切られお富!

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『ノンフィクションを書く!』に出てきた小川紳介批判。

2015-06-10 23:59:59 | アメリカの夜(映画日記)
絶版になっている本なので、興味のある方は図書館で借りるか古本を入手して読んでほしいところですが、日本のドキュメンタリー映画界のレジェンド小川紳介(故人)に対する批判が『ノンフィクションを書く!』という本に出ているのを最近になって知りました。なかなか辛辣なんですが、6~70年代の独立プロやドキュメンタリー映画界の状況がよくわかって勉強になりました。ちなみに批判しているのは吉田司さん。

この本は第一線のノンフィクションライターへのインタビューを通して、いかにして「ノンフィクションを書くか」に迫ったものなんですが、わたしの印象をいえば、「いかにノンフィクションライターとして生き延びるか」を皆さんが語ったという感じですかね。それくらい、ノンフィクションライターって大変らしい(特に経済面で。)。

で、わたしがそもそも手に取ったのは、最近再評価の機運があるノンフィクションライター井田真木子さんのインタビューを読むためだったのですが、他の方のページも読みごたえがあって絶版なのが惜しい。文庫化もしくは電子書籍化してほしいものですね。(なお、井田さんのくだりは、『井田真紀子選集』に収録されました。)

さて、本題の吉田司さんの小川紳介批判ですが、単純化すると金の問題、思想的問題、集団の問題ですかね。で、詳細はこの本を読んでいただくとして、わたしが感じたのは、今や、こういう、ある種のクリエイターの夜郎自大的「野蛮さ」って、表現の世界では聞かなくなったなあ~というものです。小川氏的なリーダーは、現代ではベンチャービジネスの世界でよくみられるんじゃないか?最近のドキュメンタリー映画の監督って良いひとっぽい人が多いじゃないですか。ま、映画に限りませんが…。ということで、いまや表現の世界にこそ、野蛮が足りないと、逆に思ってしまいましたね。第一、小川氏のことでいえば、大島渚だってかなり怪しいわけですから。

ちなみに、わたし、恥ずかしながら、小川紳介作品を観たことがなくて、今度の都内の上映を楽しみにしております。だいたい、パッケージ化されていないし、上映会を逃すと観られないっていうのは、多くのドキュメンタリー映画に共通する状況ですが、それゆえに神格化されているのか、それとも批判を超えて作品に力があるのか、自分の目で確かめなくては!ただ、地方に住んだことのある者としては、東京出身で地方に幻想を持っている人には、前から違和感を持っています。

というこことで、興味のある方はとりあえず本の方をどうぞ。

ノンフィクションを書く!
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