本末転倒、自業自得

人間は本来自分たちの住みやすいように自然を変えてきた。

　人間が幸せに暮らせることを目的にして自然を改善し改良してきた。まずは自然ありきであったのである。ところが、何を勘違いしたのか、人間の作り出した文明で独自の環境を作り出して、その環境に自分達を合わせようとしている。何もかも人間の作り出した人工物に囲まれてその人工物に合わせて暮らさなければならないのは何とも窮屈なものであり、これを日常的に強制されると精神的に病んでくる。これが現代病ではないだろうか。

人間の本性とは何だろうか？

　人間に適した環境とは何だろうか？果たして現代人はこの文明に囲まれた中で幸福に暮らせているのだろうか？文明的な暮らしは無意味で面倒な決められた手順を強いられる。その手順通りにしないと目的を達成することはできない。その手順はいつかどこか誰かの人間が決めたものである。そのことの繰り返しが文明生活であるらしい。しかし、その繰り返しの中には何も生産性がないし、創造的な思考も存在しない。決められた行動を繰り返しているだけである。

例えば、コンピュータネットワーク社会がある。

　ネットワークの中でいくらやり取りしても限界がある。最終的には直接会って対面で会話しないと機微な部分まで理解することはできない。表情であり、表現であり、ジェスチャーであり、目つきであり、イントネーションであり、微妙なニュアンスである。本来は対面のコミュニケーションで社会性を築いてきたのが我々の遠い祖先である。手っ取り早くは直接対面のコミュニケーションをするのが確実に目的を達成することができる。ネットワークはその手助けをするだけである。

現代人はコンピュータネットワークだけで完結しようとする。

　これは間違いだと思う。どう考えても不完全なままで先に進んでしまう。要所要所では直接の対面で確認しながら進めてゆくのが本来のやり方であろう。このためにコンピュータネットワークの弱点を突いて悪事を働く集団が後を絶たない。本来の対面でのコミュニケーションを疎かにしたしっぺ返しであるが、当事者は気づいていないようである。結局手抜きをしているだけなのだろう。できるからやるというのでは現実を無視している。

都心にタワーマンションがある。

　タワーマンションは人間に適した環境を提供しているのだろうか？私には極めて不自然に見えるし、どう考えても住みにくいし、幸福を招くとは思えない。タワーマンションを購入する人達は「便利だから」と言うが、便利とは人間の文明が生み出したものに違いない。文明の利器に囲まれた便利は他から与えられたもので、それを消費しても何も新しいことや充実感を獲得できない。与えられたものを与えられた通り体験しているだけである。いずれかは虚しさを覚えて飽きてしまうだろう。

人間の楽しみは自然の中にある。

　人生の究極の目的も自然の中にある。一生かかってこの究極の目的を追求し続けるのである。人間が作り上げた文明の中にあるわけではない。そうであれば人間は自然の中に身を置いて自然の中で暮らすのが一番幸福で有意義なのである。文明を否定するつもりはないが、根本のところで勘違いしないようにしたいものである。文明は人間にとって便利なものであるが、本流は文明ではない。本流を見失わないように上手に文明を利用すべきである。本末転倒、自業自得とならないように。