切られお富!

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薔薇十字社刊の森茉莉翻訳『マドゥモァゼル・ルウルウ』をめぐって。

2016-01-27 23:59:59 | 超読書日記
わたしの蔵書のなかでもちょっと珍しいもののひとつに、薔薇十字社という、渋澤龍彦や三島由紀夫と縁のあった出版社から出ていた、森茉莉の翻訳『マドゥモァゼル・ルウルウ』という本があります。この翻訳は1933年に私家版が出ているものの、一般に知られるようになったのは1973年の薔薇十字社刊のものからだと想像されますが、わたしが持っているのは薔薇十字社の再販版で、学生時代に大学の近くの古本屋で見つけました。当時かなり安い値段で手に入れた記憶がありますが、ananなんかで知られる堀内誠一さんの凝った装丁による函付の一冊です。で、なんでいまさらこの本の話を持ち出したかというと、この本の印税をめぐって森茉莉と出版関係者サイドが揉めたって話の内幕を最近になって知ったからなんですよね。ま、予想通り、茉莉さんの勘違いみたいなんだけど・・・。

わたしが日本の作家で掛け値なしの天才だと思っているのは、岡本かの子と森茉莉なんだけど、あの文章や表現力はマネしようにも絶対マネできないですよね。

で、マネできない理由の第一が、二人とも強烈に変わった人だから。極度に生活感がないというか、生活力の塊みたいな林芙美子みたいな作家の対極にある浮世離れした感覚があの表現を生んだと思うんですよ。(といっても、林芙美子もわたしはかなり好きです!)

で。『マドゥモァゼル・ルウルウ』の件。3,000部程度の初版でなおかつ翻訳だという事情を考慮しても、定価が900円で、せいぜい印税が19万弱。それを連載エッセイの「ドッキリチャンネル」のなかで、「380万踏み倒された」と書いていたというんですが、これは吹き込んだ人がいたんだろうなと想像していたら、ま、そういうことみたい。このあたりのことは、元社長の書いた『薔薇十字社の軌跡』という本に詳しく書かれています。

なお、この本、70年代前後の芸術系出版社の話としてもかなり面白くて、「家畜人ヤプー」に関するくだりなんかはかなり面白く読みました。

ということで、「ルウルウ」のご興味のある方は手に入りやすい宇野亜紀良さん装丁による新装版を探していただき、文学系裏ネタにご興味の筋は『薔薇十字社の軌跡』をどうぞ。

PS:「ルウルウ」の序文は与謝野晶子が書いています!


マドゥモァゼル・ルウルウ (1973年)
クリエーター情報なし
薔薇十字社


マドゥモァゼル・ルウルウ
クリエーター情報なし
河出書房新社


薔薇十字社とその軌跡 (出版人に聞く)
クリエーター情報なし
論創社


堀内誠一 旅と絵本とデザインと (コロナ・ブックス)
クリエーター情報なし
平凡社

家畜人ヤプー〈第1巻〉 (幻冬舎アウトロー文庫)
クリエーター情報なし
幻冬舎
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