不老愚助光さんのご質問に答えて、私の独断と偏見で選んだ歌舞伎入門本をご紹介しましょう。
① 歌舞伎鑑賞ガイド(小学館)
これは薄くて写真も多く、一番初心者向けの本でお薦めです。イヤホンガイドやNHK教育の番組「日本の伝統芸能」でもおなじみのおくだ健太郎さんの著書。
② 悪への招待状 小林恭二著 (集英社新書)
これは、ちょっと変化球のようですが面白い。渋谷で遊ぶ二人の若者と作者が幕末にタイムトリップして歌舞伎を観るという趣向の内容。江戸時代の風俗と歌舞伎の関係など、楽しみながら勉強になります。小説は一向に感心しない小林恭二ですが(「電話男」と「純愛伝」は面白かったけど。)、この本は異色の歌舞伎入門本として後世に残るのでは?
③痛快!歌舞伎学 小山観翁著 (集英社インターナショナル)
少し突っ込んだことが知りたい人向けで、初心者から上級者まで楽しめるのがこの本。イヤホンガイドやNHKの副音声でおなじみの名伯楽・小山観翁さんの著作。「なぜ市川團十郎家が別格待遇なのか」や「顔見世興行の由来」など歌舞伎ファンでも「へぇ~」という話ばかりでためになります。なかでも、歌舞伎と浮世絵の関係から写楽の謎に迫ったくだりが大変面白く、私が今まで読んだ「写楽は誰か」論争の中でも一番説得力がありました。歴史ファンにもお薦め。
④NHK「日本の伝統芸能」のテキスト
日頃NHKを批判している私が言うのもなんですが、この番組&テキストは優れもの。毎年4月から一年間、1クール4ヶ月で三回放送している伝統芸能入門番組で、歌舞伎・日舞・能狂言・文楽を扱っています。伝統芸能はこの4ジャンルすべてが密接な関係を持っているので、歌舞伎ファンの方も歌舞伎以外の放送もご覧になることをお薦めします。私の場合、邦楽や舞踊に関してはこの番組から得た知識がかなり役にたっています。(やっぱり、ビジュアルと音がないと、活字だけではわかりにくい部分ですから。)ただ、本年度の歌舞伎に関する放送は12月で終わりなので、来年度どうぞ。
⑤番外編
入門というのとはちょっと違いますが、歌舞伎を見るとき、何か骨董品を愛でるような通人ぶったスタイルじゃなく、もっとアクティブな視点から歌舞伎を見てみたいと思いませんか?そんな「視点」のヒントを提供してくれるのが、子供の頃から歌舞伎を見ていたという三島由紀夫。
芝居に関する論考を集めた「芝居の媚薬」(ランティエ叢書 角川春樹事務所)という本も面白いのですが、もっと親しみやすいところで、図書館などにある三島由紀夫全集の対談を集めた巻に入っている、歌舞伎を扱った対談を読むことをお薦めします。特に私が面白いと思うのは福田恒存との対談「歌舞伎滅亡論是非」と戸板康二との「歌右衛門の美しさ」。特に後者の中の発言、花道から見た歌右衛門ののど仏に塗ってある白粉がエロチックだ、という感覚はいったいどういう感覚なんだろう?
★結局、最良の歌舞伎入門は実際に歌舞伎をたくさん見ることに尽きるような気がしますが、私の場合、演目解説用の「歌舞伎手帖」(渡辺保著 講談社、ただし私が持っているのは旧版)と毎年松竹などで出している役者名鑑「かぶき手帖」の二冊が座右の書。特に前者はだいぶ使い込んできちゃった感じ…。
あと本の話ではありませんが、歌舞伎をたくさん見るには、CS歌舞伎チャンネルなんていうのもあります。(別に松竹の回し者ではありませんが。)
さて、こんなところで、観劇の一助となれば幸です。
① 歌舞伎鑑賞ガイド(小学館)
これは薄くて写真も多く、一番初心者向けの本でお薦めです。イヤホンガイドやNHK教育の番組「日本の伝統芸能」でもおなじみのおくだ健太郎さんの著書。
② 悪への招待状 小林恭二著 (集英社新書)
これは、ちょっと変化球のようですが面白い。渋谷で遊ぶ二人の若者と作者が幕末にタイムトリップして歌舞伎を観るという趣向の内容。江戸時代の風俗と歌舞伎の関係など、楽しみながら勉強になります。小説は一向に感心しない小林恭二ですが(「電話男」と「純愛伝」は面白かったけど。)、この本は異色の歌舞伎入門本として後世に残るのでは?
