去年読んだ本でダントツのベストでした。「人間失格」超えてますね。簡単に感想。
手抜きで恐縮なんですが、アマゾンの紹介記事にはこう書いてあります。
<物心ついた頃には始まっていた父親からの性的虐待、宗教にのめり込む家族たち。愛子は自分も、自分が生きるこの世界も、誰かに殺して欲しかった。阪神淡路大震災、オウム真理教、酒鬼薔薇事件……時代は終末の予感に満ちてもいた。「ここではないどこか」を想像できず、暴力的な生きにくさと一人で向き合うしかなかった地方の町で、少女はどう生き延びたのか。『ぼくらのへんたい』の著者が綴る、半自伝的90年代クロニクル。>
まあ、そういうことなんですが、わたしの気になったところだけ、書きます。
男性の漫画家だったら違う描き方なんでしょうけど、一見ほんわかした画風でこの内容だってこと加えて、背景をあんまり描かないスタイルが面白いと思いました。よしながふみなんかも背景描かないで人物のミディアムサイズのカットでつなぐけど、それともちょっとスタイル違うんですよね。もっとわざとボヤっとしている印象というか。
出てくる人物だと、メガネっ子の松本さん(1巻)、謎の男田中(2巻)、全編出てくるけど3巻目が凄かったお母さんのキャラが強烈。グサグサ突いてきますよね。
で、個人的には、吾妻ひでおとか卯月妙子の作品より、身に迫るというか近い感じがありました。というのも、90年代を自分も生きてたなという感覚にシンクロしてくるんですよね。なので、わたしはこの漫画のヒロインみたいな経験はないけど、「そうなんだよ」とか「(それって)なんだよ」って言いたい部分がいろいろ出てくる。このあたり、同じような題材を扱っている内田春菊の『ファザーファッカー』を読んだ時にはなかった感覚でした。
(ちなみに、ヒロインが引きこもっているときに食べていたものがカントリーマームって、わたしも昔引きこもりがちだったときは、カントリーマームを主食みたいにしていたので、妙にこのディテールにはまりました。当然太るんですよ。)
あと、この作家さんって、一面コトバの人でもあるなと思うのは、「もう性交する”女”にも子供を産む”母”にもならなくて良い。そう思った瞬間、どっと肩の荷が降りた」とか印象に残るフレーズが結構出てきて、わたしなんかは、『人間失格』の最後の甘ったれた主人公の述懐よりよほど響きました。
というわけで、性被害の話という枠を超えて、普遍性のある、力のある作品だと思いました。
ま、必読ですね。
なお、三巻目の表紙の突き抜けた表情がわたしは妙に好きです。
手抜きで恐縮なんですが、アマゾンの紹介記事にはこう書いてあります。
<物心ついた頃には始まっていた父親からの性的虐待、宗教にのめり込む家族たち。愛子は自分も、自分が生きるこの世界も、誰かに殺して欲しかった。阪神淡路大震災、オウム真理教、酒鬼薔薇事件……時代は終末の予感に満ちてもいた。「ここではないどこか」を想像できず、暴力的な生きにくさと一人で向き合うしかなかった地方の町で、少女はどう生き延びたのか。『ぼくらのへんたい』の著者が綴る、半自伝的90年代クロニクル。>
まあ、そういうことなんですが、わたしの気になったところだけ、書きます。
男性の漫画家だったら違う描き方なんでしょうけど、一見ほんわかした画風でこの内容だってこと加えて、背景をあんまり描かないスタイルが面白いと思いました。よしながふみなんかも背景描かないで人物のミディアムサイズのカットでつなぐけど、それともちょっとスタイル違うんですよね。もっとわざとボヤっとしている印象というか。
出てくる人物だと、メガネっ子の松本さん(1巻)、謎の男田中(2巻)、全編出てくるけど3巻目が凄かったお母さんのキャラが強烈。グサグサ突いてきますよね。
