切られお富!

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『忍ぶ川』 熊井啓 監督

2010-08-30 23:59:59 | アメリカの夜(映画日記)
たまたま日曜日、映画『忍ぶ川』を久しぶりに観て、なおかつ「三浦哲郎の語る井伏鱒二」なんていうテープを聴いていたところに、今朝の新聞の訃報!何かがわたしを呼んだのでしょうか?というわけで、作家三浦哲郎のご冥福をお祈りしつつ、映画の感想です。

三浦哲郎さん死去 79歳 「忍ぶ川」など私小説追求(産経新聞) - goo ニュース

個人的に熊井啓の映画って好きじゃないんですが、この映画は奇跡的によい作品のひとつ。(ちなみに、評論家・蓮實重彦が酷評している『サンダカン八番娼館 望郷』もわたしは嫌いじゃない。)

要するに、「神田川」的な早稲田学生の貧乏カップル物なんだけど、モノクロ映像がよいんですよね~。

これは早世したカメラマンの黒田清巳と溝口研二作品の照明で知られる岡本健一によるところが大きいんじゃないですか?

そして、この作品が日活からフリーになって一本目だった美術の木村威夫!(鈴木清順作品で知られる美術監督。)

俳優では、加藤剛の顔面列車的な演技より何より、栗原小巻が綺麗ですね。『サンダカン八番娼館 望郷』のときも綺麗だったけど、この頃の彼女は全然吉永小百合に勝ってます!

なお、この映画って、当初吉永小百合主演で企画されていたものの、吉永の父親と熊井啓が折り合わず、主演が栗原小巻に代わったという経緯があります。

このあたりの話は『ぶれない男 熊井啓』という本に詳しいのですが、吉永サイドの要求が、「唄を歌わせろ」、「相手役は舟木一夫がよい」など、まるで映画的なセンスを感じさせないもので、彼女の足を引っ張っていたのは父親だったのかなあ~と想像してしまいますね。

さて、映画に話を戻すと、栗原小巻演じるヒロイン志乃が「できた女」過ぎるのと、今では絶対モテそうにない加藤剛演じる主人公哲郎の結構封建的な感じに違和感感じつつ、「栗原小巻が綺麗だからいいや」と思える映画でした。

それと、志乃の遊び人の父親役、信欣三が個人的には良かったですね。熊井啓は『帝銀事件 死刑囚』でも彼を平沢貞通役で使っていますが、信欣三から最良の芝居を引き出した演出家として記憶されてもいいかもしれない。

浅草のほおずき市から東北の雪景色まで、酷暑の夏に観ていると涼やかな気分になります。

というわけで、この夏にあえてオススメ。

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