切られお富!

歌舞伎から時事ネタまで、世知辛い世の中に毒を撒き散らす!

大騒動になってきた日活・USEN問題。

2005-04-29 15:01:47 | アメリカの夜(映画日記)
なにやら、だんだん大きな問題になってきたこの話。学生時代、鈴木清順や神代辰巳に熱狂した私としては、どうも成り行きが気になるところ。

続々「日活闘争」(「発見の同好会」さんの記事)

この件、私がかねてより主張してきた、「フジVSライブドア問題はIT産業の版権囲い込み政策を象徴する現象である」という考えとリンクしているため、どうしてもいろいろ考えてしまう。

なお、この件に関しては、Duke Ken Usuiさんから、「(日活の労組は、)資本の論理で対抗してMBO(Managing Buy Out)掛けるべき」という興味深い視点のコメント頂いたので、この件に関する私のコメントを再録します。(コメントのままにしておくには長すぎたので。)

MBOとは

日活労組がUSENへの株式譲渡に反対(前回の私の記事。)

                 ★ ★ ★

『経営者の経営能力を信頼できるか?』 (切られお富 )

興味深い視点のコメントありがとうございます。

ただ、私は具体的な行動のフローチャートとして納得できないことには賛成しない主義なので、幾つか疑問点があります。

まず、MBOというのは私も思いつきませんでしたが、GW前を狙った寝耳に水の「株売却検討」の発表を受けて労組が対抗しようとした場合、MBOという時間のかかりそうな手段は果たして実行可能なのか疑問が残ります。

また、そもそも非上場株である日活株をめぐってMBOを掛けるということは、ナムコもしくはUSENから株を買うことになるわけでしょ?これでは、経営責任を追及しているナムコサイドや経営状態が不安視してされているUSENの利益になるばかりだと思いますが?

むしろ、この件で興味深い法的論点は以下の点。

一度、団体交渉上で否定した株式譲渡を強行するのは労組法上では「空団交」にあたるということ。(つまり、違法だということ。)
また、ナムコ・日活の両社の代表権を有している人間が、商法上の株式譲渡制限解除の議決に参加するとすると、商法にいう取締役による利益相反行為になるのではないかということ。(そもそも、多額の有利子負債をかかえる企業への株譲渡を取締役が承認すれば、そのこと自体が利益相反行為として、他の株主や従業員から訴えられうるとは思うが。)

それと、映画会社や映像製作会社という存在は、映画製作だけをやっているわけではなくて、劇場経営や洋画の配給、衛星放送事業、キャラクターの権利ビジネス、旧作のDVD販売など業務が多岐に渡っているわけで、その柱に版権の問題がある。ましてや、衛星事業とBB事業は競合するジャンルなわけで、「日活映画のコンテンツがUSENに取られそうだから、自分達の食い扶持がなくなりそうだから反対するというのでは、情けないです。」という発想は私にはよくわからない。映画の著作権というのは、いってみれば製造業の特許みたいなものですからね。

また、映画界に詳しい人ならご存知のことですが、日活を飛び出して映画を作っている人はたくさんいます。これは、日活が70年代以降もスタッフ養成を続けていた会社だったからで、だからこそ撮影所も健在なわけです。つまり、飛び出すのも映画人なら、育った場所を守るのも映画人だという気がしますが?

最後に、わたしは村上ファンドの村上氏の提唱する「物言う株主」という考え方に賛同するものですが、「物言う従業員」というのも重要だと考えます。現場の最前線にいるのは従業員なわけですから。富士通の社長のように「業績が悪いのは働かない社員が悪い」などとマスコミに公言する経営者を見るにつけ、「経営者の経営能力を信頼できるか」という問題が、株主および従業員に求められる時代が来ていると思います。(もっとも、駄目経営者に限って筆頭株主ということもありますが。)

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5 コメント

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お富さん 貴女は? (不老愚 助光)
2005-04-30 21:17:35
貴女の理路整然としてポイントを鋭く突いたこの日活問題のご意見には驚きました。

貴女はどんなお仕事をする人ですか?

ひょっとして弁護士さん?

何だか少し今迄より興味と恐怖を覚えます。
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コメントありがとうございます。 (切られお富 )
2005-05-03 04:26:13
私の仕事ですか?

何ですかね~。



別にそんなたいした人間ではありませんよ。



たんなる一介の芝居好き、映画好きですから!!