で、個人的には、吾妻ひでおとか卯月妙子の作品より、身に迫るというか近い感じがありました。というのも、90年代を自分も生きてたなという感覚にシンクロしてくるんですよね。なので、わたしはこの漫画のヒロインみたいな経験はないけど、「そうなんだよ」とか「(それって)なんだよ」って言いたい部分がいろいろ出てくる。このあたり、同じような題材を扱っている内田春菊の『ファザーファッカー』を読んだ時にはなかった感覚でした。
(ちなみに、ヒロインが引きこもっているときに食べていたものがカントリーマームって、わたしも昔引きこもりがちだったときは、カントリーマームを主食みたいにしていたので、妙にこのディテールにはまりました。当然太るんですよ。)
あと、この作家さんって、一面コトバの人でもあるなと思うのは、「もう性交する”女”にも子供を産む”母”にもならなくて良い。そう思った瞬間、どっと肩の荷が降りた」とか印象に残るフレーズが結構出てきて、わたしなんかは、『人間失格』の最後の甘ったれた主人公の述懐よりよほど響きました。
というわけで、性被害の話という枠を超えて、普遍性のある、力のある作品だと思いました。
ま、必読ですね。
なお、三巻目の表紙の突き抜けた表情がわたしは妙に好きです。
「人間失格」のタイトルを出されてましたが、私は「二十歳の原点」とか「ライ麦畑」なんか思い出しました(年寄りの感慨ですいません)。
女性の性がフューチャーされがちな描き方たけれど、誠実に生きうとする「私」というテーマは今も昔も変わりませんね。
絵のタッチが時間経過に沿ってどんどん変わっていく作りって、どうなんですか?乏しい私の読書歴では、ありがちな様で、実はあまりお目にかからないものに思えるのですが…あざといと言えばあざといですしね。
結局、甘いカタルシスに走らず、散文的に(と、私は思いました)終わるのが、今風のリアルなのでしょうが、物足りなさは否めない…という感想こそ、年寄りオヤジのものなのでしょうか。
主人公の母親は、やっぱり身勝手にしか思えないのも含めて。
それこそ、リアルだけどね。
兎も角も生きていかなきゃ…という言葉は周辺に溢れ返っているでしょう?
まぁ、こうするしか、ないのかな…。
…遠くに来てしまいました。
面白かったです。
そして(個人的な事情で)とても刺激的で、勉強になりました。
ココで出会わなければ読まなかったと思います。
感謝です。
コメントありがとうございます。
この作品は、わたしのなかでは、まあまあついて行けた方で、仕事で関わってる若い人たち(すいません、年寄りくさくて!)なんかとは、結構、断絶感ありますよ。でも、彼らはテレビも映画も観てないし、本もそんなに読んでないけど、不思議と音楽は聴いているんですよね。(といっても、「チャーリーワッツ死んだね」とかは、言っても相手にされそうにない…。)
あと、絵柄についていうと、的外れかもしれないけど、スマホでマンガを読む時代になって、なんとなく変わってきた感じがします。そのあたりは、わたしも今まで認識していなくて、『フリースタイル46 THE BEST MANGA 2021 このマンガを読め!』 の対談なんか参考になるかも…。
この作品もそうだけど、ある世代以下の「諦め感」みたいなことに興味があって、同時代のモノに触れようという気分になってます。少なくとも来年春くらいまでは巣ごもりするしかないから勉強するか、みたいな。
わたしとか蝙蝠お高さんが持っていた「人間なんて自由だ」みたいな感覚は下に行くほどないですし…。貧困女子問題なんかも絡んで、性の話になっていくんですかね?
というわけで、楽しんでいただけたようで、よかったです。
ちなみに、最近のフェイバリットは、Youtubeで発見した動画、桑田佳祐の「アベーロード」です。こういうロック魂は今なかなかないですね~。音楽も映像も最高!