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切られお富!

歌舞伎から時事ネタまで、世知辛い世の中に毒を撒き散らす!

川端康成は『伊豆の踊り子』じゃあないんだよ~。

2008-07-02 00:23:21 | 超読書日記
集英社文庫の『伊豆の踊り子』の表紙が変わるって話題で思ったのは、「川端を『伊豆の踊り子』で語ること自体が間違いなんだよね~」ってこと。いっそ、『眠れる美女』とか『みずうみ』の表紙を小野塚カホリなんてパターンはどうかしら!?

「ノーベル賞作家」というレッテルが、この<猟奇的な作家>の姿を見えなくしているという気がするのですが、あのガルシア・マルケスにも影響を与えた『眠れる美女』は言うに及ばず、まさに猟奇犯の視点という印象の『みずうみ』や『禽獣』の主人公の凄まじい身勝手さって、嗚呼、絶句!

要するに、この作家の目は<加害者>のものであって、川端に比べれば、同じく犯罪を扱った小説を幾つも書いている谷崎潤一郎は、本質的に<被害者>の視線だったんだなあ~って思えるほどなんですよね~。

とは言いながら、ここでは『伊豆の踊り子』について確認しておくけど、主人公の青年のロリコン的な視点ばかりでなく、当時のエリート「一高生」と被差別的な待遇を受ける漂流民との心の交流という、<階級的な視点>こそが、この小説で見落としてはいけない部分。

そういう意味では、再三の映画化作品のうちで、原作の底流にある差別問題に辛うじて迫ったのは、意外にも吉永小百合主演版(西河克己監督)だったと思うのですが、この点、どの程度認知されてるのかな?

詳しくは、西河克己監督の『監督修行』という本が面白いのですが、実際にこうした「踊り子」を見たことがあるという発言や、川端康成が吉永小百合をいたく気に入ってしまったという話、田中絹代主演、五所平之助監督の戦前の映画『伊豆の踊り子』がヒットするまで川端自身はメジャーな作家ではなかったという意外な事実などは、なかなか興味深かったりします。(川端康成は映画が生んだ人気作家だった!)

さて、こうした川端の奇妙な魅力について語っている意外な人物に、音楽評論家の許光俊氏がいるんですが、彼の著書『世界最高の日本文学』も話のタネにどうぞ!

というわけで、表紙の話じゃあなくなっちゃったなあ~。

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