切られお富!

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映画『紅葉狩』(1903) 吉沢商会製作

2010-11-16 23:59:59 | かぶき讃(トピックス)
ちょっと機会があって観たのですが、これはまさに国宝ですね。九代目市川團十郎と五代目尾上菊五郎に加えて、後の六代目菊五郎が子役で出演!製作の吉沢商会は映画会社日活の前身に当たります!ということで、簡単な感想っ。

歌舞伎ファンにとっては、演目としての「紅葉狩」の説明は不要でしょう。

とはいいながら簡単に説明すると、戸隠の鬼伝説を元ネタに、更級姫(じつは鬼女)に酒宴に招かれた平維茂が、眠っている間に風の神によって目を覚まされ、最後は鬼女と対決するというもの。

なので、歌舞伎に詳しくないと、最初に出てくるお姫様と最後に出てくる鬼女が同じ俳優だって気づかないんですよね。

で、その二役を演じる九代目團十郎!

劇聖といわれたひとだけど、やはり踊りも巧いというか、動きが早いですね。それに、お姫様の動きが柔らかい。運動神経がよい感じがします。

で、次が感心したのですが、子役時代の六代目菊五郎の風神が出てきます。

これが、躍動感ある踊りっぷりなんですよ。まだ、子役だったころの尾上右近を彷彿とさせますね。(ちなみに右近は六代目菊五郎のひ孫。)

有名な話ですが、六代目菊五郎は少年時代、九代目團十郎から踊りを仕込まれています。

つまり、師匠とその弟子を捉えた貴重な映像だともいえますね~。

この少年がのちに「踊りの名人」といわれる役者になり、小津安二郎が監督した『鏡獅子』の踊り手になるのですから、映画史的にも演劇史的にも感慨深いものがあります。

そして、最後は五代目菊五郎の維茂と九代目團十郎の鬼女との対決。

五代目菊五郎はすっとしていてやはり美男子ですね。スラリとした感じなんか、ちょっと違うけど、今の仁左衛門なんかのイメージだったのかな。

というか、戦前最高の美男役者・十五代目市村羽左衛門の役者ぶりの原点は、五代目の影響なのではって感じがしたのですが、いかがでしょうか?

というわけで、冗談でなく、映画フィルム初の重要文化財に指定された代物。

もっと観る機会があるといいですね。

でも、純粋に映画のことしか知らない映画評論家では、このフィルムの価値を説明できないでしょうけどね!

PS:以下は当代の成田屋、團十郎&海老蔵の「紅葉狩」映像。海老蔵の更科姫は踊りは上手くないけど、変な色気と魅力があります。

市川團十郎・市川海老蔵 パリ・オペラ座公演 勧進帳・紅葉狩(DVD付) (小学館DVD BOOK―シリーズ歌舞伎)
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