内田英雄文 古事記あらすじ18②
第6章国譲り
㈦力比べ
建御名方命は相手の神の姿を見つけると、大きな岩を高く持ち上げて投げつけました。ことろが岩は相手まで届かずに落ちてしまいました。相手の神は鼻先で笑っています。
ならば今度は相撲だ。命が相手の腕をつかむと、相手の腕は氷の柱になってつかむことが出来ません。さすがの建御名方命も手の出しようが無くまごついています。
「今度はわしの番だ」相手の神は、いとも簡単に命を投げ飛ばしてしまいました。命は相手の腰に組み付いたのですが、力が全く抜けてしまい、まるで大人と子供の相撲のように何度も投げ飛ばされてしまいました。
あまりのひどさに建御名方命は、一応逃げておいて力が戻ったら仕返しをしようと考え、その場から走って逃げました。それを見た相手の神が追いかけてきます。建御名方命は力の続く限り、走りに走りました。
㈧洲羽海(すわのうみ)のほとり
命は逃げに逃げて辿り着いた先は洲羽海(すわのうみ)のほとりでした。岸の草の上に腰をおろししばらく休んでおりました。目の前の湖は水をたえ、何もかもが平和で静かな景色です。
命は何もかも忘れて、うっとりとあたりの景色に見とれておりました。兄上や母上父上のことを思い出しておりましたが、急ににこにこ笑われ、ひだをはたと打つと「あれは高天原の神に違いない」と仰せになりました。
その時あの神の足音が聞こえてきました。そして「もう逃がしはせぬぞっ」と怒鳴る神に「逃げも手向いもしませぬ、あなたは高天原の神ですね」と申しました。
相手の神は「高天原の使者、建御雷神だ」と名乗り、自分が遣わせられた理由を述べました。「お前の父上も兄上もこころよく国を譲ることを承知したのに、お前だけが手向いするとは何事だ」建御雷神の言葉に「知らなかったからです。もともとは天照大神様の治めたもう国、私もこの国を喜んでお返しいたしましょう」と答えました。
それからふた柱の神はがっしりと組合い、力比べを致しました。互いに力を出しつくして争いましたが、なかなか勝負はつきません。最後には二人とも疲れて草の上に座り込みいつまでも笑いあっておりました。
建御雷神は茨城県の鹿島神宮に、建御名方命は長野県諏訪湖のほとりの諏訪大社にお祭されています。
天照大御神は大国主命のために大きな神社をたて、いつまでもりっぱなお祭りを続けるようにとご命令になりました。出雲大社が、その神社です。
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