ご心配なく
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体質 (通りすがり)
2005-05-03 07:56:42
日活労組は、USENの経営陣と話し合う場を設けた方がお互いにとって建設的な方向に行く気がします。

なんとなく。

返信する
資本の論理 (Duke Ken Usui)
2005-05-04 00:26:56
TBありがとうございます。

日活やナムコの法的責任が追求できるのであれば、法廷闘争すれば良いのではとも思いますが、それでは反って解決に何十年も掛かるでしょうし、本当に救済されたことにならないでしょう。

しかし、労組の論理では資本の論理の前に敗れ去ってしまうだろうと思います。残念ながら、資本の論理には働く者への「思いやり」や「同情」は全くありません。それは善悪の問題ではなく、資本がより効率的であるかどうかが問題だからです。

いまの日活経営陣には当事者能力はなく、ナムコはコアではない不要な事業を整理しています。ナムコは好き嫌いで日活売却をしているのではなく、コアの事業に持てるリソースを注ぎ込まねば、激化するゲーム業界の競争に打ち勝てないからです。だからナムコにしてみれば、高額で買い取ってくれる方に売却することになります。また、そうしなければ、ナムコの株主から訴えられます。

日活労組がUSENより良いディールを提案すればナムコは必ず検討するでしょう。また、本当にそうであれば投資ファンドが資金を出してくれます。日活労組が自身でそれが出来ないのであれば、誰かホワイトナイトを探すべきでしょう。いつまでも旧態依然に会社の前で抗議活動するのではなく、最近のニッポン放送株を巡るライブドア対フジテレビの攻防を参考にして頭を使えば・・・と言いたいです。
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「資本の論理」とは何か? (切られお富 )
2005-05-05 08:16:00
通りすがりさん、Duke Ken Usuiさん

コメントありがとうございます。



まず、法廷闘争の件ですが、不当労働行為の申し立ての場合、労働委員会への提訴という形になりますが、何十年もかかるということは実際上あり得ないし、商法上の争いをした場合でも、長期戦を双方が望まないでしょうから和解調停になる公算が高いと考えます。



また、日活労組が争点にしているのは、センチメンタルな理由というよりは、USENの財務体質問題なわけで、まさに「資本」の問題だと考えます。このあたりがまさに私がこの問題にしつこく言及している理由であって、私自身の反省も含まれている。つまり、昨今もてはやされているIT事業者だのヒルズ族だのの財務は果たして健全なのかという問いなのですが、確かに日活労組の主張には一理あって、今簡単に手に入る範囲の数字を見る限り、USENの財務は健全だとは言い難いというのが私の判断です。



また、たまたま私の周囲には株をやる人間というのが何人かいて、ITバブルの含み損を抱えているという人間も少なくないのですが(実際、小泉首相になってから、森首相時代の日経平均株価の水準を戻したことは一度もないですしね。)、現在報道さえている範囲では、IT事業者などの交友関係ばかりで、実際の財務体質などが語られることは皆無に近く、ネット内世論もほぼ同様であることを考えると、これは二度目のITバブルになる可能性があるのではと疑ってみるべきではと私は考えます。(もっとも、財務諸表も読めない人が株で損してもまったく同情に値しない話ではありますが。)



一方、ナムコ株主による株主代表訴訟の可能性でいうなら、前述の通り、日活株主(または従業員)による取締役の利益相反行為という問題も浮上するわけで、争点となった場合、仮に「何が何でも高い値をつけたほうに売れ」とナムコ株主が「資本の論理」で主張したとしても、法的には利益衡量の観点から「私権の濫用」とみなされると考えますが?



そして、投資ファンドの件ですが、私のわずかな人生経験から考えても、労組の名刺を持った人に近づく金融関係者という存在をまったくリアルに想像できないのですが、前例というのはあるのでしょうか?(門前払いを食らうことはあっても。あるいは労金が金を出すってことか?)

もちろん、トライする価値はあるのかもしれませんが、限られた時間の中で具体的にする行動の選択肢としてありうるのかどうか?例えば、目の前に、当該労組の幹部がいるとして、本当に勧められるのかと問われれば?としか私には言いようがないですね。



また、社前抗議の類が旧態依然かどうかについても議論の分かれるところで、たとえは悪いのですが、韓国や中国のデモが実際に政治家を動かしているわけで、効力なしともいえないと思いますが。(もっとも「効力なし」説を唱える私の周囲の人間は決まってバブル期入社世代だったりするのだが…。)



因みに、私は私の世代には珍しく、中高生時代、ダメ教師の責任を追及するために授業ボイコットなど派手なこともやりましたが、「ひと騒動起こす」というやり方は、相手に心理的なダメージを与えるし、交渉に応じない相手を無理やり交渉の場に引きずり出すには有効な手段だというのが、私の実践的喧嘩作法(?)なんですね。実際、具体的な窮状に置かれた人間ができる行動なんて所詮は限られているわけで、何もやらないよりは、とりあえずできる意思表明手段としての社前行動というのも私にはリアルにわかるところがある。(このあたりが、バブル期入社世代と私が仲が悪い理由かもしれないが。)



最後に、一点だけ案外注目されてないことを指摘しておくと、今回の労組の声明や行動に関する報道は労組のHPを発信源としていて、これは新しい潮流なのではということ。先ほどあげた、中国や韓国のデモもそうでしたが、21世紀的な社会行動のスタイルになる可能性があるという気がします。近年、企業のコンプライアンス(法令遵守)が叫ばれる一方、来春施行予定の「公益通報者保護法」の不備に関する指摘もあるなか、ネット上で関係者が情報公開していくという手法は案外突破口になるのかもしれません。JR西日本やNHKの労組あたりはこの手をもっと活用したらといいたくなりますね。



というわけで、分不相応ながら私の考えでした。
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