今月の歌舞伎座は、中村吉右衛門主演の「河内山(宗俊)」をやっていますが、ちょっと思うところがあって、ひっさびさに映画『河内山宗俊』を見直してみることにしました。改めてみると、なかなか発見がありますね~、というわけで、簡単に感想っ!
まず、河竹黙阿弥原作の「天衣紛上野初花(くもにまごううえののはつはな) 河内山(こうちやま)」という芝居は、お数寄屋坊主の悪漢・河内山宗俊が殿様を騙してお金を騙し取るというピカレスク・ロマンみたいな芝居ですが、映画の方は、この芝居の翻案ものという趣で、芝居とは登場人物は重なりますが、かなり話が違います。
若くして戦死した監督の山中貞雄が脚本も書いているのですが、この映画の公開された昭和10年といえば、河竹黙阿弥没後42年くらいで、当時の著作権法はクリアしていたってことでしょうか?
(旧著作権法の保護期間は37年。といっても、歌舞伎脚本の翻案の習慣「世界さだめ」を考えると、こういう二次的著作物には寛容だったということでしょうかね。今だったら、たいへんなんだけど!)
元の芝居「天衣紛上野初花」には、「直侍(なおさむらい)」という直次郎と三千歳花魁のラブストーリーも絡むのですが、この話もかなりアレンジを加えるかたちでこの映画のなかでは生かされており、10月歌舞伎座で上演される「直侍」とはかなり感じが違うんですよね。(因みに、10月の歌舞伎座では、菊五郎・菊之助親子がこのカップルを演じます。)
さて、映画の方ですが、現存する山中貞雄作品のなかでも、保存状態が悪く、人気ももうひとつというのが、この作品の一般的評価。
・山中貞雄とは
しかしながら、特筆すべきは、あの伝説的な映画女優・原節子の16歳当時のみずみずしい姿が見られるということでしょうか。
それに、作品も改めてみると、なかなか凝っていて興味深い作品です。
PCL(後の東宝)時代の『人情紙風船』ほどには予算がないのはすぐにわかりますが、それにしてもアングルに凝っていますし、たぶん美術にも詳しかったんじゃないかな~。
狭い画面に、大道具、小道具が詰まっていて、画面自体が本当に充実しています。また、意外と引いた画面が多く、このことからも絵画的な画面効果を気にしていた節がある。
そして、よく言われるこの映画の芝居に関してですが、黎明期の前進座の面々の芝居が充実しているんですよね。(当時の前進座は日活と業務提携していた。)
戦前の歌舞伎の世話物の雰囲気がこの映画の画面から充分に感じられるし、この映画を見ていると、戦前の名優・六代目尾上菊五郎が映画『鏡獅子』(小津安二郎監督)の失敗で映画出演をやめてしまったという話がもったいなく思えてきます。
ところで、前進座といえば、歌舞伎に詳しくない方々には馴染みがないかもしれませんが、いまも続いている劇団で、金子市之丞役の中村翫右門は中村梅雀のおじいさん。
今の中村梅之助・梅雀親子の世話物「魚屋宗五郎」や「髪結新三」「権三と助十」といった舞台には、山中貞雄の映画にあったような世界を見ることができますから、興味のある方は舞台をご覧になるといいでしょう。
というようなわけで、取り止めがない内容になってきましたが、歌舞伎ファンは戦前の世話物芝居の雰囲気を楽しむのもいいし、映画ファンは今も続く前進座の舞台から、山中貞雄の世界を捉えなおすのもよし。
とにかく、ハイビジョンだのブルーレイだのと画質ばかりが映画の本質であるかのような与太話はやめて、この良質の傷だらけのフィルム(映画)を見るべし!
戦前の映画界を代表する傑作映画のひとつです。騙されたと思って、どうぞ!
(参考記事)
・今月の国立劇場のカレンダーは河内山宗俊だ~!
まず、河竹黙阿弥原作の「天衣紛上野初花(くもにまごううえののはつはな) 河内山(こうちやま)」という芝居は、お数寄屋坊主の悪漢・河内山宗俊が殿様を騙してお金を騙し取るというピカレスク・ロマンみたいな芝居ですが、映画の方は、この芝居の翻案ものという趣で、芝居とは登場人物は重なりますが、かなり話が違います。
若くして戦死した監督の山中貞雄が脚本も書いているのですが、この映画の公開された昭和10年といえば、河竹黙阿弥没後42年くらいで、当時の著作権法はクリアしていたってことでしょうか?
(旧著作権法の保護期間は37年。といっても、歌舞伎脚本の翻案の習慣「世界さだめ」を考えると、こういう二次的著作物には寛容だったということでしょうかね。今だったら、たいへんなんだけど!)
元の芝居「天衣紛上野初花」には、「直侍(なおさむらい)」という直次郎と三千歳花魁のラブストーリーも絡むのですが、この話もかなりアレンジを加えるかたちでこの映画のなかでは生かされており、10月歌舞伎座で上演される「直侍」とはかなり感じが違うんですよね。(因みに、10月の歌舞伎座では、菊五郎・菊之助親子がこのカップルを演じます。)
さて、映画の方ですが、現存する山中貞雄作品のなかでも、保存状態が悪く、人気ももうひとつというのが、この作品の一般的評価。
・山中貞雄とは
しかしながら、特筆すべきは、あの伝説的な映画女優・原節子の16歳当時のみずみずしい姿が見られるということでしょうか。
それに、作品も改めてみると、なかなか凝っていて興味深い作品です。
PCL(後の東宝)時代の『人情紙風船』ほどには予算がないのはすぐにわかりますが、それにしてもアングルに凝っていますし、たぶん美術にも詳しかったんじゃないかな~。
狭い画面に、大道具、小道具が詰まっていて、画面自体が本当に充実しています。また、意外と引いた画面が多く、このことからも絵画的な画面効果を気にしていた節がある。
そして、よく言われるこの映画の芝居に関してですが、黎明期の前進座の面々の芝居が充実しているんですよね。(当時の前進座は日活と業務提携していた。)
戦前の歌舞伎の世話物の雰囲気がこの映画の画面から充分に感じられるし、この映画を見ていると、戦前の名優・六代目尾上菊五郎が映画『鏡獅子』(小津安二郎監督)の失敗で映画出演をやめてしまったという話がもったいなく思えてきます。
ところで、前進座といえば、歌舞伎に詳しくない方々には馴染みがないかもしれませんが、いまも続いている劇団で、金子市之丞役の中村翫右門は中村梅雀のおじいさん。
今の中村梅之助・梅雀親子の世話物「魚屋宗五郎」や「髪結新三」「権三と助十」といった舞台には、山中貞雄の映画にあったような世界を見ることができますから、興味のある方は舞台をご覧になるといいでしょう。
というようなわけで、取り止めがない内容になってきましたが、歌舞伎ファンは戦前の世話物芝居の雰囲気を楽しむのもいいし、映画ファンは今も続く前進座の舞台から、山中貞雄の世界を捉えなおすのもよし。
とにかく、ハイビジョンだのブルーレイだのと画質ばかりが映画の本質であるかのような与太話はやめて、この良質の傷だらけのフィルム(映画)を見るべし!
戦前の映画界を代表する傑作映画のひとつです。騙されたと思って、どうぞ!
(参考記事)
・今月の国立劇場のカレンダーは河内山宗俊だ~!
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天衣紛上野初花 (歌舞伎オン・ステージ (11))河竹 黙阿弥白水社このアイテムの詳細を見る |
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