切られお富!

歌舞伎から時事ネタまで、世知辛い世の中に毒を撒き散らす!

「芦雪を殺す」 司馬遼太郎 著

2008-08-23 09:06:42 | 超読書日記
先日書いた記事「対決 巨匠たちの日本美術」(東京国立博物館)でチラッと触れましたが、長沢芦雪という江戸時代の画家を主人公に司馬遼太郎が短編小説を書いていたんですよね~。というわけで、読んでみました、仕事帰りにBOOK-OFFで見つけちゃったから!

有名な円山応挙の弟子・長沢芦雪。この人の画風は応挙の写実主義的なところから出発して、次第に写実から離れ、独自のデフォルメに向かっていくのですが、わたしはどっちかって言うと、応挙より芦雪の絵をじかに見て撃たれてしまったんですよ!

で、この変人だったといわれる特異な画家について、「国民作家」司馬リョーが書いていると知って、俄然興味が湧いてしまったというわけ。

作品の方ですが、地味ながらなかなかの好短編で、芦雪の変人ぶりや応挙との葛藤など、どこまで本当でどこからフィクションなのかよくわからないほどの見事な書きぶりです。

実際、司馬リョーといえば元新聞社の文化部記者。さすがに、この短編だけからでも、絵画への造詣の深さがうかがえますね。

この短編は「芦雪が応挙から破門された」という話を巧みに織り込んでいますが、芸術家の豪胆さと小心を、芦雪の運命に寄せて見事に描いています。

さて、中高生あたりにこういう短編を読ませたうえで、「さあ、美術館で絵を見よう!」なんていうのが、生きた美術、国語、歴史の勉強だとわたしは思うのですが、どうなんですかね?わたしはそういう教師には出会わなかったなあ~。

なお、長沢芦雪の伝記については『奇想の系譜』という本が面白いです。

それと、国民作家・司馬リョーについてひとこと。

わたしは、作中で竜馬と語り合ったりする司馬リョーはちょっと大上段すぎて苦手だったりするんですが、まさに「日本凡人伝」みたいな作風の『ひとびとの跫音』が妙に好きですね。新聞記者的なリアリズムで描く市井の人々って感じで。

というわけで、しばらく「日本美術再入門」がマイ・ブームかな~。

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