マニフェスト

衆議院選挙に向けて選挙戦が始まっている。

　各党のマニフェストが一応出揃って、それぞれを比較してみるが、よく解らない。要は根底に流れる思想なり意思が感じられない。アレはこうするコレはこうするというという断片的な施策はあっても、それを眺めていて、何のために何をどうするという目的や考え方や目標が見えてこない。第一、誰に対して訴えているのかが不明確である。不特定多数の仮想の「国民」に対して、当たり障りのない耳障りのいい心地よい言葉が並んでいる。そして各党に部分的な違いはあるが、全体としては似たり寄ったりである。

誰かに対して有利な施策は誰かに対して不利になる。

　全ての人に有利な施策なんてあり得ない。不利な人とは献身的な貢献を強いられる人である。本当は国民の大多数が国のために献身的な努力をして国家を支え、その支えの基に一部の補助を必要としている人や団体や組織に対して適切な対策がなされる。国民全員が国から補助される政策はハッキリ言って無意味である。国家のために献身的な努力を惜しまない人がいるし、その人達が国を支えている。その人達にとって政治に求めるものは金銭的な補助ではなくこの国の将来をしっかり創り出す事である。そのために何をなすべきかである。

せめて、保守か、革新か、中立かは明確にしてもらいたい。

　我が党は「保守」です。我が党は「革新」です。我が党は「中立」です。といった表現を最初に明確に表明する政党を見たことがない。せめて、「保守」か「革新」か「中立」かくらいは明確にして欲しい。マニフェストの中身を見ていてもそれが見えてこない。各党の党是を明確にしろとまでは言わないが、せめて、軸足をどこにおいているのかくらいは明確にしてもらいたい。それでないと我々国民の選択の基準がもてないし、各党の真意が見えないし、どの党もどんぐりの背比べに見えてくる。

どこの国にも基本的に「保守」と「革新」と「中立」がある。

　「保守」とは、古くからの習慣・制度・状態・考え方などを尊重し、急激な改革に反対する事であり、「革新」とは、古くからの習慣・制度・状態・考え方などを新しく変えようとする事であり、「中立」とは、特定の立場・意見に偏らず中正の位置を保つ事である。マニフェストの中身を眺めていて、それじゃこの政党は「保守」か「革新」か「中立」かと区分しようと試みるができない。どの党も中途半端なところに位置して、古くからの習慣・制度・状態・考え方などをどうしようとしているのか見えてこない。そして最初から古くからの習慣・制度・状態・考え方などの現状分析があまりなされていないで断片的なツギハギだらけの政策の羅列のような感じを受ける。

マニフェストは選挙のための政党のキャッチコピーではない。

　本来は宣言であり声明であり政策綱領である。その大本には政党としての基本的立場・理念・活動方針・政策などを明確にしたものがあるが、これが具体性を欠くために、イギリスの選挙で政策の数値目標、実施期限、財源などを明示したものを「マニフェスト」として公表したものである。日本はこれを真似しているのだろうが、根本の基本的立場・理念・活動方針・政策などが不明確で、しかもマニフェストから数値目標・実施期限・財源などさえも明確に見えてこない（特に財源)。何がなんだか魑魅魍魎、意味不明の様相を呈しているように私には思える。

選挙に投票する国民は、

　基本的に「保守」の人は保守党に、「革新」の人は革新党に、「中立」の人は中立党を選択するのだろう。少なくとも、そのくらいの選択基準は明確にしてもらいたいものだ。「保守」が現状を改善するための改革を全くしないわけでもないし、「革新」も国の現状を全く否定するものではないし、「中立」が中途半端で理念が不明確なわけでもない。それぞれに基本的立場・理念・活動方針・政策などがある。反対に基本的立場・理念・活動方針・政策などを明確にすれば「保守」「革新」「中立」の立場が明確になると思う。

私としては、

　政権与党である自民党は、たぶん「保守」であろうと思うし、反対政党の民主党は、たぶん「革新」であろうと思っているが、マニフェストからは明確に読み取る事ができない。反対に根底に流れるものは自民党も民主党も同じに見えてくる。結局は選挙に勝つための日本流「マニフェスト」であり、人気投票のための「マニフェスト」であるようだ。前回の選挙に使用したマニフェストの総括もないし、反省も改善もなく唐突に今回の選挙のためのマニフェストがでてきている。しっかりと準備して作られたものだろうが、過去・現在・未来のつながりを感じないのは私だけだろうか。何とかしてもらいたいものである。