伝統芸能が取り上げられる数少ない番組、NHK教育の芸能花舞台。
以前ある席で(ご想像に任せます。)、「よく観るテレビ番組は?」と訊かれ、「芸能花舞台です。」と答えて場をしらけさせた事のある私。毎回見ているわけではないが、一応チェックしている番組ではある。
毎月月末、今は亡き名人の特集が組まれるのだが、今回は「六代目中村歌右衛門」。
「もう歌右衛門やるんだあ」という気もしたが、考えてみれば亡くなって早約3年半経つわけで、兄の五代目福助追善も今月あったことだし、良いタイミングなのかもしれない。
だいたい、芸能花舞台という番組は、NHKの番組という性格からか、実に微温的で突込みが甘く、CMなしの45分間という短くはない時間にも関わらず、だいたい中途半端で新味のない内容に終わるのだが、公共放送という特権やおそらく膨大に眠っていると思われる映像資料から、こちらがハッとするような映像が時々流れるのでなかなか侮れない。
さて、今回もゲストが温厚な河竹登志夫氏ということで、NHKのコントロール下の逸脱のない番組だったが、映像面で大変な収穫があった。初代中村吉右衛門との競演の「熊谷陣屋」の映像(昭和25年)がそれである。こういう記録フィルムがあることは以前から知っていたし、忘れた頃に国立劇場で上映会があったりするのだが、私は残念ながら未見。断片的ながら初めて見た。三台のカメラを使ってマルチカメラ方式で撮られているらしく、舞台下手ややローアングルのカメラが良いアングルを切り取っていて歌右衛門の芝居が観やすい。また、当時のフィルムの感度を考えるとかなりの光量を使ったらしくピントもまあまあ深くて観やすい。吉右衛門の台詞が聞けなかったのは残念だが、これは是非ともはやく、全篇をNHKか歌舞伎チャンネルで放映してもらいたい。
それと、松羽目物狂言「茨木」を取り上げているところも良い。この狂言は渡辺の綱に片腕を切り落とされた鬼・茨木童子が綱の伯母・真柴に化けて、片腕を取り返しにくるという芝居。品のある武家の老婆という高貴な雰囲気の歌右衛門の真柴が私は好きで、近年の実演(中村芝翫、玉三郎)が物足りなく思えてしまうほど。特に芝翫の真柴は伯母というより、近所の小母さんのような気安さで、いくらなんでも昔の甥・伯母の関係は、もうちょっと背筋のピンとした緊張感のあるモノだったんじゃないかと言いたくなったし、玉三郎の方は品はあったがまだまだこの人の老け役は発展途上(いつまでも綺麗なままでいたい人なんでしょうけど。)という印象。
とにかく、興味のある方は再放送をご覧ください。
★ 10月3日(日)24;15~ 再放送予定。
以前ある席で(ご想像に任せます。)、「よく観るテレビ番組は?」と訊かれ、「芸能花舞台です。」と答えて場をしらけさせた事のある私。毎回見ているわけではないが、一応チェックしている番組ではある。
毎月月末、今は亡き名人の特集が組まれるのだが、今回は「六代目中村歌右衛門」。
「もう歌右衛門やるんだあ」という気もしたが、考えてみれば亡くなって早約3年半経つわけで、兄の五代目福助追善も今月あったことだし、良いタイミングなのかもしれない。
だいたい、芸能花舞台という番組は、NHKの番組という性格からか、実に微温的で突込みが甘く、CMなしの45分間という短くはない時間にも関わらず、だいたい中途半端で新味のない内容に終わるのだが、公共放送という特権やおそらく膨大に眠っていると思われる映像資料から、こちらがハッとするような映像が時々流れるのでなかなか侮れない。
さて、今回もゲストが温厚な河竹登志夫氏ということで、NHKのコントロール下の逸脱のない番組だったが、映像面で大変な収穫があった。初代中村吉右衛門との競演の「熊谷陣屋」の映像(昭和25年)がそれである。こういう記録フィルムがあることは以前から知っていたし、忘れた頃に国立劇場で上映会があったりするのだが、私は残念ながら未見。断片的ながら初めて見た。三台のカメラを使ってマルチカメラ方式で撮られているらしく、舞台下手ややローアングルのカメラが良いアングルを切り取っていて歌右衛門の芝居が観やすい。また、当時のフィルムの感度を考えるとかなりの光量を使ったらしくピントもまあまあ深くて観やすい。吉右衛門の台詞が聞けなかったのは残念だが、これは是非ともはやく、全篇をNHKか歌舞伎チャンネルで放映してもらいたい。
それと、松羽目物狂言「茨木」を取り上げているところも良い。この狂言は渡辺の綱に片腕を切り落とされた鬼・茨木童子が綱の伯母・真柴に化けて、片腕を取り返しにくるという芝居。品のある武家の老婆という高貴な雰囲気の歌右衛門の真柴が私は好きで、近年の実演(中村芝翫、玉三郎)が物足りなく思えてしまうほど。特に芝翫の真柴は伯母というより、近所の小母さんのような気安さで、いくらなんでも昔の甥・伯母の関係は、もうちょっと背筋のピンとした緊張感のあるモノだったんじゃないかと言いたくなったし、玉三郎の方は品はあったがまだまだこの人の老け役は発展途上(いつまでも綺麗なままでいたい人なんでしょうけど。)という印象。
とにかく、興味のある方は再放送をご覧ください。
★ 10月3日(日)24;15~ 再放送予定。
昔、武原はん」という、舞の名人をこの番組で見ました。道場の先生に見てみろ、と言われたのがきっかけですが...洋の東西で芸術的感覚がはっきりと別れていることを感じました。この舞を見たお蔭で、インド舞踊なんかもそれなりに見所を得ることができましたね。
歌舞伎の話から反れてしまった。
見ろ、と言われただけで、先生の意図するところは何か、色々考えてるんですが...ただ、繊細な所作、表情で表現し、注目させるには、バタバタと動いてはいけない事、何か普遍的な構図のようなものが舞台空間にあって、その構図が絶対に崩れないことが舞の美しさ、表現の完璧さで、それが見る者にも負担をかけない、自然と目を惹きつける要素になっているようです。
空間と構図、今思いついたけど、これだと思う!