切られお富!

歌舞伎から時事ネタまで、世知辛い世の中に毒を撒き散らす!

幻の國太郎、富十郎、坂田藤十郎の鼎談

2016-02-10 23:59:59 | かぶき讃(トピックス)
おそらくは絶版なんですが、児童書なんかでおなじみポプラ社から出ていた五代目河原崎國太郎著の『演劇とは何か』のなかに、五代目中村富十郎(当時坂東鶴之助)、坂田藤十郎(当時中村扇雀)の鼎談(過去の雑誌掲載の再録)が入っていて面白く読みました。もっとも、この本自体も、子供向けではもったいないような、戦前戦後の演劇界の様子を活写した素晴らしい好著です。ご興味の向きには是非!

たまたま、某図書館の児童書コーナーの「演劇」棚で発見したんだけど、昔の児童書はなかなか硬派だったなと、実感します。内容が全然こどもに媚びてないですから。

で、鼎談ですが、当時20代前半の富十郎&藤十郎と40代前半だった國太郎とのもので、当時は女形中心だった富十郎&藤十郎の発言が新鮮。のちのち立役中心に変わっていくこの二人の運命を微塵も感じさせない内容になっており、わたしが特に面白かったのは、若き富十郎&藤十郎が「歌舞伎に女優を使うことは絶対反対!」と言い続けたくだり。

この点では前進座の國太郎とは決定的に対立していて、國太郎は若手二人のこの意見をだいぶ意外に思ったみたい。

>女形というものは、歌舞伎のある限り滅亡しないと思います。
>女優をいれなければ滅んでしまう歌舞伎なら亡んでしまった方がいい。

等々、今なら浅草歌舞伎に出るような年頃の二人がなかなかに論戦を張っていて、さすが武智鉄二に鍛えられた二人だなと、感心してしまいました。

なお、この本、女優問題のみならず、國太郎の共産党入党の話とか、河原崎長十郎の離反問題など、突っ込んだ話も出てきたりして、貴重な証言の書でもあります。

図書館でお探しになるとよいですよ。


演劇とは何か―私の歩んだ芸の道 (ポプラ・ブックス)
河原崎国太郎
ポプラ社
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