③痛快!歌舞伎学 小山観翁著 (集英社インターナショナル)
少し突っ込んだことが知りたい人向けで、初心者から上級者まで楽しめるのがこの本。イヤホンガイドやNHKの副音声でおなじみの名伯楽・小山観翁さんの著作。「なぜ市川團十郎家が別格待遇なのか」や「顔見世興行の由来」など歌舞伎ファンでも「へぇ~」という話ばかりでためになります。なかでも、歌舞伎と浮世絵の関係から写楽の謎に迫ったくだりが大変面白く、私が今まで読んだ「写楽は誰か」論争の中でも一番説得力がありました。歴史ファンにもお薦め。
④NHK「日本の伝統芸能」のテキスト
日頃NHKを批判している私が言うのもなんですが、この番組&テキストは優れもの。毎年4月から一年間、1クール4ヶ月で三回放送している伝統芸能入門番組で、歌舞伎・日舞・能狂言・文楽を扱っています。伝統芸能はこの4ジャンルすべてが密接な関係を持っているので、歌舞伎ファンの方も歌舞伎以外の放送もご覧になることをお薦めします。私の場合、邦楽や舞踊に関してはこの番組から得た知識がかなり役にたっています。(やっぱり、ビジュアルと音がないと、活字だけではわかりにくい部分ですから。)ただ、本年度の歌舞伎に関する放送は12月で終わりなので、来年度どうぞ。
⑤番外編
入門というのとはちょっと違いますが、歌舞伎を見るとき、何か骨董品を愛でるような通人ぶったスタイルじゃなく、もっとアクティブな視点から歌舞伎を見てみたいと思いませんか?そんな「視点」のヒントを提供してくれるのが、子供の頃から歌舞伎を見ていたという三島由紀夫。
芝居に関する論考を集めた「芝居の媚薬」(ランティエ叢書 角川春樹事務所)という本も面白いのですが、もっと親しみやすいところで、図書館などにある三島由紀夫全集の対談を集めた巻に入っている、歌舞伎を扱った対談を読むことをお薦めします。特に私が面白いと思うのは福田恒存との対談「歌舞伎滅亡論是非」と戸板康二との「歌右衛門の美しさ」。特に後者の中の発言、花道から見た歌右衛門ののど仏に塗ってある白粉がエロチックだ、という感覚はいったいどういう感覚なんだろう?
★結局、最良の歌舞伎入門は実際に歌舞伎をたくさん見ることに尽きるような気がしますが、私の場合、演目解説用の「歌舞伎手帖」(渡辺保著 講談社、ただし私が持っているのは旧版)と毎年松竹などで出している役者名鑑「かぶき手帖」の二冊が座右の書。特に前者はだいぶ使い込んできちゃった感じ…。
あと本の話ではありませんが、歌舞伎をたくさん見るには、CS歌舞伎チャンネルなんていうのもあります。(別に松竹の回し者ではありませんが。)
さて、こんなところで、観劇の一助となれば幸です。
ご親切に沢山教えて戴きまして感激です。
それにしても お富さんて凄い!
いったい貴女の知識の豊富さはまるで大海の如し、幅の広さは黄河の如し、もう私の遠く及ばざるところです。簸たすら尊敬有るのみです。参りました。
これからも色々教えて下さい。
さて今から図書館に行って来ます。
☆痛快歌舞伎学
の二冊がありました。早速借りて来まして読んで見ます。
読んでまた解らない事が有りましたら教えて下さい。お願いします。
私のできる範囲のことでしたら、何なりと!
ただ、私の知識はみな独学なので大して当てにはならないとは思いますけど…。学校とはまったくそりが合わなかったのでこうなってしまったのですが、結局、知識より受け取る側の美意識とか生活感が問題になってくるのかなと思っています。(私もまだまだ修行中。)
実年齢よりはいつも若く見られますが、言ってる事は年寄りくさいと昔から言われるので、発想もフレッシュさを保たなくては!
それでは、また!!
江戸時代くらいまでに遡る大家系図みたいなものってあるんでしょうか?
「ファンタジーワールド歌舞伎」(学研ムック) “超”入門書としていいと思うんですが、売ってないでしょうね。
ただ、歌舞伎の家系で純粋に初代から血が繋がっている家は多分皆無でしょうね。血筋中心主義って、じつは明治時以後(特に最近)強まったって気がしているんですよ。昔は門弟が継いだりしているようですから。
「ファンタジーワールド歌舞伎」(学研ムック)って私は知らないんですが、歌舞伎に限らずどの分野でも、半端な入門書が多すぎるって気がします。入門書か学術書に二分されて中間層のための本が少ない。このあたりの出版界への反動が、オタク文化だったり、ネット文化なのかなという気がしています。