。鏡を見て私のことを思い出して下さい。そして思金神には、そなたはいつもこの鏡を傍に置いて邇邇藝命に私の心を伝え、日本の政治を正しく行えるようにお助け申し上げるようにと、仰せになりました。
第二は八尺勾玉(やたのまがたま)。私が天の岩戸に籠った時に私を呼び出すために作られて玉です。いつの身近に置いておくように。
第三は叢雲剣(むらくものつるぎ)。須佐之男命が八俣のおろちを退治した時に、手に入れた剣です。これを見て正しいことをやり遂げる勇気をふるいおこして下さい。と仰せになりました。
この三つの宝物は三種の神器いって、いまでも天皇陛下のみ位のしるしとして受け継がれています。
支度が揃いました。いよいよおくだりです。猿田毘古命が案内に立ちました。天忍日命と天津久米命が先払いしながら進みます。一行は日本の最も南の筑紫の国、日向の高千穂の「くじふるたけ」という高い山の頂上に無事お着きになりました。そしてここから笠沙(かささ)の御前(みさき)というところにお着きになり、都をここに定められました。
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